「思うような漫画が描けなくなったマンガ家に、3人のユーレイたちが自分のことを語ります。話を聞き自分を見つめ直した先には、どんな世界が広がっているでしょうか。」マンガ家、堀マモル もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
思うような漫画が描けなくなったマンガ家に、3人のユーレイたちが自分のことを語ります。話を聞き自分を見つめ直した先には、どんな世界が広がっているでしょうか。
公開中の作品リストを眺めていて、ある日突然その作品が目に
留まってしまうことが時折あるのですが、そのパターンです。
「マンガ家+ユーレイ」というキーワードのお話の内容が気に
なり鑑賞することに。
鑑賞中。
スランプのマンガ家が、部屋に出る子どものユーレイ達から
” 自分達の話を作品に描けば? ”
と言われる。
このままではマンガ家としての将来は行き詰まり
先に進めなくなる。そう意を決し、
3人の子どもたちの話を聞き取って漫画にしていく。
そんなお話です。
■一人目は小学生。
” 母親がスナックだから ” と同級生から避けられているようだ。
この頃、好きな漫画作品を通してハルと出会い親密になっていく。
ハル学校に持ち込んだ漫画の本を、同級生が見とがめ取り上げよ
うとするが、割って入り取り返す。 …が、水没。あら
この子の初めての仲間であり、共感者を得る。
■二人目は中学生。
ゴーイングマイウェイな中学生である。感性も変わったモノがあり
公園での写生のとき、木のコブが猿の頭に見え、観察したりする。
クラスメートが声をかけても耳に入っているのやら。
猿のことを調べようと図書館に行った際に、絵を褒めてくれた教師
と出会う。自分が描いた猿の絵をブレゼントしたのだが、その絵を
教師が無断で展覧会に出してしまい、入選する。 おお。
なのにこの少年、無断で出品されたことに納得がいかない。
自分の絵は、誰かに見せるために描いているのでは無い と
言う少年。
” 自分だけの世界に引きこもるな ”
” 広い世界に出て行かないと ”
そう諭してくれた教師は、その後すぐ学校を辞めた。あら。
何のために絵を描くのか。一つの答えらしきものを得る。
■三人目は高校生。
女子高生のユーレイだ。そしてもう一人女子高生が居る。
漫画を書く仲間のようだ。
友人が話を作り、ユーレイが絵を描くという合作スタイルだ。
その日もまた、友人とマンガの話。
友人が、新たに考えたストーリーを語りかけてくる。
” どう? 描けそう? ”
” 覚えられない。ノートにまとめて ”
そんなやり取りを交わす日が、この後も続くと思っていた。
卒業後の進路を決めなければ時期に差しかかる。
” 漫画を描き続けたい ” そう熱く語るユーレイに対し
” 私は就職するの ” と返すハル。 … ええー。
パートナーの喪失。
後に残るのは、それでもマンガ家になりたいという想いと、
手渡された「新しいお話」の書かれたノート。
◇
三人から話を聞いてそれをマンガにしながらも、
マンガの新人賞を取った時の、出版社の担当者と打合せを繰り返す。
” 新人賞を取った作品は面白かったんだがなぁ ”
暗に今の作品はダメだと言われているようなものだ。
何かが足りないんだよ とも再三言われて耳にタコ。
その担当者が、三人の話を元にした作品を読んでこう言う。
” 3つの話をつなぐ、もう一つのストーリーが必要だ ” と。
◇
ある家を尋ねる主人公。
三回忌に来れなくてすいませんでした と頭を下げる。
ハルは病気で亡くなっていて、二年が過ぎていた。
そのハル。実はユーレイとなって主人公の周りにいたりする。
主人公の外出後の部屋に現れては、原稿を覗き見している。∂_∂
マンガを書く理由・情熱・そして秘めた後悔の念。
それらを確認し、吐き出し、見つめなおすことが必要だ と
亡くなった今も、主人公のことが気になっているのだ。
◇
えーっと このお話。
鑑賞中はストーリーの展開にいまひとつ乗り切れない感じが
していました。・-・;
鑑賞後に思い出しながらまとめているのですが、途中までは、
3人のユーレイの話がバラバラで、まとまりに欠ける気がして
いたのです。
それがラストの10分くらいで、3人のエピソードとハルの想いと
が束ねられ、主人公がこれからもマンガを描き続けるための動機
付けになっていく過程がファンタジー混じりに描かれ、きちんと
収束しました。
そう、三人のユーレイは、過去の主人公たち。
そのユーレイたちを、今の主人公に引き合わせたのは、たぶんハル。
ユーレイとして登場する小中高の子たちは、それぞれが
「主人公が過去に残してしまった後悔」であり、
振り返りたいのに、怖くて直視出来ないでいる記憶たち。
それぞれと向き合って、死に別れてしまった盟友との想いを
この後も共有し続けていける場所が出来た、という事なのか。
そう考えれば納得もできるし、
そう考えないとあの結末も落ち着かない。そんな感じです。
粗いかも と感じた話でしたが、ちゃんと収束しました。
途中で寝なくて良かった。・_・; (…これも本音)
◇あれこれ
■ハルとの中学校時代
中学校では疎遠だったのでしょうか?
ひとりぼっちで「公園の猿に見える木」をスケッチしている姿が
印象的で、仲間が一人も居ないかのような描かれ方でした。
けれど、高校生ユーレイ(=ハル)との会話の中で
「将来も二人でマンガを描いていこう」
そんな約束を交わしていたことが会話の中で出てきていたので
中学時代もハルとの交流は続いていたと思うのです。 はて。
■ハルの遺した原作
それを使って応募した作品が新人賞受賞。…かと思われます。
そして、それを報告しにハルの家に行った日に、母親から
ハルの死を知らされる。うわ。一番キツい場面…。
ハルの原作を使ってマンガを描くことは、ハルとの間では了解
の事だったのだろうと思うのですが、主人公の頭の中ではその事
がず~っと引っかかってきたような感じでした。
新人賞に応募する際、作者を自分一人として出品してしまっていた
ということなのでしょうか?(そうなら確かに後ろめたい感あり)
けれど、新人賞を取った報告にハルの家に悪びれず来ていたし…
”ハルは気にしてないから ”
とハルの母親が言うのも違和感…でした。
◇最後に
3人目のユーレイだけが女性でした。
そのことに何か意味があったのかなぁ と考えています。
ユーレイを男にしてしまうと、ほぼ現在の主人公と同じ容貌にし
なければ辻褄が合わなくなるので、女性にしました …と単純に
そういうことなのでしょうか。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。