「うるさくて愛おしいこの世界に」マンガ家、堀マモル ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
うるさくて愛おしいこの世界に
マンガ家としての活路を見出していく作品という事で気になったので鑑賞。
「バクマン。」でマンガ家の苦しみを知り、「タイムパラドクスゴーストライター」で色々大変なんだなぁと作品内外で思い知り、「ルックバック」で濃厚な作品作りを味わってとほぼジャンプで見知った世界とはまた違うものだなと今作を観て思いました。
序盤は幽霊が見えるマンガ家が幽霊を通して自分の作品を形成していくという感じのオムニバス形式で進んでいくのかなと思ってみていましたが、どうにも解決したのかしてないのか宙に浮いたような感じで首を傾げながら見ていましたが、物事をマンガにする途中で止められてからガラッと作風が変わったように思えました。
親との距離感だったり、先生との距離感だったり、友達との距離感だったり、よくよく考えたら伏線だったなぁと思うところを淡々と描いていたのが後半になって活きてくるという形の作品は珍しい気がします。
病気で亡くなった親友の作品を自分で手がけた真守が過去と向き合って、やり直せないであろう過去はマンガという形のコミュニケーションで乗り越えていくというのも「ルックバック」に通ずるものはあれど、幽霊との対話という面で描かれるのも個性があって良かったです。
幽霊たちのシーンと真守が重なってストーリーが地続きになって繋がっていき、あの時の判断や対応はどうだったのかとか自分自身の人生にも投影してしまうようなシーンが多かったのも心に突き刺さるものが多くありました。
母と子の信頼感が味わえるシーンがたまらなく大好きなので、実家に帰ってきておにぎり食べていくだけのシーンがたまらなく良かったです。
主人公の性格はそのままなのに序盤と終盤で全く違った印象を持てるという未知なる感覚を味わえてクセになる作品だなと思いました。
3人監督構成という不思議なスタイルだったからこそ撮れた作品だったと思いましたし、物作りをする人間に送る一つのエールのような作品でした。
鑑賞日 8/31
鑑賞時間 14:25〜16:30
座席 H-10