「もっと「衝撃」を感じたかった」クー嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
もっと「衝撃」を感じたかった
最近ではそんなことはなくなってしまったが、数十年前は未成年者の殺人といえば衝撃的な出来事だった。今の感覚では、「殺人犯は3歳児」と似たようなものと思えばいい。
この衝撃を本作の監督も受けたわけで、それを映画にして同じような衝撃を観る者に与えようとした。
しかし、十代後半の犯行ではもう当時ほどの衝撃はなく、時代の変化による影響で物足りなく感じる。
その一方で「変化」という意味では、台湾にとって大きく変化し続けている時代であり、未成年者による凶行もその一部で、そのことに衝撃を受けなくなってしまったこともまた、続いている変化の一部なのかと思う。
多くの人物が自分の利益しか考えず、不正、不義を平気で働く。誠実さや高潔さなんてものは欠片も存在しない。
権力を持てば好き放題に振る舞える。力を持った者の責任なんてものもない。
どこかの国と国民性を暗喩しているように見える。
それが批評家などにウケている理由かなと思うけれど、台湾事情に詳しいわけでもなく、ましてや過去のことともなると更に分からないので、個人的にはもう少し踏み込んだものが観たかった。
せっかく4時間もある大作なのだからビンビンにドラマチックで仰け反るような衝撃を殺人以外のところで感じたかった。
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