「少年と少女との恋愛観の乖離」クー嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 月野沙漠さんの映画レビュー(感想・評価)
少年と少女との恋愛観の乖離
2017/03/19、109シネマズ川崎で。
2016/09/14にもVHSで鑑賞しているのだが、なにせ暗い画面のシーンが多く、顔の表情や状況すらわからないほど
解像度が悪いので、なんだか話が大まかな筋くらいしか解らず、イマイチだった。
とはいえ、なんか気になって記憶に残る作品だったので、今回4Kデジタルリマスター版がリバイバル上映されると
ナイスタイミングで情報が入ってきたのでチェックしてあったのだった。
やはりデジタルリマスター版は見やすく、暗い部屋のシーンでも顔の表情がわかり、どの役者かも区別がつかないと
いうことは無かったw
とはいえ、登場人物の名前と顔を一致させるのが大変で、セリフにその場にいない人の名前が出てきても
誰のことを言っているのかわからないことがあった。そういう意味でDVD・BLが出たら、何度も解らない所を見返し
ながら観れるし2200円という特別料金もあって、そっちで観た方がいいかもしれない。
親からは成績や進学の期待を背負い、学校では今ならパワハラ扱いされそうな対応をされ、不良仲間のグループ同士の
抗争、そして少女との恋愛観の乖離。少年が恋愛のもつれから彼女を刺したという、マスコミにはセンセーショナルな
記事にしかされそうにない事件を、こんな様々な悩みとともに繊細に描いてあって、長丁場でしたが見応えありました。
少女の本邦で刹那的な恋愛観と少年のストイックな恋愛観。少年の一途な思いは少女にとっては自分を変えてしまおう
としている迷惑なものでしか無かった。まだ人間として視野の狭い少年にはそれが受け入れられなかった。切ない。
また、少女の「この社会と同じで、私を変えようとしたって変わらないのよ」というセリフからも、たくさんの男から
言い寄られて幸せかと言えばそうではなく、むしろ安易に下心ありで言い寄ってくる男たちに絶望していたんだろうな。
そして警察署で少女の血の付いたシャツを警察官に着替えなさいと無理に脱がされそうになり必死に拒絶するシーンが
切なかった。衝動で殺してしまったシャオミンの名残をシャツに感じていたのだろうから。
追記
街で一目置かれているハニーという少年が、絵に描いたようなバンカラでちょっと失笑。
ワンマオ役の小さな男の子の歌声がアジアのマイケル・ジャクソンかというような高音の美声で驚いた。
シャオミン(小明)役の女の子は美少女と言われると?だが、何故か人目を惹く女の子ではある。