ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディのレビュー・感想・評価
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世代や立場を超えた魂の触れ合いから生まれる希望
70年代当時のミラマックスのロゴで始まる、あたたかい音楽と、人の不器用さを包み込むように描き出すストーリー。誰もが心の底にそっと隠している弱さや悲しみに優しく触れて、慰め励ましてくれるような作品だ。
キリスト教圏では、基本的にクリスマスは家族と過ごすものだ。人の生き方が多様化した現代はいざ知らず、1970年のクリスマス休暇に家族の元に帰れないというのは、現代の日本人の私が想像する以上に疎外感や孤独感を覚える状況だったのではないだろうか。
しかもアンガスは、帰れるつもりでいたのに終業日当日に母から帰ってこないよう連絡があったのだからかなりきつい。資産家と再婚した母親は、毎年クリスマスディナーは取り寄せで(他の場面で愛情を伝えていればそれでもいいのだが)、クリスマスグリーティングには現金を送りつけるのみ(これはいけない)。
嫌われ者の教師ハナムは、学校に大口の寄付をしている議員の息子に対しても成績に色をつけない信念の持ち主だが、クリスマス休暇の過ごし方にさえ揺らがない信念を持ち込む堅物でもある。
序盤、2人の相性は見るからに最悪だ。ハナムは休暇中なのに規律を強要し、アンガスは勝手にホテルに予約の電話をしたり、体育館で暴れて肩を脱臼したりする。だが、事務員のクレインのホームパーティーに行ったりメアリー手作りの料理でクリスマスを過ごすなど、小さな出来事を共にするうちに相手の本音や弱さを知り、心の距離が近づいてゆく。
本作が銀幕デビューのドミニク・セッサが、あの年頃の危なっかしさや不安をリアルに伸びやかに演じて、経験豊富なジアマッティやランドルフに負けない存在感を示していたのが印象的だった。
彼らが互いに少しずつ心を許してゆく過程がとても自然で、微笑ましかったり切なかったりして魅了される。それに伴ってそれぞれの悲しく重い背景も明らかになってゆくのだが、不思議と物語自体の印象がヘビーなものになったりはしない。堅苦しさや意地を張った態度の内側が見えてくると、表面的な印象とは違うその素直さや人間臭さ、ぬくもりに目が潤んだ。
息子を亡くしたメアリーは、アンガスとハナムを繋ぐ存在でもあった。クレインのホームパーティーで、息子の死を嘆き心を乱したメアリー。アンガスはハナムを呼びに行って2人で彼女のそばにいた。翌日のクリスマスにメアリーは料理の腕を振るう。食卓を囲む3人にはどこか気の置けない、擬似家族のような雰囲気がうっすらと漂い始めていた。
このかすかな絆が芽生えたからこそ、最初は亡くなった息子を思って学校にとどまっていたメアリーは、新しい命を宿す妹の元を訪れる決心がついたのではないだろうか。
一方、「バートン・マン」の精神として嘘をつかないことを重んじていた堅物のハナムは、アンガスに振り回されるうち、次第に言動が柔軟になってゆく。アンガスが自分と同じ向精神薬を服用していることや実父の真実などを知るにつれ、ハナムの心の殻が剥がれていった。
そして最後に、アンガスを迎えに来た両親の前でハナムは信条を曲げ大きくて正しい嘘をつき、アンガスの前途を身を挺して守った。この短くて濃いクリスマス休暇で、彼は鶏小屋のはしごのようだった人生に形式的な信念よりも大切なものを見出し、変わったのだ。
心和むあたたかさと、メインの3人それぞれに違う色合いで滲むペーソスが胸に沁み入る本作。ラストシーンを迎える頃、私はある作品を思い出していた。マーティン・ブレスト監督作品「セント・オブ・ウーマン」(1992年)。珠玉の名作という表現がよく似合う作品だ。
2作には共通点がある。アメリカの寄宿学校の生徒が、クリスマス休暇に帰省せず過ごす間に体験するエピソードであること。青年と老年期を迎えた男性が、孤独な環境にあって邂逅し、互いの人生観に影響を与え合う物語であること。学校の同級生が金持ちのクズであること(笑)。年長男性が青年の未来を守るクライマックス。車が遠くへ走り去るラストシーン。
だが本作は、メインキャストのキャラクターや関係性の違いによって、違うテイストの物語になっている。「セント・オブ・ウーマン」で、スレード中佐とチャーリーは親子のような関係になったが、ハナムとアンガスの間に醸成された関係性は友情に近いものに見えた。
根底で共通するのは、人が世代を超えて人生の苦楽の一片を共有し相手を認め合う時、そこに見えるのは純度の高い魂の触れ合いであり、その絆が生む希望は心に響くということ。その過程を丁寧に紡げば、必然的に見る者を癒す名作になるのだ。
ぼくと先生の秘密と嘘と親愛
アレクサンダー・ペイン監督の作品を見ていると、日本の人情映画が思い浮かぶ。
家族や友人、他人同士の交流。ユーモアとペーソスを交えて。
ハリウッド古き良き時代の作品も思い起こさせ、ペインが愛される由縁。
前作『ダウンサイズ』が異色作だっただけ。本来の持ち味を取り戻し、ペインがまたまた秀作を届けてくれる。
1970年の冬。ボストン近郊の全寮制の学校。
クリスマス休暇で多くの生徒や教員が帰る中、問題児のアンガスは学校に残る事に。母親と旅行に行く予定が、再婚したばかりの母親が相手と新婚旅行を優先してまい…。
他にも居残り組は“訳あり”面々。
そんな彼らの監視役になったのは、古代史の先生ポール。生徒や同僚からも嫌われ者。学校に多額の寄付をした有力者の息子に落第点を付けた為、校長から罰として。
もう一人。ベトナム戦争で息子を亡くした学食のおばさん・メアリーも。
程なくして、居残り組のボンボンが親の力で脱出。他の面々も便乗するが、アンガスだけは…。
最終的に学校に残ったのは、アンガスとメアリーとポールだけ…。
日本で言ったら冬休み。クリスマスに年明け…年末年始の行事続く楽しい筈の大型連休が、最悪の連休に。
学校に残り、嫌われ者の先生と一緒。
しかも、寒い外をランニングさせられたり学習したりと普段と変わらず。
勘弁してくれよ。マジ最悪…。
自分が学生時代、同じ状況だったらやっぱり思うだろう。勘弁してくれよ。マジ最悪…。
ずっと言いなりにはならないアンガス。何かと反発。
厳しくするも、問題児に手を焼くポール。
これが爆笑学園コメディだったら、嫌われ先生vs問題児の仁義なき戦い!
アンガスが現在立ち入り禁止の体育館に入って怪我を。
監督不届きでクビになる…と嘆くポール。
病院でアンガスが機転を利かし、何事も無く。
意外と頭が切れるアンガス。意外と人間味があるポール。
こういう特異な状況でもないと知らなかった事。初めての二人だけの秘密と嘘。
毒舌ながらもクッション役のメアリーの存在もあって、休みの過ごし方は少しずつ改善。
ちょっと変わり始めたクリスマス休暇と居残り面々の関係。
学校の女性職員の自宅パーティーにお呼ばれ。
ポールはその女性職員と話が弾み、いい雰囲気になるが…。
アンガスはその姪とお互い意識し合うが…。
メアリーは学校の掃除夫といい感じになるが、お酒を飲み過ぎてしまい、感情不安定で泣き出してしまい…。
ちょっぴり切ない恋路の結末。
抱える悩み、悲しみ、孤独…。
不思議とそれらが3人の距離を縮めていく。
そんなある日、アンガスがボストンに行きたいと言い出し…。
アカデミー賞ではダヴァイン・ジョイ・ランドルフが前哨戦から圧倒的な強さで助演女優賞受賞。肝っ玉な学食のおばさんを、ユーモアと息子を失った母の悲しみを滲ませ、印象的に。
だけどやはり、ポール・ジアマッティのさすがの巧さが際立つ!
真面目で相手が誰の子供であろうと成績に忖度しない。教師の鑑。
その一方、堅物で不器用で融通利かず皮肉屋。序盤はまさにそんな感じ。
しかし、次第に情が移っていく。序盤と終盤ではがらりと違う印象。誰もがこの先生を好きになっている筈。
嫌われ者を愛され者に。ドラマとコメディの絶妙過ぎるバランス。これも全てジアマッティの巧さの賜物。
映画ファンや業界からも愛されるジアマッティ。そもそも嫌われの要因など無かった…?
ジアマッティの代表名演と言えば同じペイン監督の『サイドウェイ』。またまたペイン監督作で新たな代表名演を。『オッペンハイマー』のキリアン・マーフィーのアカデミー主演男優賞に異論は無いが、ジアマッティにも獲って欲しかったなぁ…。
名演がアカデミー賞で話題になった二人だが、もう一人。ドミニク・セッサ。
本作がデビュー。デビュー作がいきなりペイン監督作で名優ジアマッティと共演のラッキーボーイ。にしても、本当に新人ですか…?
問題児ならではのひねくれ感、嫌いだった先生と次第に交流を深めていく演技力、複雑な家庭環境でその苦悩を繊細に。終盤である人へ思いを語るシーンの表情と演技は絶品。本当に新人とは思えない…!
イケメンでもあるし、こりゃこれから売れるね。
ペインにしては珍しく、脚本は担当せず。
しかし、他人の脚本をしっかり読み取り、それを演出で表現するのも監督の才。ほとんど脚本を書かないスピルバーグやイーストウッド然り。
脚本家も本作が映画デビュー。この脚本とウマが合ったのか、純度100%のペイン作品に。
1970年代の雰囲気。会社のロゴも当時風に。これらがいい。
クリスマスの雰囲気。楽曲もいい。願わくば、クリスマス・シーズンに見たかった…。
アンガスのボストン行きは、やはりクリスマスらしい休暇をしたいからと言うが…。
学校の規則でも決まっており、ポールは反対。が、“社会見学”という名目で…。
メアリーは妹の家へ。ポールとアンガスの二人旅。
ボストン巡り。美術館ではポールがうんちく垂れるが、この時ばかりはアンガスも聞く耳立てる。いつもの講義もこうだったらいいのに…。
途中、ポールは学生時代の同級生と再会。何か訳ありで、見栄を張る。
実は意外や“問題児”であったポール。またまた二人に秘密と嘘。もう一つ。
良好な旅に思えたが、アンガスがこっそり抜け駆けしようとする。
結局これが目的だったのか。叱責し、がっかりするポール。
そうではなかった。アンガスの本当の目的は、父親の見舞い。
アンガスの両親は離婚。母親は再婚。アンガスは父親を慕っていたが、精神を病み、ボストンの精神病院に入院。
一目、会いたかっただけ。真意を知り、ポールも否定する理由は無い。寧ろ、言ってくれれば…。
久し振りの父との対面。嬉々として今の自分の事や学校の事を話すが…。
この直後のアンガスの表情と心情が悲しくも絶品。
落ち込むアンガスをポールはディナーに。メアリーも合流して。
ルール厳しいレストランに嫌気が差して、3人で駐車場で“ファイヤー・クリスマスケーキ”。
先生や生徒、思いがけない友人や交流を超えて、擬似家族のような…。
息子を失ったメアリーにとっても。
複雑な家庭環境のアンガスにとっても。
独りが好きだと言うポールにとっても。
一人で居るのも悪くないが、人は独りでは生きていけない。
人の温もりが恋しくなる時期、誰かと寄り添いたい、一緒にいたい、孤独を感じた時こそ…。
メリークリスマス。そしてハッピーニューイヤー!
年明けて、学校に普段が戻ってきた。
ポールもアンガスもメアリーも、普段通りに。
“居残り組”と冷やかされるけど、その実は…。
ところが、問題発生。原因はあのボストン行き。
アンガスが父親に会った事、それが発端で父親がまた家族と暮らしたいと暴れた事。母親と再婚相手が猛抗議。
ポールもアンガスも呼び出し。順々に話を聞く。
アンガスは退学になって母親が推し進める軍学校に行く可能性が…。父親も別の病院へ。
浅はかな事だったかもしれないが、言うまでもなくこの母親(と再婚相手)は毒親。自分の事しか考えていない。
軍学校に行きたくないアンガス。彼の事を思ってくれる大人はいないのか…?
いた。ポール。
学校の伝統に反してある嘘を付く。
そしてアンガスがどんなに素晴らしい青年か力説する。
彼の人生を滅茶苦茶にするな!
このシーン、響いたなぁ…。
嫌われ者の先生なんかじゃない。素敵な先生だ!
アンガスは退学を免れる事に。
が、ポールは退職。色々噂が飛び交う…。
あの休暇以来、二人で話すポールとアンガス。こんな形で…。
「君なら大丈夫」。これからの人生へ心強いエールと、固い握手。
人生を変えてくれた出会いや恩師ってよくあるけど、アンガスにとってはこのクリスマス休暇が。
ポールにとっても。「君なら大丈夫」は自分へのエールでも。再出発。
余韻たっぷり。心もほっこり。ちょっぴり切なくも、いっぱいいっぱいの優しい気持ちになれる。
ありがとう、と言いたくなる。
作中全体を包むアナログの温度
雰囲気が、ずっと好きだったなあ。
1970年代のボストンかあ〜。
1970年代っていうと自分の両親が幼少期、って感じだな。
改めて思うけど、この時代がもしかしたら一番楽しそう?
どの時代が一番、なんて決めれることじゃないし
当時渦中を生きてる人は「この時代最高〜!!」なんて思ってないだろうし。
だけど、客観的に見てこの時代ってほどよく便利でほどよく発展して。
見てて本当ちょうどいいなあ〜〜って思う。
自分はずっと夏が好きで冬が苦手だったのに、近頃冬の魅力に気づき始めてからこういう冬・クリスマス・年末年始、みたいな作品を見るのが好きになった。
寒さで頭がシャンッとする感じ、冷たい空気を吸った時のスンっとした感じ、部屋にこもりたくなる感じ...ああいうのが、とても好きになった。
だから今作の「ボストン近郊」という寒いエリアのクリスマス・年末年始のお話はとても好物だった。
まだ9月で暑さが続くけど、もうそろそろ寒さが訪れて来てくれても良いよって思う気持ちが、今作を見て倍増した。
青年アンガス役の子は、今作でデビューらしい。演技経験もないというのが信じられないくらい、すごくリアルで絶妙な演技をしていた。演技経験がないとうのが逆に良かったんだろうか。いや、そんなことないな、「初めてです」感出る人もいるもんな。だからこの子は上手なんだろう。コツを掴むのが。憎たらしさもありながら、まだ純粋さ、幼さももっていたり。そんな演技が絶妙に上手だった。
冬の屋内、1970年代の雰囲気、アナログのものたち、
すべてのものがなんか温かみ?温度?をもってる感じというか
包まれてる感覚、ほっとするような感覚があって。
ギザギザしてない、鋭利ではない、
全体的に角がなく、まるみを帯びている。そんな雰囲気。んー言葉で表すのは難しい。でもそんな感覚が心地よくて、この映画を見てる最中ずっと癒されていた、包まれていたと思う。
街の雰囲気も好きだったな。
ボストンに出かける、パーティーに出かける。
あの先生の車も格好いいし。屋外の本を売ってるところもよかったなあ。飲み屋の雰囲気も好きだった。ジムビーム、飲みたくなる。笑
店で断られたチェリーのお酒を使ったデザートを、3人で外で作っちゃおうぜってなってるシーンも好きだったな。
3人の距離の縮まり方が不自然ではないのも良かったな。
近づきすぎるわけでもなく、ほどほどにまだ距離はある、でも確実に前よりお互い愛着が湧いた感じ。
先生の部屋も好きだったなあ。物に囲まれてる感じ。
クリスマス当日の紙袋に入れたプレゼントの渡し方も好きだったな。
あの紙の感じ...そしてそれに入った本....
最後はどうなる?先生クビになっちゃったけどもしかしたら救済ある?と思ったけど、そういう全てを完璧にハッピーエンドにするみたいな演出はなく、至って現実的なエンディングではあったけどそれでも良かったんだろうな、と思えたのは最後の方のシーン、
学校を車で去る先生。途中おもむろに停車し、あの憎き校長からくすねた?高い酒を口に含んで「ぺェッ」と外に吐き出したシーン。
あれを見て、ああこの先生はきっと大丈夫。図太い。クビになってしまったけどきっと、なんとかして生きていく人だ。
そう視聴者がニタッと笑いながら安心できたシーンだったと思う。
ずっと、全体的に好きな雰囲気だった
こんなペースで、まずは自分の半径5-10mくらいの世界を一生懸命生きる気持ちで、しっかり生きたいなって思ったりした
超新星ドミニク・セッサに刮目!
アレクサンダー・ペイン監督作品、初鑑賞。
ヒューマンドラマ映画はほとんど観ないが、これは間違いなくいい映画。
とにかく全編にわたり演出の塩梅が絶妙。
クリスマス休暇で居残りになった、問題高校生と教師、カフェテリアのおばちゃんの2週間のハートフルドラマ。
これだけだと全く面白くなさそうなストーリーだが、小気味いいセリフと演技で飽きさせない。
教師ポール役のポール・ジアマッティ、メアリー役のダバイン・ジョイ・ランドルフ、
アンガス役のドミニク・セッサ(新人!?)、三人とも役に嵌っていて、誰かか欠けると映画が成立しない。
話が進むにつれ、三人ともそれぞれ深い悲しみを抱えていることが明らかになるが、過剰に泣かせたり罵倒させたりさせないのがとても良い。
印象的なシーン
・劇中の時代に合わせて、冒頭のユニバーサルのクレジットも昔のやつ、フィルムのノイズも再現しているのがニクい。
・ラストでポールとアンガスが分かれるシーン。ポールは解雇されるバッドエンドにもなりそうな展開だが、がっちり握手して別れる、という終わらせ方がとっても良かった。
人は自分のためだけに生まれてきたのではない
こないだ鑑賞してきました🎬
堅物教師ハナムを演じたポール・ジアマッティは味のある俳優さんですね。
初老と言える年代ですが、それだけにいぶし銀ともいえる演技を見せてくれます🙂
終盤でアンガスを庇ったシーンは、ぐっときます🫡
料理人メアリーを演じたダバイン・ジョイ・ランドルフも、アカデミー助演女優賞を受賞しただけありますね。
カーティスという一人息子を早くに亡くし心に傷を負いながらも、しっかりと前を向く女性を体現しています🙂
アンガスを演じたドミニク・セッサも、なかなか良いですね。
新人さんらしいですが、ハナムやメアリーと徐々に打ち解けていく過程は違和感なく観れました👍
見終わったとき、ほっこりする気持ちになれるヒューマンドラマですね😀
このジャンルが好きな方にはおすすめです❗
心境の変化と成長
メインの3人の関わりによる
心境の変化と、成長が
映像やすこしのセリフと共にしっかり伝わってくる
とても、入り込みやすく良い作品だった。
全体的にちょっとしたユーモアもちりばめられ
クスッと笑えるところもありつつ
本筋はしっかり筋が通り
心に響くストーリー。
個人的にはラストシーンの
先生が車で長年勤めた学校から出て行くシーンが好き。
ハングオーバーみたいなタイトル
堅物教師とやさぐれ生徒がクリスマスシーズンを共に過ごすことによって互いの良さを見出し、それぞれに変化が訪れるという非常にクラシカルでトラディショナルな物語。
決して自分の信念を曲げない先生が彼の為に自己犠牲を選んだ瞬間に、涙したよね…。
彼の生き甲斐である職を手放す覚悟で生徒の未来を選んだ。考えを押し付けるだけではなく、自己犠牲の精神も経験した彼はより良い教師になっただろうに…。
展開は誰にでも読めるものだけれど、やっぱり感動しちゃう。
でもちょっと物足りなかったかな。
予想外のことが起こらないし、少し長い。
あと、序盤に出てきた他の生徒たちの物語も見たかったかな。
まあでもクリスマスシーズンに観るにはピッタリの佳作。「ハングオーバー」と対をなす作品としてどうぞ。
忘れ得ぬクリスマス休暇
1970年の暮れ、マサチューセッツ州の寄宿学校で共にクリスマス休暇を過ごすことになった教師と生徒、給食係の心の触れ合いを描いた作品。おりしもこの年の夏、韓国クンチョンでは金塊を巡って海女さんとヤクザ、国税局が入り乱れての争奪戦が行われた(「密輸1970」現在絶賛公開中)。
学園は年末のクリスマス休暇を控え生徒たちは浮足立っていた。しかし家庭の事情から休暇を寄宿舎で過ごす生徒もいて、その管理を歴史教師のポールが任される。堅物で融通の利かない彼は他の教師からも生徒からも嫌われていたが人情には厚い部分があった。
最終的に母親と連絡が取れなかった問題児のアンガスだけが残り、アンガス、ポール、給食係のメアリーの三人で過ごすこととなる。休暇を奪われ再婚した母に不満を抱くアンガス、ただ彼にはそれだけではないもう一つ大きな悩みがあった。
メアリーはあえて休暇を取らず今回の仕事を引き受けた。ベトナムで戦死した息子の遺影が飾られてるこの学園で過ごすために。
成績優秀ながらも貧困ゆえに従軍を余儀なくされ戦死した一人息子。富裕層の能天気な落ちこぼれ生徒たちがいかに憎らしかったことか。食事の味が悪いのは彼女なりの富裕層への抵抗だったのかもしれない。
事務員の女性のクリスマスパーティーで羽目を外したメアリーは息子を失った悲しみに耐えられなくなって号泣する。そんな彼女を見て気の毒に思うポール。
アンガスは生真面目でルールにうるさいポールとはことあるごとにぶつかるが、うまく彼を丸め込みボストンへの外出を勝ち取る。
そこで二人はある人物と再会を果たす、ポールは大学時代の同級生と、そしてアンガスは父親と。アンガスのボストン行きの目的は最初から精神病院に入院する父との対面だった。
誇りにしていた父の変わり果てた姿、もはや話も通じない。さみしさと不安を口にするそんなアンガスを慰めるポール。
そしてポールも学生時代のつらい体験を告白する。彼も出自は裕福ではなく富裕層の同級生にあらぬ疑いをかけられ退学となっていた。彼も天涯孤独であり、いままで心を閉ざして生きてきたのだ、まじめな堅物教師という仮面をかぶって。
立場の違う教師と生徒、普通に学園生活を送っていては到底過ごせない濃密な時間を共に過ごした二人。この時間が二人を少しだけ変えてゆく。
ポールから勇気を与えられたアンガスはもう問題児じゃあない。信頼できるポールとの出会いが彼を大きく成長させた。そして毛嫌いしていた問題児の生徒との心のふれあいを通して自分をさらけ出したポールもアンガスをかばい学校を辞職することとなる。あの堅物で融通の利かない男が一人の生徒のために自分の身をささげたのだ。彼はアンガスを救ったが、彼もまたアンガスから救われたのだ。もう今までの嫌われ者のポールではない。
けしてここまで深くかかわりあうことのなかった立場の違う人間たちが偶然のきっかけで人生を変えるほどの出会いを果たした。
アメリカ社会の貧困問題や格差問題も余すことなく描いた心温まるヒューマンドラマの傑作。
ちなみに宿舎に残されるのはヘイトしていた一番の問題児の彼だと思ってた。彼に比べればアンガスはむちゃくちゃ好青年に見えるけど。
誰しも、気軽に人に話せない葛藤がある
舞台は1970年代のアメリカマサチューセッツ州だけれども、フランス映画にも感じてしまう。それほど軽くなくしっかりと胸に残る映画。
全寮制の寄宿学校でクリスマス休暇に家へ帰れず残る生徒たちの監督役をすることになった教師のハナム。
皆と同じように家に帰るはずだったが、母親が再婚し新婚旅行に行くため帰れなくなり、突然寄宿学校に残ることになった生徒のアンガス。
ベトナム戦争で、まだ10代の息子を亡くした寄宿舎の料理長のメアリーもまた残って一緒にクリスマスを過ごすことに。
それぞれに葛藤を抱えてて、それぞれが望まない2週間を過ごすこととなる。
だけれどもそうすることでだんだんとお互いの本質が見えてきて、家族のように思いやることができるようになる。
アンガスは思ったことがそのまま口に出て、人を傷つけることもしばしばで、生意気で憎たらしいが、見た目は大きくても子供なのだ。嬉しかった時の表情が何とも可愛らしい。
そのアンガスを見事にハナムが教育するように思ったが、2人の関係はそうではなくて、お互いを知り尊重し合う事でお互いを家族のように大切に思うというものだったのだと思う。
最後アンガスは退学せずに済んだが、ハナムはクビに。
アンガスの将来を思ってのハナムの選択だったのだと思う。きっと多分、アンガスはそれを忘れることなく、クリスマス休暇にハナムに教えられたことを糧に立派な大人になれるだろう。
最後の終わりもフランス映画っぼかった
劇中の音楽がとても良くて、たくさんのクリスマスソングが流れ、とても綺麗なコーラスが流れたり、ブルースっぽい曲も流れたり。クリスマスにもう一度観たくなるかもね。
1970年、米国北東部の寄宿制の名門バートン高校。 クリスマス休暇...
1970年、米国北東部の寄宿制の名門バートン高校。
クリスマス休暇でほとんどの生徒たちは親元へ帰るのだが、事情があって帰れない生徒たちが何人かいる。
今年も4人、寄宿舎に残ることになった。
監督役を命じられたのは古代史を教える非常勤教師ポール・ハナム(ポール・ジアマッティ)。
頑固で偏屈、その上、体臭がキツイと、生徒はもちろん教師仲間からも疎まれている。
4人の居残り生徒と思ったが、急遽ひとり追加。
問題行動で高校を転々としているアンガス(ドミニク・セッサ)だ。
それに、黒人女性料理長メアリー(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)。
彼女は、去年同校を卒業した息子をベトナム戦争で息子を亡くしたばかりだった・・・
といったところからはじまる物語。
予告編などから、居残る生徒はひとりだと思っていたので、あれれと思ったけれど、他の4人は序盤でホリデイを迎えることができて、いなくなってしまう。
本題はどこからなのだけれど、この生徒5人のときの描写が丹念。
で、ここが意外といい。
急いては事を仕損じると言わんばかりの映画の語り口。
冒頭のユニバーサル映画マーク、鑑賞年齢の制限を示す「R」マーク、主要キャスト・スタッフのオープニングクレジットなど、画面のフィルム感も含めて、これぞ70年代の映画という雰囲気から続くのだから、急いではいけないわけである。
(なお、画質はデジタル撮影の上に効果処理を施したらしい)
で、ハナム、アンガス、メアリーの3人になってからの物語に通底するのは、嘘と後ろめたさ。
ベトナムで戦死したメアリーの息子は、白人の後ろめたさの象徴のようだ。
3人が徐々に心を通わせていく、というのはお馴染みの展開だが、アンガスがハナムの体臭に言及するあたりから、ふたりは似た者同士、同じ人物像の若きと老いとわかってくる。
このあたりから、じんわりと胸が熱くなってきます。
どうしてもボストンに行きたかったアンガスの理由、ハナムが母校で非常勤教師を務めている理由・・・
それらの真実には、幾分かの嘘が覆いかぶさっている。
物事を滞りなく進めるために。
けれど、嘘と真実のどちらを見ればいいのか。
嘘だけみていても世の中生きていけるじゃないか、とも思う。
それは、ハナムの斜視、左右で異なる方向をみているように見える目のようなものだろうか。
「どっちの眼をみて話をすればいいの」とアンガスがそれとなく言う。
最終盤、右の眼を指さしてハナムが言う。
「こちらの眼をみて、話せばいいんだよ」と。
観終わってすぐの感想は「久しぶりに、いい映画を観たなぁ」だった。
「いい」は「良い」「好い」とも書けるが、「善い」が適切でしょう。
3人の心が通い合う様は、とってもハートフル
問題児タリー君が、ひょんな事から、ハナム先生とラム(料理を作る人)と、3人で冬休みを過ごす事に。。。
タリー君は、言わゆるイタズラっ子、クソガキなんですが。。。3人で暮らして行く過程で、ハナム先生が、イタズラっ子なタリーを良く面倒を見ます。そのシーンが微笑ましいです。
タリー君は、終盤に生い立ちが解って行き、恵まれ無い、苦労せざる得ない子なんです。。。それでも、病気のお父さんの事を思いやる心優しい子なんです。ジーンとします🥹
ラムも、子供を戦争で亡くしており、ハナム先生も、大学を中退して、波乱万丈な人生!
その3者3様が、毎日一緒に暮らす中で、心が自然と通い合う姿に感動します🥹涙😭
ハートフルな映画🎞です。みなさんも、是非、観てみたらどうですか❓感動しますよ😃✨
何度でも観たい
爆笑コメディというよりは
ホロリ要素強め、時々クスっと笑えるビタースウィートヒューマンストーリー。
先生のポール、生徒のアンガス、共に嫌われ者らしいが
優しく常識的な一面を冒頭から醸し出しており、共感が沸いた。
生徒役のドミニク・セッサ、これが映画初出演だとは思えない程
屈折した部分と素直さを併せ持つ少年の演技が素晴らしかった。
ポール、アンガス、メアリー、3人とも深い悲しみを抱えており
それぞれの人生に身につまされるものがあった。
1970年から71年にかけての冬が舞台ということだが
その時代らしい演出が、音楽も含めてとてもはまっている。
斜視や臭いは今のご時世だともう話題にもできないかもしれないが
ポールが辿っていた人生を描く上で避けては通れず、
関連したセリフが何度も出る。そういう時代である。
印象的な場面の多い映画だが、
アンガスとポールの学校での追いかけっこ、
台所での爆竹、
アンガスとポールの最後の場面が特に心に残った。
何回も観たい映画であり出会えて良かった。
ジジイには懐かしいオープニング!
1970年代後半~80年代前半、親や親戚と一緒に「タワーリングインフェルノ」や「ミッドウェイ」などの洋画ロードショーを見た身にとって、冒頭の「ユニバーサル」「ミラマックス」のロゴや、鑑賞対象世代を表す画面や、光学式サウンドトラック特有のパチパチノイズ(わざと入れたんだろうな)は涙モノ。あそこまでやるんだったら、いっそのこと、映写機切替合図の黒丸(2回出てきましたね)と「ブチッ」という切替ノイズも欲しかったかも。
先生も生徒も給食のおばちゃんも、根は皆良い人で、ただ星のめぐりが悪くて貧乏くじを引いてしまっただけの人。ハーバード時代の旧友や校長(実は元教え子)は、要領よく(この場合は狡猾に)世間を渡り歩いて、お金持ちにはなったが心が貧しい。主人公たちのような不器用で純粋な人間は貧乏のままだが、こころは豊か。日本人的には後者が良いかなあ。ただ、四六時中空腹は辛いから、そこそこのお金は必要だけどね。
丁寧に作られた物語で、衝突が融和して変化していく過程が緻密に描かれていた
2024.7.2 字幕 イオンシネマ京都桂川
2023年のアメリカ映画(133分、PG12)
クリスマス休暇で帰れなくなった生徒を世話する偏屈な教師を描いたヒューマンドラマ
監督はアレクサンダー・ベイン
脚本はデビッド・ヘミングストン
原題の『Holdovers』は「残留者たち」「囚われている人たち」という意味
物語の舞台は、1970年の12月のアメリカ・ニューイングランドの寄宿学校
その高校の出身者である教師のポール・ハナム(ポール・ジアマティ)は、数十年を母校に捧げ、今では教え子ハーディ(アンドリュー・ガーマン)が校長を務めるほどになっていた
彼は生徒に厳しく、富裕層で寄付者の子どもだろうと容赦はしない
その対応は校長にしわ寄せが来ていて、教師間でも距離を置く人間が多くなっていた
そんな中でも、校長の助手ミス・クレイン(キャリー・プレストン)は分け隔てなく接し、彼は密かな思いを抱いていた
その年の冬、クリスマス休暇であるにも関わらず家に帰れない子どもたちがいて、その管理者を誰にするかを押し付け合うことになった
当初はエンディコット先生(ビル・モートス)が受け持つはずだったが、彼は母の病気を理由にして、最終的にはポールに押し付けることになってしまう
残ることになったのは、素行が悪いクンツ(ブレイディ・ヘプナー)、遠くて帰れない韓国人留学生のイェジュン(ジム・カプラン)、両親の宗教が原因のオラーマン(イアン・ドリー)で、両親が旅行中のジェイソン(マイケル・プロヴォスト)は都合がつき次第帰ることになっていた
そんな中に、生徒の中でも嫌われ者のアンガス・タリー(ドミニク・セッサ)が加わることになる
彼は父トーマス(ステファン・トーン)が精神病院に入院していて、母ジュディ(ジリアン・カプラン)は離婚し、スタンリー(テイト・ドノヴァン)と再婚していた
スタンリーが多忙のために新婚旅行に行けておらず、この機会を使おうと考えていたのである
映画は、ポールが5人の生徒と、寮のコック長メアリー(ダバイン・ジョン・ランドルフ)、用務員のダニー(ナヒム・ガルシア)たちとクリスマス休暇を過ごす様子が描かれる
その後、ジェイソンの父(グレッグ・チョーポリアン)が迎えに来たことで、タリー以外の生徒が一緒にスキーへといってしまう
タリーは両親と連絡が取れずに許可が取れず、彼一人が取り残されることになってしまうのである
映画は、偏屈なポールと頑固で制御不能なタリーの交流を描いていて、メアリーとダニーは場を和ませる役割を担っている
ポールは課外学習との名目でタリーが行きたがっているボストンへといくのだが、そこでタリーの父の精神病院へ行ったことがバレて、事態はややこしくなってしまう
さらにボストンでは、ハーバート大学時代の同級生ヒュー(ケリー・オコイン)とその妻カレン(コレーン・クリントン)と再会することになる
ヒューはハーバードを中退した元凶でポールは自身が成功していると嘯きその場を取り繕うのだが、タリーはそれに加担する格好になってしまう
ポールはタリーに自分の過去を語り、それがタリー考え方を変えていくことにも繋がっていくのである
映画は、少し長めの上映時間だが、そこまで長さを感じさせない印象
青春期の危うさが全開になっているが、騒動の顛末をポールの決断で締めるのは良かったと思う
精神的な父親代わりになりそうなポールは、彼をこの時点で転校させることは人生に悪影響だと考えていた
過去を清算する意味合いも含めて退職を決意したと思うのだが、縛りがなくなったとは言え高齢なので、これから彼がどのように生活をしていくのかは気になってしまう
メアリーからもらったノートに執筆を始めるかもしれないが、隠居するにはまだ早いので、どこかで教師を続けてほしいなあと思ってしまった
いずれにせよ、問題を抱えた教師と、大人の問題に晒されている生徒の交流を描いているのだが、この擬似的な関係がうまく融和していく過程は綿密だったと思う
この二人だけだと空気が最悪なまま進んでしまうのだが、メアリーとダニーがいることが緩衝材になっていた
二人は自分が抱える問題に内向していく中で、メアリーの問題が浮上して物語が転換するし、ミス・クレインのパーティでの顛末もなかなか見応えがあった
最終的に校長室での一件が物語を締めるのだが、四面楚歌の状況で男を貫いたのは良かったと思うし、それをタリーが知ることがないというのも良いと思う
卒業して再会するときには、タリーは彼自身が臨む大人になっていると思うので、生理的な父、環境的な父、そして精神的な父がいることは彼の人生にとって幸運なことだったのではないだろうか
たった2週間の出来事なのに。
孤独を抱えて生きてきた先生の、皮肉だけど的を得ている言葉が、キラキラ散りばめられてて、なんとも心地の良い時間でした。
バートンが、彼のすべてだったのに、それを犠牲にしてもタリーを守ったなんて。
バートンマンを貫いた先生が、ホントに素敵。
頑なだったタリーが、2週間で得た擬似家族体験は、それまでの彼の人生になかったものなんだろうな。
そのことを素直に言えるまでになったのも、身近な大人たちのお陰。
アメリカ東部のトラディショナルな雰囲気も素敵。
う〜ん、ジンビームが飲みたくなる!
貧しいものは浮かばれないアメリカの現実
教師・ハナムは有り体に言って嫌な奴。堅真面目はそうだが、正論にかこつけて生徒たちをいたぶってもいる。大体世の中をナナメに見ている。皮肉屋で、自分でも気づいていないかもだが裕福なお坊ちゃまな教え子全般に憎しみに近いものを抱いているよう。特殊な病気の影響で強い体臭があったり斜視だったり、オトコとして女性に好かれることを諦めている。それでも、教師としての責任感は持ち合わせているし、勤め先である学校を愛している、矛盾だらけのニンゲン。
クリスマス休暇にたったひとり寮に残される羽目になった悪童・アンガスは悪質さはまだマシなほうで、かわいそうが先に立つ。わがままだが寂しがりで健気なところがあり、年少の少年のおねしょを一緒に対処してあげる優しいところがあったりもする。学校の食堂の料理長メアリーは、使用人として蔑まれることに慣れているよう。無愛想だが温かみがあり、最愛の一人息子を失った悲しみ、喪失感でいっぱいいっぱい。ポーカーフェイスでいるが、なにかの拍子に大爆発したりする。
3人共良い面悪い面持ち合わせて、矛盾だらけだが、これが「普通の人間」だ。
雪で閉ざされがちな学校で3人で過ごすうちに、なんとなく心が通い合うようになる。
彼ら3人に共通して言えるのは、寂しさを抱えていることだ。
ハナムは嫌われ者であることを自覚しているものの、開き直りながらも誰かの愛を求めているよう。アンガスはストレートに母の愛に飢えている。メアリーはいわずもがな。
多分、「寂しさ」に共感したことが、3人の心の交流の取っ掛かりだったんだと思う。
ポールが嫌なやつになっていったそもそもの原因、メアリーの息子が亡くなった原因。
それは彼らが貧しかったから。
貧乏人が努力してなんとか学歴社会に食い込んでも、貧しいがゆえに内部で蹴落とされるのが現実。
この点は日本の社会のほうがまだマシな気がする。
ハナムはクソッタレのはずの教え子アンガスに肩入れして庇った結局、自身が職を追われることになった。
解雇が本人の本意か不本意かわからないが、ハナム先生にとっては遅まきながら「巣立ちの時」になった。それまでのしがらみと、自分自身を過去のものにして、新しい自分として生きていくことになったのだ。
すでに良いお年だし狭い世界しか知らず、しかも性格も歪んでいるし、病気のこともある。これからどうするんだろう。
本人にあまり悲壮感がない様に見えるのは、強がりなのか本当に気分がいいのかわからない。
独身だし滅多に外出もしない、自費出版で本を出した以外大した趣味もなさそうなので実はたんまり貯め込んでいて、当面生活に困らないんだといいなと思った。
または、上流階級の子弟のための名門校で、超がつくほど長く勤務した実績を引っ提げて求職したら引く手あまたで仕事の心配はないのかも。バートン校の校長だって、推薦状を書くくらいはしてくれるのではないか。それなら先が明るい、ハッピーな巣立ちになる。
ハナム先生が幸せになれると良いと思った。
良い話のようだが、良いことをした人が必ずしも報われるわけではない。
良いことをしたがゆえに、窮地に立たされる。
現実はそんなもので。
ハナム先生の将来は誰にもわからない。
やりきれなさ苦さも妙な余韻として残る、アメリカン・ニューシネマみたいなテイストの映画と思いました。
鑑賞動機:予告:4割、あらすじ3割、アカデミー賞3割
アプリで鑑賞劇場が最近選択したとこしか指定できなくなったのはバグかな。
舞台が70年代だからというだけでなく、映像自体がむかしの映像のような質感がするの気のせいだろうか。エンドクレジットの出し方とかも意図的にちょっと古い感じにしているでしょ。
マリアはともかく二人の拗らせ具合にウンザリする序盤。
片や未熟さゆえの浅慮と、その裏返しで背伸びして虚勢を張りたがる若者というかガキ(いやわかるけどそれ絶対10年後黒歴史よ)。片や研究への情熱の残滓は持ちながらも諦念と開き直りが悪い方に出てるオッサン。
クリスマスの奇跡…ではないのだけれど、そんな彼らが数日間でどう変わっていくか。
時に下品なユーモアが辛い人生にささやかな暖かみを与えてるのが不思議。
アレクサンダー•ペインはやっぱりいい!
ネブラスカ好きの私からすると、相変わらず地味で家で見たら寝そうな作品ですが、最高の作品でした。
相手に対して映画演出的にはちょっと物足りないくらいのリアクションが、また心に残る見事な演出でした。もちろん脚本も見事で、丁寧な作りの作品でした。ラストはいくらなんでも、そこまでやるか?と思いましたが、脚本が巧みで、時代背景も上手く生かされており、ハナムの決断も納得できました。アンガスの母の考え方も理解できました。
ただハナムが新しい生き方をするにはちょっと歳をとり過ぎてるとは思いました。しかし、彼も一皮向け逞しくなったと思うので、楽しく余生を送ってほしいと思いました。
ラストに至るまで色々感じるところがあり、ちょっと書ききれないのですが、本当に珠玉の作品だと思いました。
名作という程でもないが・・・
ライムスター宇多丸さんがラジオで話してるのを聞いて興味を持ったので鑑賞。心に穴を持った三人の最初はぎこちなく反発しても徐々に打ち解け分かりあっていく。最後に二人が話すシーン、「頑張るんだぞ、君なら大丈夫」という台詞でこれまでの全てが報われた気持ちになってとても清々しかった!名作という程でもないけど凄くイイ映画でした!
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