ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディのレビュー・感想・評価
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地味とはいえ最強のタッグ
アレクサンダー・ペイン × ポール・ジアマッティ ‼︎
そう、ペインとの出会いとなった2004年(日本公開は2005年)の名作「サイドウェイ」でもタッグを組んでいたお二人。
1970年、ホリデーシーズンに突入せんとするボストン近郊の全寮制寄宿学校。
家に帰れない学生の監督役となった教師ポール、母親の再婚のため寄宿舎に残ることになった学生アンガス、ベトナム戦争で息子を失って間もない寄宿舎の料理長メアリー、、、描かれたのは寄宿舎に残った3人の2週間の休暇。
濃密な時間だった。
心が通じ合った。
家族の如く、若しくはそれ以上に。
思いのほか辛口なエンディング。しかし時間とともにポジティブな印象に置き換わって行くのもペイン流。ポールの人生の新章がスタートした。
にしても、リチャード・リンクレイターとアレクサンダー・ペイン、自分と同じ時代を生きてきたお二人の作品に強烈なシンパシーを感じる。些細なことまで響き渡る。
古風な人情コメディがいい
フィルム基調の色彩にサントラはモノラル音声!これだけで一気に70年代にタイムスリップさせてきました(と言っても70年代は幼児だったのでリアルタイムで観た洋画は「未知との遭遇」と「遠すぎた橋」だけ)。
さらに映画の予備知識としては今年度のアカデミー作品賞にノミネートされただけ。スタッフも役者も知らない人ばかりで、主役こそ何本かは観てるが脇役なので全く記憶に無い。
そんな感じで始まりは観ていたのですが、最初の授業シーンで一気に映画の世界に引き込まれて行きました。
キャラクターがリアルで生き生きしてる。だからこそキャラクターを知れば知るほど感情移入していってしまいます。
そしてラストは味わい深い感動。
新鮮なドラメではなく、むしろ古風なメロドラマですが、映画の面白さはここにあると思います。
他人の人生に関わりたくない
こんな事なら引き受けるんじゃなかった。
生真面目で皮肉屋で学生や同僚からも嫌われている事は判っている。容姿や体臭も仕方がない、それが自分の人生なのだ。
多額の寄付金をしてくれたからといって成績に手心を加える事はしない。
要領良く出世した上司(校長)におもねることはない。校長はかつての教え子だったのだよ。
小賢しい子供は扱い難い。納得出来なくてもそれは貴方の家庭の問題なのだ。そして貴方が招いた事なのだ。その上はしゃいで怪我をするとは。
たったのクリスマス休暇の2週間じゃないか。
じっとしていてくれたら良かったのに。
でもそうだったら名作が生まれていないか。
私は会社員人生の中で
人は頼る人と頼られる人に分かれる。
そして頼る人は常に頼る側にいる。
そして頼った人が成果を上げられないと次に頼ることはない。
また頼られる人は人に頼らない。自分でなんとかする。
この事を学びました。
心温まる3人の物語(と、それ以外⁈)
名門校の寄宿舎で、クリスマスなのに母親から急遽学校に残るように言われ、居残りとなったアンガスと、頑固な教師ハナム、ベトナム戦争で一人息子を亡くしたばかりの料理長のメアリー、この世代も境遇も違う3人が織りなす奇妙な共同生活。
口も悪く、教師の言うことも聞かない“問題児”アンガスと、とにかくルールを守らせようとするハナムとの間には、大きな隔たりがあります。
しかし、さまざまなぶつかり合いがある中で、時にメアリーの仲介により、少しずつお互いの背景を知るようになり、2人の間に“絆”のようなものが芽生え始めます。
その過程がユーモラスで、温かい。
非行少年の更生を支援している方が「“問題児”というのは、子どもが問題なのではなく、問題を抱えている子どもなのです」という話を思い出しました。
そんな微笑ましいストーリーに体を預けていると、衝撃のラストが待ち受けていました。それは悲しくも、清々しい幕切れ。伏線の張り方も絶妙で気持ちいい!
逆に、母親や同級生、他の教員など、周りの登場人物が救いようのがなく悪い奴ばかり(という描かれ方)で、スッキリしない感情が残りました。
タイトルなし
アカデミー効果、なのか、やたら混んでいた
正直、冒頭は、うーん、そんなに?となってしまった
が、まさに置いてけぼりになってからは、だんだん面白くなり始めた
相手と少し関わったくらいでは、その人のことはわからない
どんな人生を歩んてきて、なにに挫折し、乗り越えてきたか
苦労も悩みもなさそうな人が、真実そうだとは限らず、
ツラそうな人が、実はもっと深い闇を抱えていたり、逆にそうでもなかったり
3人はまさにそれ
ちょっとコミカルな展開ややり取りを混ぜながら、その部分を描いていく
気づくと心がほんわかしてきてることに気づく
体育館、病院、クリスマスツリー、ボストンの街中、ボストンの夜、チェリーとアイスクリーム。。
ただ、エンディングは、少し現実的過ぎて、そうなるわな、と思いつつも、なんとも言えない気持ちになった
さらば冬のかもめを…
心に染み渡る、また粋で哀切感ある作品とはこのような作品のことをいうのだと思う。
レビュータイトルは、かつてのアメリカンニューシネマの代表作のひとつ。作品が醸し出す空気は似ている。
物語の舞台はボストン近郊の全寮制の男子校。クリスマスホリデーに実家に帰ることができない高校生アンガス。生真面目で融通が効かず嫌われ者の教師ハナム、ベトナム戦争で1人息子を亡くした料理長メアリーが休校中3人で過ごすことになり…というもの。
タイトルバックから、70年代フィルム映画の雰囲気たっぷりに映画は始まる。
物語自体は定型的ではある。我が強い3人が一つ屋根の下で反目しあいながらも過ごすうちに、その関係性に変化が生まれて…。
アメリカ、ハリウッド映画が得意としてきた人間ドラマなのだが、現代映画界においては、なかなかお目にかかれる作品ではないだろう。
学校に残らざるを得ない高校生アンガス、複雑な家庭環境が背景にあり、パーソナリティも攻撃的かつ反抗的。教師ハナムは厳しくシニカルすぎて、生徒からも教師仲間からも嫌われている。料理長メアリーは、1人息子を亡くしたことによる
喪失感を抱えながら。
物語前半は学校内が主な舞台、後半にかけてロードムービー的展開に構図を変える。
3人は反発しあいながらも、徐々に自らの置かれた状況や立場を思い、また思い合いながら過ごすうちに少しずつ絆に似たものが生まれてくる。私は個人的に、安易に絆という言葉を使うのは好きではない。簡単に使ってはいけない言葉だと考えているし、一朝一夕にそんなものができてくるわけではない、とも思っている。
が、絆に似た心の通い合いとでもいおうか、かたちはみえない、人が生きていくうえで大切な尊厳、のようなものがお互いに芽生えてくる。その過程が説教くさく表現されるのではなく、自然にストーリーに落とし込まれ、セリフに落とし込まれ、それでいて説明過多になりすぎずに表現されている。それらが見事だ。
ハナムが古代史を教える教師という役どころから、古代ギリシャやローマ皇帝の言葉などがたくみに使われて面白く、ユーモア、ペーソスを感じる。
ルビコン川をわたる、マルクスアウレリウス…自省録なんてあるのだ、と。読んでみたい気にさせられる。
ラストがまた粋で素晴らしい。さまざまなルサンチマンを抱えたハナムが、若いアンガスのために自らを犠牲にする。
メアリーもまたアンガスに寄り添う素晴らしいシーンがある。
監督のアレクサンダーペイン、私は知らなかったし、過去作もアバウトシュミットぐらいしか名前を存知しなかった。
アカデミー賞の常連だった…
シナリオ、デヴィッドヘミングソン。
キャストにスター俳優はいない。
ハナムを演じるポールジアマッティ、渋い
メアリーのダヴァインジョイランドルフ この役でアカデミー受賞
アンガス役のドミニクセッサ、新人ながら鋭くかつ優しいまなざしをもつこれからの俳優
3人が想いを抱えながらそれぞれの道をゆくラスト。
未来を感じさせる。
音楽の使い方も素晴らしい。
こういう映画、多くの人にみてもらいたいなぁ、と思います。ちょっと背中押してもらえるかな、と。
今年ベスト級
アメリカにとっての70年代は空白の時代か
1970年の暮れ
全寮制の男子校「バートン高」ではクリスマス休暇を目前にして
生徒たちは皆浮かれ気味。
これから先の二週間、家族の元へ帰る者、
家族と旅行へ行く者と、楽しみは尽きない。
が、その中に
家庭の都合で寄宿舎に留まることになってしまった
浮かない顔の生徒が数名。
ただその後に家族の迎えもあり、
生徒として残ったのは『アンガス(ドミニク・セッサ)』がたった一人。
監守役を押し付けられた
古代史教師の『ポール(ポール・ジアマッティ)』、
同校卒業の息子をベトナム戦争で亡くしたばかりで
住み込みで働く料理長の『メアリー(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)』と
三人だけの長い年末・年始が始まる。
『ポール』は、病気による独特の体臭と斜視の外見、
容赦ない成績評価もあり、生徒からは蛇蝎の如く嫌われ
同僚からもこころよく思われてはいない。
それでも、自身の母校でもある「バートン高」に対する想いは人一倍、
生徒達の人間としての成長のために心を砕く。
『アンガス』は、頭は切れ成績も悪くはないものの、
特殊な家庭事情もあり、性格面に問題が。
とりわけ宜しくない素行で、転校や落第も経験している。
『メアリー』も含めたクセのある三人だが
閉鎖空間で時間を過ごすうちに
次第に心を開く。
わけても『アンガス』と『ポール』は
相手の過去に何があったのかを知るにつれ、
互いに深い共感を抱くように。
既視感はあるものの、
印象的な数々のエピソード、
伏線と意外な回収、
小道具の使用、
そして洒脱な会話、と
脚本の練り込みが素晴らしい。
とりわけ休暇中の監督規則を都合よく解釈し、
古びた車でボストンまで長駆、
そこで起こる幾つもの事件が二人の結びつきをより強固にし
万感の思いが込み上げる最後のシークエンスに繋げる。
上っ面な親子関係よりも
肝胆相照らした他人の方が
よほど思いやりの気持ちが強くなる。
帰結としての自己犠牲は
やや優等生に過ぎるきらいはありつつ。
本編前の「Universal」のオープニングロゴからも
1970年代の香りがぷんぷんと感じられ、
オープニングクレジット、
エンドロールの形式も同様で、
物語世界のみならず全体のパッケージングから
観客を往時に連れ戻そうとの強い意図があるよう。
我々にはうかがい知れぬ部分も多いが、
米国に住む人々には、どのような記憶ともにあるのだろう。
ぜーんぶ良かった! ぜーんぶ好きだった!!!
70年代、寄宿舎のクリスマス休暇、
風景、音楽、衣装、ストーリー、俳優たち、その他いろいろ
ぜーんぶ良かった!
ぜーんぶ好きだった!!!
とくに、音楽がめちゃくちゃ良かったなー。
ウキウキしたり、センチメンタルになったり、
シーンごとにバッチリとハマってて、心地良かった~♪
サントラ買わなきゃっ!
ハナムも、メアリーも、タリーも、
少しの欠点とたくさんの美点が、とても魅力的で愛らしい。
ラストも、若いタリーの未来のための、
ハナムの行動も強くてステキだった。
こんな男気の彼の未来も、きっとステキなはず!
長編本を出版したりしてね~。
ハナムが、ちょいちょい良いこと言ってたけど、
なぜか残っているのが、
『99%の摩擦と1%の好意』
これ、ちょっと面白かったなー 笑
タリー役のドミニク・セッサ
完璧な格好良さではない不思議な魅力のある俳優さん、
今後の作品が気になるー。
大人の役割を考えさせられる
置いてけぼりになった3人が共同生活をする中で、それまで知らなかった互いの良さに気づいていたり、悩みを共有していくというような流れですが、個人的にはポール先生の生き様に興味を惹かれました。
ポール先生はしょっちゅう「嘘をつくな」と教えていたのに、久しぶりに過去の同僚と会った時には自分の経歴を偽り、誇張して伝えてしまう。
そこを教え子のアンガスに問われて、開き直りながらも、過去にあった事実と現在の経緯を正直に話す。
ポール先生は理不尽な目に会った時に、見て見ぬふりをして流すことができず、自分の正義を貫いてしまう人で、それが原因で現在も冷遇されている。
物語の後半にアンガスは理解はできるが勝手な行動をしてしまい、両親を怒らせて退学のピンチを迎えるが、その時にポール先生は事実とは違う事を言って、自分が罪を被り退職してしまう。
ポール先生の正義は、事実か嘘かよりも、正しいと信じる行動を取ることなんでしょう。
アンガスはクリスマスに父親に会うという当たり前の正しい行動をして、それが罪に問われてしまった場合、先生は嘘をついてでも生徒の将来を守るという事が、ポール先生の正義だったのだと思う。
退職したポール先生はどこかに去ってしまい、明るい展望は見えないまま映画は終わってしまうが、教え子のアンガスの未来は守られたし、人間として大切なものを受け取った。
これで良かったのだと思える大人になりたいです。
なぜ歴史教育をするのかという疑問に対する答えとしての真摯な教師の姿を描いた作品です。
学生の頃、東京の学生寮に入っていた。年末年始は基本的に寮は閉鎖されるのだが事情があれば居残ることはできた(食事は出ない)例年、かなりの人数が居残っていて、年末年始はバイトの給料が良いとか理由をつけていたけどやっぱり帰省費用を出せないというのがホントウのところだっただろう。我々は「越冬する」と言っていて残るもののことは「越冬隊」と呼んでいた。もちろんがらんとした寮に数人で取り残されるのは寂しいのだが、なにか奇妙な開放感と残るもの同士の連帯感があったことをこの映画で思い出した。
さて、映画はこの越冬隊の3人(途中までは7人だった。掃除夫のダニーがなぜ数に入らないかはよくわからない。通いか?)ハナム先生と学生のアンガス、料理人のメアリーのそれぞれの事情と連帯感が描かれる(ことになっている)しかし、3人の連帯という意味では割と淡々と映画は進みそれほどエモーショナルに盛り上がらない。そのあたりを物足りなく感じる向きはあったようだ。
私はむしろ、この映画は、ハナム先生が歴史教師として、そして子供たちの指導教官として戦い、そして敗れて学校を去るまでの物語として受け止めた。「チップス先生さようなら」や「いまを生きる」のような教師ものなのである。
ポール・ハナムは古代文明の教師である。古代文明っていうと何か「ムー」っぽいのだが要はギリシャ・ローマ史を教えていることになる。歴史教師というものは昔も今も、例えばペロポネソス戦争のことを覚えて何か得られるのか、という生徒や周囲からの疑問に接することになる。
歴史のテキストはテキストでしかなく、そこから未来に繋がる叡智を読み取ることができるというのはおそらくウソである。テキストは延々と教師と生徒という関係の中で教え、教えられてきた。テキストをリズミカルな言葉で伝えその豊潤な世界観と詩情を表現するのが教師であり、それを的確な洞察力で受け止めるのが生徒である。おそらくこの関係性自体に意味があるのであって、真摯に生徒に対することができる教師は、人生の教師としても多分、優秀なのである。
この映画は、歴史教師であるハナム先生が、真摯に生徒や生徒以外の人たちに接して、そして世俗や、もっと端的にいうと金満主義に敗れて学校を去るところを描く。でも、アンガスは学校に残り、ひょっとしたらメアリーの妹の子(ティモシーというミドルネーム)もいずれはこの学校に入ってくるかもしれない。教育というものは永遠に続いていくものであるということを微かに希望として提示して映画は終わる。
人生捨てたもんじゃない!
名門バートン校の寄宿舎でそれぞれ苦悩を抱えながら生きている3人が、クリスマス休暇中に置いてきぼりで一緒に過ごす事になり、いつしか相手を思いやり絆が生まれて行く。3人ともとても個性的でいい味出している。仲間に入れてもらって、ソフアーに腰掛け、TV見ながら一緒にお酒飲みたいなーなんて気分になる。アンガスは見た目も良いけど、性格も良いな。いろいろあって、やんちゃで生意気だけど、心根はとても優しい。おねしょのシーツもそうだし、ハナム先生が困らない様に庇うところも‥今は辛くても、幼い頃に父親と母親?の愛情をたっぷり受けて育ったんだと思う。そうじゃないと、あの若さであんなに人の気持ちを思いやる人間には中々なれないよ。久しぶりに、素敵な映画を観る喜びと幸せ感じたわ❣️。いい一日だった。
会話劇のバッググランドを理解して観たい映画
またまた高評価の嵐であったため、前知識なく挑戦。
序盤の展開がパッと見はスゴい地味なんですよね。70年代の男子校の中での、人間のやりとり。こっちから積極的に理解をしにいかないと、「面白い」と感じにくいんですよね。前半は(観る側の問題なのですが)ウトウトしながら鑑賞してしまい、人物の人間性なりバックボーンなりを理解せずすぎてしまいました。
中盤以降、分かりやすい場面展開で物語が進むのですが、それぞれの「事情」が段々と分かってくることで、映画の厚みを、理解できます。
ラストの先生と彼との握手のシーンは名シーンですね。目頭が熱くなります。
70年代のアメリカの黒歴史(主にベトナム戦争)という背景をちゃんと理解して観るべき映画でした。
口コミでロングランになりそうな良作
受賞歴も知らずストーリーも地味だけど個人的に縁がある部分があったので見に行ったら平日なのに結構埋まっていてびっくり
ミニシアター系の佳作はたまに出会うけど、この作品はクスッと笑えるところが多く(実際声を出して笑っていた人も何人かいた)最後ほっこり終わるかと思いきや斜め上のエンディングも良かった
日本に配給してくれた会社あっぱれ!と思ったらオッペンハイマーやPERFECT DAY S、パラサイトも配給している会社でなるほどね
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