「Bon voyage」ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
Bon voyage
ダヴァイン・ジョイ・ランドルフさんがアカデミー賞で最優秀助演女優賞を受賞した事だけを頭に入れての鑑賞。
どんな作品かはあらすじでフワッと触れたレベルで、そういえば予告とか全く観なかったなーと思っていたり。
これはダークホースだ…!想像以上に面白く、自然に感動できる作品になっており、観終わったあとにとってもほっこりできる理想的なクリスマス&年末映画でした。
斜視の症状を持つ教師のハナム先生と、ママが新しい夫とバカンスに行くがために学校に残れと言われたアンガスと、息子を亡くしている学校の料理担当のメアリーの3人で繰り広げられるなんて事ない休暇に色を付けていく物語で、最初はソリの合わない感じだったのに、互いの心情や行動について理解を含めていくと、どんどん相手を大切に思うようになっていく構成が本当素晴らしくずーっとトキメキながら観ていました。
最初こそ5人の居残り生徒がいたものの、途中でヘリで迎えにきてくれて4人は戻れるのに、アンガスのママは連絡がつかないというなんたる奔放っぷりに憤りを感じましたが、結果的に3人の距離を近づけるきっかけになっていく展開はエモかったです。
アンガスが年相応にハナムを振り回す中で、体育館のジャンプ台から思いっきり飛んでからの脱臼で大慌てのハナムが病院へと連れていく過程でグッと関係性が近くなって、痛々しいところですがフフッと笑える構図になっていたのも良かったです。
メアリーとお酒を飲んだり、恋愛ショーを見てキャッキャッウフフしていたのも微笑ましく、その中で体臭について指摘されて、ウッとなっていたのも良かったです。
ボストンに行ってからはガラッと流れが動き出して、親子のようにキャッキャッするハナムとアンガスがとても良いですし、メアリーが妹宅でまったりしてるのも良いですし、旧友と出会った時に嘘をついたハナムをアンガスがフォローしてくれたり、ジムビームを買う時に武勇伝をワッハッハと語っていたら店主に殺人犯と蔑まれたりと、笑いどころも多く含まれていて最高でした。
アンガスの真の目的は父親に会いにいく事で、最初こそ事情を説明しないアンガスを引き留めたハナムだったけれど、事情が分かってからは二つ返事で介護施設にいる父親への元へ向かい、再会を見届けるというのもわだかまりの解消ができていてとても沁みました。
この災害により、父親が元の家へと戻れる希望を持ってしまったがために不安定になってしまい、元嫁に違う施設に送られるという事情は分からんでもないけれど…もう少し責任持とうぜ…と元嫁に憤りを感じるくらいには感情移入していました。
クリスマスのレストランでは、お酒の入ってるスイーツは提供できない、いやしてくれの押し問答が面白く、ならばアイスとチェリーを持ち帰って、ジムビールをかけてなんちゃってスイーツに火をつけて燃えまくって友達のように笑い合っていて微笑ましかったです(はよ消化しないとヤバいことにはなりますが笑)。
ラストシーンもこれまた良くて、結果的には学校を追い出されてしまうハナム先生の元に全力疾走でやってくるアンガスが軽口を叩いて、熱い握手をしての別れが物悲しいはずなのに、どこか前向きになれる感じで良く、THE・恩人なハナム先生と自分も握手したくなりました。
空気を重くしないためにこっちの目を見て話してくれよと呟いたりしてほぐしてくれるのも良かったです。
役者陣もこれまた素晴らしく、特にアンガス役のドミニク・サッセ君は学校で行われたオーディションで選ばれたとのことなので、ほんまに良い子連れてきたわ〜と拍手したくなりました。
音楽も70年代の緩やかな感じが素敵で、背景のインテリアも部屋に飾りたくなるくらいオシャレでとても好みでしたし、街並みもこれまた美しいもんですから、どのシーンを切り取っても良いな〜という感動がありました。
夏場だけどクリスマス映画ってのも良いな〜となりました。
きっと今年のクリスマスのお供になる作品だと思います。上半期滑り込みで傑作キター!
鑑賞日 6/26
鑑賞時間 16:05〜18:25
座席 E-10