「オープニングから魅了された」ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
オープニングから魅了された
1970年の設定なので、オープニングからその時代の映画的な雰囲気が満載で、数分でこの映画の感じに心が飲み込まれてしまう。
個人的には、この映画冒頭、古い「UNIVERSAL」からの5分くらいが、すごく感傷的な「エモい」時間だった。
さて、内容。
誰でも、人生に「陰」や「孤独の悲しみ」を抱えている。でも人はそれを見せない様に無理に我慢したり、隠したり、嘘をついたり見栄を張ったりして、繕いながら生きている。
登場人物全員がそんな孤独を抱えながらも、特に周囲と折り合いをつけることなく、皆自分の力で生きていくだけの「したたかさ」は持っている。
でも、お互いがそれを理解して支えることで、よりその人生が深みや輝きを増していく。
現状を否定せず、ちょっとだけ前に一歩進める様に背中を押す。
そんな、いろんなことを受け止める器の広さのある映画。
オープニングを始め、他にも好きなシーンがいくつもあった。
同部屋でオネショしちゃったアジア人をフォローしてあげるシーン。
アンガスがお父さんに会うシーン。
3人でボストンのレストランに入り、アルコールの入ったデザートを店員に
出せないと言われたシーン。
ラストでメアリーが、主人公が旅立つ直前に無地のノートをプレゼントするシーン。
大げさな演出はないのに、すごく心にグッとくる。
役者たちがみんな良い。
登場人物たちの表情、演技、言葉、もちろん物語全体に溢れる「優しさ」。
特に音楽がすごく良かった。
映画として「何が」「どう」良いのかは、私の力では文字化できなそうなので、そういう解説を生業にされている方に託すことにする。
私はとにかく作品全体を包む優しい眼差しに、「ああ、良い映画観たな」という満足感で劇場を出た。
家に帰って来て、レビューのために思い出せば思い出すほど、味が出てくるね。