「ベルギーのブリュッセルに暮らすカディジャ(サーディア・ベンタイブ)...」ゴースト・トロピック りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
ベルギーのブリュッセルに暮らすカディジャ(サーディア・ベンタイブ)...
ベルギーのブリュッセルに暮らすカディジャ(サーディア・ベンタイブ)。
彼女の仕事は清掃係。
長い一日の仕事を終えたある日、帰宅時の電車で眠り、乗り過ごして終点まで乗り過ごしてしまう。
電車は最終電車。
17歳の娘に電話をしたが、出ない。
終着駅から自宅までは、どうにかすれば歩いて帰れるかもしれない距離。
歩き始めたものの、やはり疲れている。
タクシーで帰ろうとするが、手持ちの金がない。
深夜のショッピングセンターを警備員に無理を言って開けてもらい、クレジットカードで金を引き出そうとするが残高不足となってしまう。
警備員は、深夜バスがあるから、と親切に言ってくれ、バスに乗り込んだが、突然の運行取りやめ。
もう、歩いて帰るしかない・・・
といった物語で、『Here ヒア』と比べて、エピソードがいくつも織り込まれていて、ちょっとしたロードムービー。
その後、かつて掃除婦をしていた屋敷を訪れたり、深夜営業(とはいえ終夜ではないので、閉店寸前)のコンビニで売り子の女性と出逢ったり、電話に出なかった娘の行動を垣間見たりとエピソードは続き、オフビートな笑いも含まれていて、ジム・ジャームッシュの映画を彷彿させます。
主人公のカディジャは常にスカーフを巻いているので(外にいて寒いので防寒なのかとも思ったが)、たぶんムスリム女性なのだろう。
彼女が垣間見る娘の姿は、おおよそムスリム的ではないのだけれど、その世代間の差がこの映画のテーマの一つかもしれません。
また、途中で、カディジャを掃除人として雇いたいという中年男性は「ポーランドから来た掃除人が逃げた・・・」と言っていることから、ベルギーでは隣国フランス同様、他国からの移民流民が非常に多いのだろう。
そこいらあたりも、この映画のテーマのひとつかもしれない。
ラスト、娘が訪れる南国の地が唐突に映し出されて、ぶった切ったように終わるのだけれど、その南国の地が「幻のトロピカル」、カディジャには訪れることがないリゾートという意味なのだろうか。
少し、よくわからなかった。