「ブラックコメディとしてはありだが、ポーズ乱用は映画自体を軽くし過ぎている気がした」毒娘 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
ブラックコメディとしてはありだが、ポーズ乱用は映画自体を軽くし過ぎている気がした
2024.4.9 T・JOY京都
2023年の日本映画(105分、R15+)
訳あり新居に引っ越してきた家族が、奇妙な元住人の少女に襲われる様子を描いたスリラー映画
監督は内藤瑛亮
脚本は内藤瑛亮&松久育紀
物語の舞台は日本のとある地方都市
閑静な住宅街にて、空き家に侵入した高校生のカップル(八田大翔&成宮しずく)は、そこで奇妙な少女(伊礼姫奈)に襲われてしまう
それから数週間後、その家に深瀬一家が引っ越してきた
結婚を機に服飾デザイナーを辞めた妻・萩乃(佐津川愛美)は、マーケターの篤紘(竹財輝之助)と結婚し、彼の連れ子である萌花(槇原星空、幼少期:奈良部心紅)と一緒に住むことになった
萌花は、幼少期に母親・春花(美馬アンナ)との間で何かがあり、右手に酷い火傷を負っていた
彼女は不登校だったが、家ではきちんと勉強し、篤紘も一緒になって、その環境を保っていた
ある日、近隣住民の川添(馬渕英里何)が訪ねてきて、娘・椿(凛香)のダンス衣装を作ってくれないかと頼まれる
萩乃は萌花がこっそりと服のデザイン画を描いていることを知っていて、「デザインして見ないか?」と切り出す
そして、萩乃のサポートで服を完成させ、二人の仲は少し縮まっていくのである
物語は、そんな幸せそうな家族のもとに、元住人と言われる少女が乱入するところから動き出す
萩乃の留守の間に家に侵入した少女は、萌花を脅し、「母親にケーキを買ってこさせろ」と迫る
その連絡を受けた萩乃は急いで家に戻ると、そこには萌花に馬乗りになって、衣装バサミを握りしめる異様な少女がいたのである
彼女は「ちーちゃん」と呼ばれていて、被害を相談した萩乃のもとに、彼女の両親(地曳豪&まひろ玲希)が謝罪に現れる
同行した刑事・山脇(クノ真季子)も少女の犯行が今回だけではないことを知っていて、未成年ゆえに対処に苦慮しているというのである
映画は、その家に執着するちーちゃんが萌花の心をくすぐる展開になっていき、萌花も同じように悪さをする様子が描かれていく
義母との距離感、父親との過去などをちーちゃんが刺激し、それによって闇落ちしていくのだが、それをどのように救うのかというのが物語の命題になっている
とは言え「バツポーズ」などのように、かなりポップなノリを用いているので、映画自体はブラックコメディのような様相を呈している
部屋に落書きをするとかまではありそうだが、彼女の性格だと「ちーちゃんとの関わりを隠す」と思うので、それを放置しているのは違和感があった
あくまでも表層では変化を見せず、その裏でちーちゃんと繋がり、同化することで平静を保つというのが彼女のキャラのように思えた
いずれにせよ、バツポーズが出るくらいまでは楽しく見れたが、ポーズが乱用される後半はかなり退屈な流れになってしまったように思う
ちーちゃんが実在する元住人という設定も微妙で、幸せそうな家庭の内情を暴く存在というぐらいで濁しても良かったと思う
結局のところ、ちーちゃんが何をしたいのかは分かりづらく、おそらくはあの家に住む人を追放して住みたいということだと思うのだが、ほぼ犯人とバレているのに全く捕まらないのは無茶な設定であると思う
ラストでも次の家族が襲われていたが、あそこまで大ごとになると、隠して賃貸するというのは不可能だと思うので、最後は本当に訳あり空き家になって、怖いもの見たさの若者が「冒頭のように被害に遭う」というのでも良かったのではないだろうか