コット、はじまりの夏のレビュー・感想・評価
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愛してしまった、愛を知ってしまった。
貧乏な大家族に生まれ、寡黙な性格の9歳の少女が、一夏の間親戚夫婦のもとで過ごす話。ミニシアターでの上映にも関わらず、多くの映画好きの方が絶賛されていたので、これは見なくてはと慌てて鑑賞。公開からかなり時間が経過した平日の昼間でしたが、中々の集客。昨年の鬼太郎といい、映画はクチコミによって左右されるなぁと身に染みて感じます。
そんなクチコミを信じて良かった。映画好きのみなさん、ありがとう!と心の中で叫ぶほど、大好きな作品でした。評価は4だけど、詳細にすると4.3で比較的4.5に近い点数。今年はミニシアター映画強すぎ!?9歳は環境によって人格が形成される、多感で大事な時期。親戚夫婦どころか、実の両親に対しても警戒しっぱなしのコット。自分はお父さんとお母さんに迷惑をかけてはいけない。そんな少女が次第に心を許し、立派な大人へと成長していく様は、まるで絵本のようにシンプルな展開だけど、心の暗い部分が全て浄化されたような気持ちになりました。
人に迷惑をかけずに生きれる人なんて、誰もいない。自分も笑っていいんだ、楽しんでいいんだ。コットを演じた新鋭・キャサリン・クリンチの演技はオスカー級。子どもらしさと大人っぽさ。その両方を兼ね揃えた見事な表現力。下を向いて恐る恐る歩いていた少女がひと夏の間で、前を向いて全力で走るようになっている。90分あまりですっかりコットの親気分。立派になったもんだ、泣いちゃうよぉおお。。。
親戚のおじさんがものすごくいい味出している。言葉には出さないけど、誰よりも思ってくれている。おばさんはまるで聖母のような優しさだけど、おじさんは良い意味で人間味のある優しさで、不器用でも、その分胸にグッとくるものがある。「瞳をとじて」も良かったけど、本作のラストもやばい。なんちゅう終わり方してくれるんだ全く...。どうにか幸せを掴んでくれ。気づいたら手を合わせて願っていました。
物静かで、エピソードとしては物足りなさはあるものの、コットの成長物語、そして教育の在り方について、ものすごく丁寧に描かれていた、素晴らしい作品でした。こういう映画が見たかった。大規模公開映画の派手なアクションもいいけど、単館上映の優しい人間ドラマも最高だね。
美人すぎる小学生
アイルランドに惹かれて観たけど、、、
幸せをイメージできることって大切
親がクズでもまっすぐ育つ子どもはいる
子だくさんとクズ親の相関関係ってあるんだろうか。個人的な偏見なのだが、子どもが多い家庭にはダメな親が多い気がしてしまう。子育てが大変だということも影響している場合も多いし、そんな物語を読んだり観たりした印象の可能性もある。
本作の親は子だくさん。新たに子どもが産まれるから、末女のコットが叔母夫婦に預けられる話。アイルランドの風景がとても綺麗で静かなのがとても印象的。主人公のコットももの静かな子で、自己主張ができない。原題もクワイエット・ガールだしな。
そのコットが叔母夫婦から愛情を受け、1人の人間として尊重されることで成長する姿が描かれる。やはりとても静かな物語。盛り上がる箇所は少ない。途中は静かすぎてちょっとしんどかったくらい。
ただ、終わり方がいい。いや、正直言えばもう少しわかりやすくしてもいいとは思う。でも、そうしてしまうと余韻がかなり異なってしまう。これはこれでいいと割り切るしかない。
ダメな親だろうがまっすぐに育つ子どもはいるってこと。コットがもっと自分を出せる人生になってほしいし、コットと叔母夫婦に幸せな未来があることを願ってしまう。
珠玉の名作
タイトルなし
秘密を持つことで心の陰影がより濃く深くなる。少女の心の成長
少女の名前はCáit。発音としてはコットというよりはコーットに近い。アイルランドには割とある名前でpureという意味を持つようだ。
本作はまだこの何にも染まっていないpureな少女の心の動き、心の成長を丹念に丹念に描く。博打好きで粗暴で世渡り下手な父親と、生活に疲れきった母親。姉たちにも邪険にされ心の拠り所がない。極端にいうと牛と同等の扱いをされることにより本能的な危険からの逃避、隠れることだけが心の大半を占めている。
でもショーンとアイリーンと暮し、気を配ってもらい、構ってもらい、愛情を注がれることによって心の様相が変わっていく。そして農場の自然に触れ、人間の赤ん坊や牛の仔と接し、人の死をも体験することによって心は豊かになっていく。つまり心のひだが深くなるというか陰影が濃くなっていくのである。
最後に重要なのは秘密をもつことである。両親のもとに帰る数日前、コーットは水を汲もうとして泉に落ちてしまい風邪をひく。このことはコーットとショーンとアイリーン3人だけが知り両親には秘密である。夏休み前のコーットは秘密はいけないという母親の教えを機械的に繰り返すだけの子どもだった。でもショーンとアイリーンの秘密に触れ、そしてついにはその2人とも秘密を共有することになった。人の心には、他のひとにはうかがい知れない密やかな影があり、それだからこそみずみずしく奥深い。まるでアイルランドの大地のように。
アイルランド語
想像以上の作品でした
説明はなくても、登場人物たちの気持ちがひしひしと伝わってきて、自然と感情移入できました。
ひと夏とはいえ、キンセラ夫婦の親としての資質が素晴らしく、子育ての勉強にもなる作品です。
厳しいのも愛情。特にショーンおじさんの不器用な愛が私には刺さりました。
コルム・バレード監督は長編初監督だそうで、鑑賞前は、お手並み拝見ぐらいの軽い気持ちでいましたが、本当に恐れ入りました。
この映画、大変な掘り出し物です。
本当は★7を付けたい❗
コットは9歳の少女。
アイルランドの田舎町で、酒とギャンブルに溺れ家庭を顧みない父親、大家族の中で子育てに埋没している母親と暮らしているが、家でも学校でも居場所がなく孤独に苛まれている。
家庭の事情は異なれど、似たような少年時代を送っていた自分にはこの時点で心に刺さってしまった。
1981年の夏休み、母が出産するまでの間、コットは親戚夫婦(ショーンとアイリン)の農場へ預けられることになった。
ここでの生活により、他人から愛されることを知り、他人の痛みや苦しみに触れることで、内気なコットは自分の気持ちを表せる人間に変わっていく。
夏休みが終わって、両親がいる家に送り届け、農場に戻っていくショーンとアイリンが乗った車を、コットが追いかけるラストシーンで胸がつまってしまった。
ショーンに抱きつき「パパ」とつぶやくコットの姿は感動を通り越した一服の画となる。
追ってきた父親の怒りの表情から、次の展開はこちらに委ねられるのだろう。
幸せなコットの日常を願うところである。
キャサリン・クリンチのみずみずしい透明感のあるコットの演技が冴えわたった。
画面がスタンダードサイズで、先日観た「PERFECT DAYS」と一緒であり、ともに“木漏れ日“が表現され、小津作品にも通じるものを感じた。
心が洗われるというのは、こういうことなのかな
主人公のコットは、おとなしいとか内気というより、いつも周りの顔色を伺って生きている子という感じ。そういう行動が学校や家で良く思われない悪循環。
のどかな田舎町に預けられ、いろいろな経験と愛情で、ほんの少しずつだけど前向きな子に成長していく。
3人の間に大きなきっかけがあるわけでもなく、それぞれの小さな歩み寄りで、ショーンとアイリン夫妻もほんの少し癒される。
すごくロケーションが素晴らしい。
キラキラとした木洩れ陽が鬱屈としたコットの日々を解放するかのよう、そしてラストはウルッとくるほどに美しかった。
父親のワンカットが意味深だけど、幸せな結末でありますように。
コット役の子、顔と声と体がアンバランスなほど美人な子だなぁ。
じゃがいもスープ美味しかった。
切なく、心を掴まれる
実家に留まるかぎり「はじまらない」のでは?
映像が美しかった。
きれいに終わらせようとしないのも良かった。
最後の2回のDad...
一度目が本当の父、二度目がショーンを指してるとハッキリわかった。
あの二言ですごい女優さんと思った。
コットは内向的という設定のようで、実際そうだとも思うけれど、きちんと自分の言葉で語れるし、それは夫妻の元に預けられてから身についた資質、という感じでもなかった。
ただ、彼女の言葉をまともに取り合う人がいなかったから、あえて口にしなかったという感じ。
近所のお爺さんの通夜あと、性悪ババアに根掘り葉掘り聞かれたことを確認されて「バターかマーガリンか聞かれた」と答えるあたり、思いやりも分別もある。
この映画は、夫妻に預けられてコットが成長する、のではなく、
夫妻に預けられて初めて尊重されたコットが、初めて素の自分を出せる、物語だ。
だけどそれは、あの実家に戻れば継続できるものではない。
実家にコットを送り返して、明らかにこの家庭環境ではコットは幸せでないとすぐにアイリンもショーンもわかったはずだけど、波風立てないためなのか、牛の世話を理由に帰るとこからも、二人にとってコットは家族ではなく「預かった子」だったんだなと軽く失望してしまった。
赤ちゃんもいて大変だろうからしばらく預ろうか?くらいのこと言ってほしかった。
夫妻の元で初めて一人の人間として尊重され安心感を得た面はあるだろうけれど、
実家に戻れば、コットと向き合い、ありのままのコットを慈しんでくれる人はいない。
夫妻はそんなことすぐにわかったはずなのに…
はじまりの夏って邦題は良いのかな?
一瞬映った原題は失念してしまったが、そっちの方が良かったように思う。
初めて観るのに懐かしいとはきっとこういうこと。
1980年代初めのアイルランド。貧しい大家族の物静かな3女コットが夏休みの間だけ親戚夫婦の家に預けられ、そこで徐々に心を開いてゆくという超がつく程の王道ストーリー。きっと誰もがどこかで観たことがある、もしくは自分自身が経験したことがあるかもしれない原風景のような映画です。
アイルランドの自然美。牧場を営む田舎町を舞台に王道ならではの良さを目一杯詰め込んだ紛れもない傑作で、最後のあまりにも秀逸な一言と、恐ろしいほどに含みを持たせた静かなエンドロールにもう涙が止まりませんでした。
家庭環境からどこか諦めたような大人びた表情を見せる9才のコットが、少しずつ子供らしさを取り戻してゆく姿が本当に愛しいです。こういう映画大好きです。
静鎰な作品。ラストで静かな感動を起こさせる。
寡黙な少女コット
苛められていたわけではないし、虐待を受けていたわけでもない。だけど貧しい大家族の殺伐とした生活の中で、愛を感じることもなく自分の居場所を見つけることもできない無口な少女コット。そんなコットが9才の夏休みに子供のいない遠縁のキンセラ夫婦に預けられる。
アイリーン(奥さん)はコットに優しく接する。爪を切ったり、髪をといたり、着替えを手伝ったり、アイリーンの表情はどこまでも温かい。しかしそんな愛情のかけられ方を知らないコットの態度はどこかぎこちない。そんな無口なコットの姿に胸が締め付けられる。一方ショーン(夫)はぶっきらぼう。無関心にさえ見える。しかし、日常の生活(アイルランドの素朴な田園風景は美しい)を過ごすなかで少しずつ距離は詰められていく。農作業の手伝い、近所の人たちとの交流、街への買い物…、ときには声を荒げて叱ることもあったが、コットへの優しい感情が伝わっていく。そして夫婦の過去の悲劇が、たまたまコットと一緒に過ごすことになった中年女性によって明かされる。その事をアイリーンに尋ねるコット。過去を思い出し苦しむアイリーン、それをいたわるショーン。その姿をじっと見つめるコット。ぶっきらぼうなショーンはこの後、さらにコットに優しく接するようになる。夫婦とコット、お互いが必要としている、三人は家族なんだと僕は思った。
そして夏休みは終わる。この後、三人はどうなるのだろう。元の生活に戻るのだとしても、この美しい経験、記憶は決して消えない。この優しい記憶はコットの人生の大きな宝物になるにちがいない。
補足)アイルランドの映画と知っていて観たのだが、当然英語で話されると思っていたら、聞きなれない言語で驚いてしまった。アイルランド語(ゲール語?)なのだろうが、英語に似ていない気がした。素朴な田舎の風景とこの聞きなれない言語はとても調和していた。
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