「CGの技術がすごいが、ひどい脚本」猿の惑星 キングダム p.f.nagaさんの映画レビュー(感想・評価)
CGの技術がすごいが、ひどい脚本
国際線の映像サービスで鑑賞。
フェイシャルキャプチャーという技術によって、猿に微妙な表情を付けることで、性格や意思を感じるのはすごいと思った。一方でナックルウォークなどの猿としての動きも最新のモーションキャプチャーで表現して違和感がない。過去の人類の文明の痕跡なども含め、映像面ではよくできていると思う。
しかし、見栄え(演出)に走りすぎて、脚本・プロットが不自然すぎる。クライマックスの場面でも「そんなはずないでしょ」と付いて行けなくなった。高さ数メートルの小さなダムを壊しただけの水量のはずなのに、数階建ての高さまで水が迫るというのは、どう考えても変だと思う。その水から逃げることができたのが、王様猿と主人公の部落出身者だけというのも変。
王様猿が数羽の鷲にあっさりとやられてしまうのも、安易すぎる。複数でいっせいに攻撃して崖から落としたということなのだろうけど、最後の切り札としては弱い。ゴリラに勝てたのは「運が良かったね」と思う。
それから、キングダムというのにせいぜい数百頭しかいないのは変。キングダムが扉を開けるための労働力を求めているのだとすると、仮面の猿軍団が殺戮しすぎるのも違和感がある。主人公の父親を問答無用で殺すのは変。
前半途中で、知性ある人間ノヴァが、主人公猿ノアたちに知性がないふりをして近づくけど、彼女の目的が武器庫にあるカセットなのだとすると、近づく理由がないと思う。
また、ラストでノヴァがノアに挨拶をしに来た時に後ろ手に銃を持っている場面が出てくるが、それではノヴァのキャラクター設定が破綻していると思う。ノヴァの理解者で、ノヴァを助けるために濁流に流されたオランウータンが浮かばれない。
全体的に、観客の意表を突くことを優先しすぎた脚本だと思う。せっかく予算をかけて最新モーションキャプチャー技術を使ったのにもったいないと思うので、評価は大きく下げた。