「猿の惑星:進化記(エボリューション)」猿の惑星 キングダム 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
猿の惑星:進化記(エボリューション)
通算10作目となる『猿の惑星』。
全てが壮大なサーガとして繋がっているのではなく、その都度その都度リセット。
オリジナル5作、ティム・バートンによるリ・イマジネーション、リブート3部作に分けられる。
本作は、シーザーの死で完結したと思われたリブート3部作最終章『~聖戦記』のその後。
エイプたち人間たちの新たな伝説が幕を開く…。
開幕はシーザーの火葬。
エイプたちの在りかたを説き、時に人間たちと対立しながらも、共存の道を模索し続けた偉大なリーダー。
伝説となり、その精神は脈々と受け継がれ…と思われたが、
長い時も何世代も流れ、300年後。
シーザーの時代でも人類文明が荒廃した後、世界は自然に還りつつあったが、本作ではさらに太古の世界に戻ったかのよう。深い森林、雄大な自然が広がる。
本当に人類が絶滅した後地球は元の大自然の姿を取り戻すと言われているが、それを描いてみせた世界観に引き込まれる。
その自然に還った世界で暮らすエイプたち。
彼らはさらに進化。高い知性を持ち、平和を愛する“イーグル族”。
“鳥使い”の家系に生まれた若きエイプのノアは、鳥使いの儀式を控えていた。
ある夜、凶暴な別種族のエイプたちが村を襲撃。長老である父は殺され、村は焼かれ、母親や多くの仲間が連れ去られてしまう。
襲撃の中一命を取り留めたノアは、仲間を救い出す旅に出る…。
今回のメインストーリーはどう展開するのかと思ったが、これでまずの方向は決まった。
旅の途中で、老オランウータンのラカと出会う。
ノアは自分の境遇と、村を襲撃したエイプたちが“シーザーの為に!”と口にしていた事を話す。
ラカから、“シーザー”とは今のエイプたちの道を拓いた伝説のエイプである事を知らされる。
シーザーを知らないノア。あのシーザーが忘れ去られた存在になっているとは…。
しかし、一部のエイプたちには神格化されている。が、存在と教えを履き違え…。
ラカは本来の正しい“シーザー伝説”を受け継いでいた。
シーザーを知らないノアは、戦争や歴史を知らない現代の若者のよう。だがそれは村で代々知らされる事が無かっただけ。
エイプたちの在りかた、シーザーの存在と教えを知ったこの若きエイプに、どんな影響が…?
さらに旅の中で、一人の人間と出会う。
人間たちはまだ絶滅していなかったが、言葉も知能も失うほど退化していた。
ノアは人間と遭遇するのは初めて。ラカはこの人間の少女を“ノヴァ”と名付ける。
二頭と一人、それとも二人と一頭の旅は続く。
その中で、実はノヴァは言葉を話せ、知能を持っている事を知る。本名はメイ。
身を守る為とは言え、騙されていた事に憤りを感じるノア。人間に対し疑心暗鬼…。諭すラカ。
メイの目的は“人類の失われた文明”。その鍵を握るあるものを探していた。
それを狙っていたのはメイだけではなかった。
再び凶暴なエイプたちが襲撃。激流の川に落ちたメイを救おうとして、ラカが犠牲になってしまう…。
囚われたノアとメイはある場所に連れて行かれる。
そこは海岸に面した凶暴エイプたちの居住地。いや、“王国”と言っていい。
ノアは母親や仲間たちと再会を果たすが、同じく囚われた他の多くのエイプたちと重労働を強いられていた。
海岸沿いにある謎の巨大貯蔵庫。人類のかつての何かがそこにあるらしい。メイはその鍵を握る。
それを何としてでも手に入れたい。この王国の王…いや、支配者。自らを新たなシーザーと名乗るプロキシマス。
プロキシマスの野望、メイの目的、そしてノアは…。
悪しき支配者に、ノアとメイとエイプたちが一致団結して立ち向かう…そんな単純な話ではなかった。
恐怖でエイプたちを支配するプロキシマス。自らをシーザーと名乗るなど傲りや憎々しさたっぷりだが、言っている事に一理もある。
人間たちは危険。信用してはならない。
また我々エイプたちを支配しようとしている。全ては我々エイプたちの為。
しかしそれは本当に、エイプたちの未来を思っているのか…? 自分と王国の為だけなのか…?
悪役面で威圧感バリバリだが、所々言葉巧みに知性も感じる。印象的な台詞「素晴らしい日だ!」と共に本作でも特出したキャラだが…、惜しむらくは地元の映画館では吹替のみの上映で力サンの声が聞きづらかった事…。
人類が退化し、支配されながらも、それに抗い対する。勇敢な人間の女性であるメイだが…、何処か腹の底が読めない。
ただ純粋に人類の失われた文明を取り戻そうと見える。世界を再び人類の支配下に…とも見える。
ノアのように疑心暗鬼。本当に信用していいのか…?
クセ者なエイプと人間に挟まれながらも、仲間の為やエイプたちの在りかた、自分自身を模索するノア。
本作は若い主人公の成長と奮闘の物語でもある。
スリリングにパワフルにエモーショナルに。
『メイズ・ランナー』の俊英ウェス・ボールの手腕も見事だが、やはり驚愕させられるのはパフォーマンス・キャプチャー技術の進化。その表情一つ、一挙一動は見てて全く飽きない。
加えて今回はさらに、水に濡れたエイプ。『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』でも水中パフォーマンス・キャプチャーに挑んでいたが、濡れた体毛やその質感。驚異的…!
映画は技術の進化を見るのも醍醐味の一つだ。
技術は進化したが、一方で鈍化してしまった点も。ストーリーやキャラ。
何と言っても前3作は、シーザーの魅力とカリスマ性が素晴らしかった。それを体現したアンディ・サーキスの名演も。
今回のノアやプロキシマスだって悪くないが、さすがにシーザーほどの魅力に欠ける。劇中でなくとも、改めてシーザーは偉大な存在だった。
そのシーザーを軸に展開するストーリーも素晴らしかった。
今回も盛り上がりや面白さは充分だが、それでも前3作ほどではなく、所々腑に落ちない点も。
ノアは仲間のスーナやアナヤと共にメイに協力。貯蔵庫に忍び込む。
貯蔵庫は、人類が文明を誇ってた頃の施設。電力はまだ通り、作動させる。
そこにあったのは…
ハイテク技術や機器、戦車や銃などの武器。
これをもし、プロキシマスが手にしたら…?
ノアらはある絵本を見つける。そこに描かれていたのは、動物園。多くの動物たちや猿が檻の中に…。
協力はしたものの、再びメイに不信感を抱くノア。
一方のメイはある一枚のディスクを手に入れる。これを探していたようで…。一体、それは…?
内側から貯蔵庫の扉を開けた時、プロキシマスらが待ち伏せていた。ノアの母親や仲間たちを人質にして。
プロキシマスは貯蔵庫の中のものを我が物にしたい。
目的のものを手に入れたものの、追い詰められたメイは銃で対する。
制しようとするノア。母親や仲間も助けたい。
各々の思惑や立ち位置を貫いているようで、少々こんがらがっているようで…。
メイの奥の手でさらに混沌。堤防を爆破し、大量の海水が津波のように流れ込む。
プロキシマスの王国は崩壊。これによってノアたちもプロキシマスたちも犠牲や危機に見舞われ、人間を脅威と見なす同調性があってもいい筈だが、その混乱の中でエイプ双方は争いを続ける。
ノアとプロキシマスの決着。力で勝るプロキシマスに敗北しそうになるも、鳥使いの才を開花させ、反撃するノアの姿はクライマックスを飾る盛り上がりの見せ場の一つだが、プロキシマスは結局人間とノアたち、どちらを敵視していたの…?
ちょっと焦点がボヤけていた気もした。
気になった点がもう一つ。
『~聖戦記』から300年。ほとんどのエイプたちの思考言語力や暮らしぶりがさほど変わっていなかった事。
人類は300年の間に特に文明が驚異的に進化した。
人類は文明に、エイプたちは自然の中に特化した…とも受け止められるが、地球に育まれた生命の中で、優れた進化を遂げたのは人間なのか…?
プロキシマスが人間の遺した本で特にお気に入りなのはローマ帝国時代の話。他を支配し、争い尽きぬ。人間に代わり世界を手中にしたのに、やってる事は人間と同じで、歴史は繰り返すと言うか、皮肉と言うか…。
猿たちを通じて人類へのアンチテーゼでもある。オリジナル第一作もそうであったように。
『猿の惑星』と言えば、そのメッセージや世界観、特殊メイクや技術もさることながら、衝撃のラスト。特にオリジナル第一作は映画が続く限り永遠に語り継がれる。
今回久々に、驚きのラストが用意されている。
ネタバレチェックも付けたので、触れよう。でないと“次”に繋がらない。
闘い終え、ノアたちは村へ戻り、再建。再び平穏な暮らしを…。
そこへ、メイが訪ねてくる。別れを告げに。
エイプと人間は共存の道は無いのか…? やはり相容れる事は出来ないのか…?
こんな時、ラカなら…? シーザーなら…?
メイは旅立つ。当ての無いように見えて、目指す場所があった。
天文台。廃墟ではなく、中から防護服を来た人間が出迎えた。
中には多くの人間たちがおり、言葉を話し知能もあり、文明を築いていた頃のようなハイテク技術が動いていた。
そう。人類は退化し絶滅寸前ではなかった。かつてのまま密かに生き永らえていた。
ノアやプロキシマスらエイプたちの進化にも驚かされるが、人間たちはそれ以上。
人間は最後の一人になるまで、盲目的に種を残し、生存を求め続けるという。それも人間が人間である本能。
『猿の惑星』に於いて、新たな驚きのオチ。
メイが持ち帰ったディスクで、巨大パラボラアンテナを作動。寂れたものの、“声”を発信する。
その声に応えるかのように、何処からか別の“声”が…。
もしその“声”が、文明が滅びる前に宇宙に脱した人類たちの末裔だとしたら…?
彼らと地球で辛うじて生き残った人類たちが手を組んだら…?
ノアはスーナを連れてある場所へ。旅の途中で見つけた巨大望遠鏡。こちらも寂れてはいるが、まだ宙を臨める。
星々の大海へ思いを馳せる…。
次作は必至だろう。
宇宙規模の展開へ…?
全く新しい『猿の惑星』に期待!
その先にあるのは、共存か、また不毛な争いか、全く別の進化(みち)か…?
近大さん
共感をありがとうございます(^^)/
通算10作品めですね。
今回 初めて猿の惑星を知った
若者も オリジナルを見たいと言う
衝動に駆られるといいな~って思いました。
ただ、技術的に 物足りなさも
出るでしょうが、
チャールトン・ヘストンの演技と
あのラストシーンを見て欲しいですね。
リブート3部作最終章『~聖戦記』だけ
見逃しています。先日 やっと
ライジングは観ました。(^^)/
近日中に観ようと思います。
300年後の世界・・・
地球の姿が 恐ろしいですが
映画でなら 観ることができますね。
ラカが流されてしまうけれど
どこかでサプライズ
生きていて欲しいなと思いながら観ていましたが
叶わずで・・続編で 再登場を期待しようかしら
続編は 更に遠くの未来が舞台かな・・・(*'▽')
ノアたちが貯蔵庫で
みつけた絵本・・
動物園の絵を見て落胆する姿に
胸が熱くなりました。
メイの役割も 哀し気でしたね。
人間たちの 連絡網は 拡がるのかな・・
いろいろ言ってすみません(^^ゞ
続編 期待したいです☆彡