「メイ、延いては人間の本質を巡る物語」猿の惑星 キングダム ykb1991さんの映画レビュー(感想・評価)
メイ、延いては人間の本質を巡る物語
「ノアは賢い」「プロキシマスは非道」という単純化した考えでは作品の本質を見誤ります。
まずプロキシマスについては、それぞれの陣営の立場でキャラの評価は異なるという本質を製作者側が逸らし、彼が徹底的に悪役として作中で描かれていることに注意しなければなりません。自分たちを脅かす人間勢力に与しなければプロキシマスはトレヴェイサンやメイも丁重に扱う姿勢を示しています。寧ろ自分の計画を邪魔するなら同じ人間であるトレヴェイサンですら躊躇いなく殺すメイの方がそれぞれの立場を超えた悪と言えます。
次にノアは人間文明の武器の配線を自分で修理したりラカから知識を吸収したりと賢いキャラとして描かれていますが、結局はメイに騙されています。戦いを終えたメイを改めてどういう人物か真相に迫りもしない、メイの計画を最終的に全面的に信用してトレヴェイサンを殺したことに疑問を持たないのがまさにそれです。
結局メイ、延いては人間の本質を理解していたのはプロキシマスです。そのプロキシマスをノア(より正確にはイーグル族たち)が殺したことは、エイプ陣営にとっては人間という驚異を察していた者を失うという損失です。
ノアはこの件でニンゲンの本質を学び、「進化」ということを知って、今後狡猾さ等の高度な精神活動を併せ持ちと知識を貪欲に収集していく偉大なリーダーになって行くのではないでしょうか。ラカが生きていて補佐する、みたいなのもあったりして。
本作の人間メイは、過去作のウィルやマルコムとは違うタイプでしたね。
ある意味、人間の本質を持ったキャラだったように感じます。
自分の目的にためには、同族を殺すことも、騙すことも厭わない人間の狡猾さ。
一方、相手を信じ貫こうとし裏切られるノア。
理想のために手段を択ばないプキシマスは、人間に近い存在だったかもしれません。
キャラクターの設定がしっかりしているのに、それぞれの立場のつながりを描き切れていない所が残念でした。