「猿の国王が「良い人」に、人間の少女が「悪い奴」に思えてしまう」猿の惑星 キングダム tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
猿の国王が「良い人」に、人間の少女が「悪い奴」に思えてしまう
主人公のチンパンジーとオランウータン、そして人間の少女が出会い、共に旅をする前半は、それぞれのキャラクターのアンサンブルが面白く、それなりに楽しめた。
ただ、猿の「王国」が舞台となる後半になると、色々と違和感を覚えることが多くなり、物語に入り込むのが難しくなる。
まず、本作のヴィランである猿の国王だが、そんなに極悪非道な暴君ではなく、憎むべき敵と感じられないのは気になった。
昔、人間が地球を支配していたことを知る彼が、人間に警戒心を抱くのは当たり前だし、猿の世界を守るために、人間の武器を手に入れようとするのも当然のことなのではないだろうか?ましてや、彼は、私利私欲をむさぼったり、配下の猿たちに理不尽な圧政を敷いている訳でもないし、知性を持つ人間は手厚く遇し、自ら教えを請おうとする向学心すら持ち合わせているのである。
いくら拉致された猿たちを解放したいからといっても、そんな国王に歯向かい、人間に味方する主人公の行動には、今一つ共感することができなかった。
人間の少女にしても、武器庫から通信機のチップを奪取することが目的であるならば、猿の追っ手から逃げ回るのではなく、始めからおとなしく捕まって、王国に潜入すればよかったのではないかと思ってしまう。
やがて、任務のためとはいえ、仲間である人間を手に掛けた頃から彼女に対する不信感が募りだし、ラストで、彼女が、猿たちを利用しただけのしたたかでずる賢い人間であったことが判明すると、なんとも釈然としない気持ちになってしまった。
彼女のような、知性を持った人間の出現という、本作の一番のサプライズについても、そのような人間が昔からずっと生き延びていたのか、それとも一度失われた知性がまた蘇ったのかがよく分からず、モヤモヤさせられた。
前者だとしたら、猿に対して、とっくの昔に反転攻勢を仕掛けていたはずで、なぜ、何百年もたってから衛星通信を回復させたのかが分からないし、後者だとすると、武器庫の構造や通信装置等に関して高度の知識を有しているのは不自然で、とてもゼロから学び直したとは思えない。
その他にも、武器庫の入口が、海のすぐ近くの、しかも海面よりも低い場所に設置されているのは、どう考えても理屈に合わず、もしかしたら潜水艦でも隠されているのかと思ったが、まさかの戦車が格納されていて驚いてしまった。これでは、クライマックスで水没させるための、ご都合主義の設定と捉えられても仕方がないだろう。
それから、猿と人間とが共存へと向かう糸口が、最後まで示されなかったのは予想外で、仮に続編に持ち越されるのだとしても、そうした展開がなかったことは、本作の一番の違和感であり、物足りなさでもあった。