「ことごとく凡人の予想を裏切る展開が見事」あまろっく 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)
ことごとく凡人の予想を裏切る展開が見事
毎週2~3本映画を観ることが生活習慣になっている俺なのだが、4月に入ってから2本目の作品を見つけるのに毎週苦労している。コロナ前はこんなこと無かったのに、未だハリウッド大作の弾が不足なんだろうなと思う。今週もいくつもの映画館のラインアップをチェックして、鶴瓶の笑顔に目が留まった。「これは楽しめそう」とやっと決まった。
そんな決め方だったので、大きな期待はしていなかったが、期待をはるかに上回る傑作だった。
【物語】
京大出のエリート近松優子(江口のりこ)は仕事に邁進し、人一倍の成果を上げて来た。職場で誰よりも有能だという自負があったが、30代半ばでまさかのリストラ。人並外れて仕事に没頭するあまり職場で完全に浮いていたのだった。
優子は行く当ても無く、故郷の尼崎に帰り、数年実家に居座っていた。一方、町工場を営む優子の父、竜太郎(笑福亭鶴瓶)は「人生に起こることは何でも楽しまな」をモットーにニート状態の優子に小言を言うでもなく、社員や近所の住民たちと呑気に面白おかしく毎日を過ごしていた。
そんな竜太郎がある日突然再婚すると言い出し、連れて来たのは20歳の小娘早希(中条あやみ)だった。優子ははるか年下の義母を受け入れられるわけもなく、早希に冷たく当たる。それでも早希は家族が出来たのが嬉しいと全くめげなかった。
そんな3人の新たな生活が始るが、1か月をやっと過ぎた頃思いもよらぬことが出来事が・・・
【感想】
やられっぱなしの見事な筋書きだった。
ことごとく想像していたこととは違う方向に話が転び、結末も「こう来たか・・・」で閉じる。
例えば、ポスターの中央に鶴瓶が映っていれば、「終始鶴瓶が醸すふんわかした空気が作品を満たすんだろうなあ」と誰だって期待するはずだが、序盤で「え、まさか」とその期待は打ち砕かれる。そんなことが2度、3度と起きる。
「え、そうなっちゃうわけ?」と。
しかし、終わってみればキャッチコピー「笑って泣けるご実家ムービー」は決して嘘じゃない。つまり意外性に富む展開でありながら、決して無理矢理な大どんでん返しを突っ込んでいるわけではなく、話に破綻は無い。
最後のオチも予想外ではありながら、結局観客が期待したところにしっかり収まる。
筋書き、脚本に脱帽。「参りました」である。
役者も脚本に応えている。
特に江口のりこが凄い。「さすが」とも言えるが、とにかくドハマり。特に前半に見せるヒールな優子像が凄まじい。
優子のキャラ立ちも凄いが、対照の位置に立つ早希もかなり変人の域。中条あやみもこの役をなかなか頑張って演じている。2人の丁々発止が見応えてがあって楽しかった。
が、演技にも増して中条あやみのスタイルが目について仕方が無かった。初めて見るわけでもないのだけど、一人歩く姿は八頭身に見とれ、他の役者と顔を並べると、相手の顔がデカく見えて仕方が無い。相手が気の毒になってしまう。
全然客は入ってなかったけど、観た人はきっと掘り出し物だったとニンマリしているに違いない。 「何だ?」と思う“あまろっく”というタイトルも観ると至極納得。