梟 フクロウのレビュー・感想・評価
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両の目で見えたのは…
多士によりレビューされている通り、評点通りの面白さだ。
いきなり本編とは関係無い切り口だが、作品の準主役の、史実上も悪政で有名な仁祖国王。この時代、かたや日本では三代将軍 徳川家光が日光東照宮を造営。建物に数多ある、天下泰平を象徴した彫刻のうち「三猿」はあまりにも有名で、悪事を見ない・言わない・聞かない方が良いとされる仏教信仰の現れと伝わる。
この作品は、儒教的信仰心に生きる若者が自らの道徳を『思いっきりブチ破る』なんとも不届きな爽快感を味わえるものだった。
他士が語られていたが、物語の前半と後半はかなり異なるエネルギーに感じた。前半は正しく大河ドラマのそれであり、期待したものとの乖離が大きく、私もかなり呆気に取られた気持ちで見ていた。
この作品の真の面白さは後半戦。主人公の盲目の特性や、置かれた環境、周囲の人物など、すべての意味合いが机上のチェス盤がごとく駆け引きされていく。
決して先の読めないものではないため、スリリングさは多少削がれていたものの、緊張感を高めるサウンドトラック効果も相まって一気にクライマックスへ向かい、気がつけば2時間、あっという間に終演になだれこむ。こういったリズムは、さすが韓国映画。
ならではだと思った。
暗黒の世界に見えた悪をみたギョンスが、仁祖国王に最後に見せたものは正義か。
そしてこれは何かの意味を込めて作っているはずで、答えを知りたいのだが…何か起きるのはすべて左眼だ。本国のポスターを見て確信したのだが。
上手いなぁ。韓国大河サスペンスの傑作。
手に汗握る後半の展開
韓国映画、しかも韓国で大ヒットモノの輸入ということで期待大の状態で鑑賞。
客層は中年以上の方が多く、女性割合が思いの他高かったです。(韓国モノだから?)
前半は、割と退屈でした。時代背景や主人公の背景説明が淡々と進みます。(隣のオジサンは寝ていました)
但し、この前半の説明は後半への伏線だったりします。
後半は、手に汗握る展開が進みます。
にしても、韓国映画って「見せ方」がウマいのなんの。光の加減や顔をアップにするタイミングなど、臨場感の出し方が本当に上手。
パラサイトと比較するとパンチ力はやや弱いですが、それでも満足の行く鑑賞となりました。
※パラサイトの彼は存在感抜群でしたね笑
主人公の意外さ
日本映画『みえない目撃者』は、韓国映画『ブラインド』のリメイクだったが、実際にみえない目撃者であった。しかし、本作の主人公のギョンスは、みえることもあり、そのことを隠す必要もあったり、みてみぬ振りをしたりして過ごすこともあったが、後半ではあえてみえる能力を発揮して大立ち回りをする。昼盲症という症状は、実際にあるという。『正欲』の水フェチよりは説得力を感じる。しかし、杖の突き方は、『天上の虹』同様、現代風で、『山のあなた』=『按摩と女』での突き方に近い方が良いのではないかと思う。
韓国の歴史ドラマには凄い作品が多く、ソウルの宮殿も見学に行ったので、馴染みがある。皇太子妃が可哀想だった。ギョンスは、弱い立場とは言え、罪を被せる役目を担ってしまった。最後は潔かった。また、4年後の報復は、『必殺仕置人』『隠し剣 鬼の爪』のように鮮やかだった。そのときは盲人ではない名医として訪れたのだろうか。
「ファクション」という種類があるらしいけれども、事実にインスパイアされたという言い方で、脚色で設定も大きく変えられた作品というものは、これまでにも多々あったのではないか。
正しい映画
韓国の映画、ホントに面白いね。
スケールの大きさ、実際の歴史上の人物を描くからには必須の史実とのバランス、エンタメ度、すべからく隙がなくて、ほんとに何の疑いもなく映画の面白さに身を委ねられる。
そういう昨今連発されている、良質のコリアン大作映画の一つ、その中でも特級のレベルの高さを感じる今作なのですが、あらためて思ったのが、映画の根底に流れる価値観というか感覚というか、それの正しさですね。
文字にするとどうしても嘘くさく薄っぺらに見えてしまうのだけど、要するにまあ、正義、というやつです。
人としての正しいのはこういうことなのだ、という感覚。
結局のところ、人間のドラマを描く映画というもの、それが本当に面白いと思えるように作ると、結局そこに帰結するということかとしれない。
これは映画に限らないかもしれないですが。
それが、近年公開される韓国の素晴らしい映画たちには、ちゃんと入っていると思う。
どれも外さず大事なところを押さえている。
だから胸を打つんですよね。
今作でいうとあの、主人公がなんとか危険を乗り越えててようやく門を出ようというときに、若様が殺されるかもしれない、と思い起こして門の中に戻っていく。
あの、視線の先にある安全な暗闇が映って、そこに主人公の逡巡が込められている場面。
それを振り切って自分のなすべきことをなすために危険の中に戻っていく。
本当に感動しますよね。
同じような場面として思い出すのは、エイリアン2でリプリーが、今まさに脱出しようというところで、少女の助けを呼ぶ声を聞いて引き返す場面です。
これはもう、なんというか人間の持つ普遍的なもので、人の心に響く作品の持つ資格みたいなもんだと思います。
それをこの作品もまた、持っている。
そこそこ年配の人なら覚えているかもしれないけど、淀川長治さんが日曜洋画劇場の解説でたびたび言っておられたことがそうだと思います。
ハリウッドの娯楽大作の中にも、どこかしら外してはいけない人間としての大切な価値観が描かれていて、だからこそ映画は信頼できるのだという。
近未来の学校の荒廃を舞台にしたSF映画(タイトル忘れた)にも、ヘレン・ケラーが言葉を獲得するまでを描いた古典的名作「奇跡の人」と同じような、教育に対する真摯な視線があるということ。
ETを初めて見た少年が、不気味な生物として毛嫌いするんではなく「おいで」とするのは、移民の国アメリカの大事な基礎で、それはメン・イン・ブラックの中にも確かに見えるということ。
そういう本当に感動できる映画には必然的に備わっている正しさが確かにこの映画にもあって、、まあその、この映画についての具体的な情報の何一つないレビューになってますが(笑)、要するにそうした芯のところに確かな価値観が感じられる、文句なしの傑作です。
また一ついい映画見れたなー!という幸せな気分で映画館を後にしました。
闘う勇気
権力はいつの時代も非道です。身内だろうが何だろうが、昨日の味方は今日の敵。
本作はサスペンスではありますが、メッセージ性にも優れた作品でした。ギョンスはただの盲目の鍼灸師ですが、王政という権力と対峙しました。あの時、ギョンスはそのまま外に出ることもできたのに。宮廷に戻った時には鳥肌ものでした。ラストは悲しい結末だと思っていたのにちょっと意外。
このひとりの弱者の闘う勇気を描いたことも、とても韓国映画らしいと思います。緊張感溢れる作品で、あっという間に時間が過ぎていました。
主人公は、完全に盲目の方がよかったのでは?
事件が起こるまでのテンポの良さと、事件が起きてからの二転三転する展開にグイグイと引き込まれる。
特に、最高権力者が事件の首謀者であるという絶望的な状況で、生き延びるために奔走する主人公の姿からは一瞬も目が離せない。
主人公が、自らの特技を活かし、鍼を使って国王に左手で文字を書かせるようにしたり、世子からの助言を回収する形で「見て見ぬふり」をやめ、国王の陰謀を暴露するといった見せ場がしっかりと用意されているところも、よくできていると思う。
バッドエンドの結末にモヤモヤしかけていたところに、勧善懲悪の決着をつけているのもよい。
ただ、盲目の主人公が、暗闇の中でだけ目が見えるようになるという設定は、本当に効果的だったのだろうかという疑問も残る。
確かに、そうした設定がなければ、主人公が暗殺の真相を知ることはなかったのであるが、一定の条件下でも目が見えるというだけで、謎解きのミステリーや、逃亡劇のスリルが弱まってしまったように思えてならないのである。
完全に目の見えない主人公が、「音」や「匂い」だけを頼りに陰謀に立ち向かっていくといった物語にした方が、もっとハラハラ・ドキドキが感じられたのではないだろうか?
闇に隠れる真実と、闇に浮かび上がる真実
2024.2.15 字幕 アップリンク京都
2022年の韓国映画(118分、G)
李氏朝鮮時代に起きた世子暗殺事件を描いたスリラー映画
監督はアン・テジン
脚本はヒョン・ギュリ&アン・テジン
物語は、『仁祖実録』に収録されている世子殺害事件を紐解く流れになっていて、その事件の目撃者とされた盲目の鍼灸師ギョンス(リュ・ジョンヨル)の視点で描かれていく
明の衰退を受けて、今後の舵をどう切るべきかに悩む朝鮮王国が舞台となり、1645年6月27日に起きた出来事であることが明示されて始まる
ギョンスには病弱の弟キョンジェ(キム・ドウォン)がいて、ふたりは慎ましやかな生活を送っていた
目が見えないことを良いことに隠れた不幸に苛まれているものの、兄弟の仲は睦まじかった
ある日、仁祖(ユ・ヘジン)の御医であるヒョンイク(チェ・ムソン)が町にやってきた
この度、宮廷内での御医を募っているとのことで、試験を行うとのことだった
ギョンスは試験官が足を引き摺っている事に気づき、荒い息づかいから「卒中」ではないかと疑いをかける
ヒョンスクはギョンスの能力を見定め、彼を宮廷に招き入れる事に決めた
その後ギョンスは、案内役を買って出たマンシク(パク・ミョンフン)とともに宮廷に出向き、そこで見習いとして働き始める
不慣れな中、仁祖の昭容(アン・ウンジン)の診察を任されたギョンスは、そこでも能力を見せ、次第に信頼を得て行った
ある時、清から仁祖の息子・ソヒョン世子(キム・ソンチョル)が帰ってくる事になった
ソヒョンは清王(アン・セホ)とともに戻り、清国との国交を持つことが朝鮮にとって有意義だと考えていた
だが、明との関係を重視する仁祖はそれを拒み、清王の出迎えを拒否してしまう
領相(チョ・ソンハ)は出迎えをしないのなら職を辞すと覚悟を見せ、仁祖は仕方なくソヒョンと清王を出迎える事になったのである
映画は、朝鮮国内が明派と清派に分かれている対立構造を描き、明派の仁祖がソヒョン殺害を企てる様子が描かれていく
仁祖はヒョンイクに命じて、毒針を仕込ませるのだが、その様子をギョンスは目撃してしまう
ギョンスは昼間は盲目だが、夜になるとわずかに見える男で、それによってヒョンイクが使用した毒針を見つけ出し、証拠として確保する
だが、その際に蝶番に太ももをぶつけて怪我をしてしまい、ソヒョン殺害の濡れ衣を着せられてしまうのである
映画は、ギョンスの秘密を知るのがソヒョンだけという中で、どのようにしてヒョンイクが犯人であるかと伝えるか、というところを描いている
ソヒョンの妻である世子婿(チョ・ユンソ)に手紙を書くものの、黒幕が仁祖であることがわかり、口を噤まざるを得なくなる
そんな中、ソヒョンの息子ソクチョル(イ・ジュウォン)に手紙を託し、領相を動かそうと考えるのである
実録された事件をベースにして、夜目が効くという意味合いの「梟」をタイトルにしているのだが、このスリリングな展開は思わず手に汗を握る展開になっていた
夜のシーンが多く、人物の把握が難しいものの、パンフレットに記載されている8人を識別できれば問題ない
時代背景の知識などを踏まえるなら、パンフレットを購入して補完するのも良いのではないだろうか
いずれにせよ、さほど歴史の知識が必要というわけではなく、中国の属国時代の朝鮮がどの国と国交を続けるかという背景があるぐらいである
王室専属の医師と仁祖が企てたクーデターのようなもので、それを偶々盲目の男が見てしまったという構図になっている
国の存続が最優先される中で、権力闘争に明け暮れているのだが、その顛末は非常にわかりやすいので問題ないと思う
スリラー映画好きなら満足できると思うので、夜目を効かせながら、レイトショーに赴くのも良いのではないだろうか
見えない目撃者
タイトルが非常に上手く、ネタバラシされた際は感心してしまった。
一旦「全盲ではないだけ」と思わせるところもニクい。
ギョンスが感じているであろう“音”や“視界”の表現も素晴らしかった。
いくつか引っ掛る点があるのだが、残された鍼一本が証拠になるのかは特に疑問。
特殊なものだった描写もないし、指紋鑑定もないし…
朧気な視界と怪我した足でスムーズに駆け回りすぎなのも気になった。
完全な暗闇だと結局見えないハズで、自分だけ見えるなんて状況もないなら、制約としてもっと活かせなかったか。
世子の運命を冒頭で語り、ギョンスの秘密を早々に開示してしまったのは勿体無い。
信頼と恩義は別の方法で描いて、もっと引っ張った方がよかったのでは。
お調子者の先輩はキャラとしては好きだが正直浮いてたし、弟もアキレス腱としての役割で終わっている。
(どっちも“その後”の描写がないし)
生意気な内医院の子供やイチャついてた男女なども不要で、後半のピンチの数も多過ぎたと思う。
左手で書かれた文字など捻り方が面白いところも多いので、むしろ弾数を絞った方が効果的だったのでは。
冒頭にあのシーンを持ってきたのも意義を感じない。
個人的には漢字ばかりの名詞が憶えづらく、フリガナも最初しか出してくれないのがツラかった。
仇は討ったが領相は残ってるし、結末もスッキリせず。
単なる愛憎や陰謀ではなく、確信犯的な動機であるところは悲哀も感じて好みです。
「見なかったこと」にしない、勇気。
予告編とポスタービジュアルに一目惚れ。
ハラハラ系のストーリー、苦手なんですけど、、、緊張感の中、すっかり見入ってしまいました。
盲人の鍼師ギョンスがあと一歩で宮中から外の世界へ出れるという瞬間、世子様の子を助けるために、踵を返して宮中に戻る場面は痺れました。
スリルたっぷりで息を呑む
王朝もので入りは難しく感じたが、すぐストーリーは飲み込め終始見入ってしまった良作でした。
スリルあり、話も奥行きがあり、かなり面白かったです。
アクションものが得意な韓国映画ですが、Netflixでも多数人気作品があるように王朝ものも得意です。
是非お勧めします‼️
ネタバレ
王様ざまーみろ
嫁さん残念
息子さんは何故島流に?
真相を委ねたあの人は最後どうした?どうなった?
最後が少しモヤモヤ
面白かったけど?
【朝鮮王朝時代に鍼医となった、闇の中でのみ少しだけ目が見える男が見た、清から戻って来た王子に行われた恐ろしき事。今作は史実に基づいた歴史サスペンスであり、一人の男の生き様の変遷を示した物語でもある。】
■1645年朝鮮王朝時代、8年もの間清に人質となっていた国王の嫡男、世子が王宮に戻って来る。国王仁祖(ユ・ヘジン)は、寵愛していた妾の進言や、自身の玉座に固執し、清との関係を深めるべきと進言する世子をお抱え鍼医イ・ヒョンイクを使い、鍼の先に毒を塗り、毒殺する。
お抱え鍼医の弟子ギョンス(リュ・ジョンユル)はその場にいたために、闇の中、微かな視力でその現場を目撃してしまう。
◆感想
・朝鮮王朝では、多くの毒殺事件が発生しているが、この映画が扱った事件もその一つである。
・ギョンスは、その見事な鍼治療の腕が認められ、王宮に鍼医として入るが、そこは権力抗争に塗れた魑魅魍魎が跋扈する世界であった。
だが、世子はギョンスの鍼医の腕を認め、彼の為に文字がもっと良く見えるようにルーペを上げたりするのである。
・王がお抱え鍼医に世子を毒殺させるシーン。お抱え鍼医は1本だけ毒の付いた鍼を世子の頭に残してしまい、ギョンスはその鍼を抜き取り部屋を脱出する。
・ギョンスはその事実を王宮内で権力を誇るチェ大監に進言し、王が鍼医に渡していた毒殺の指示が書かれた紙を渡すが、チェは“王の字が違う。”と言って否定する。王は左手で指示書を書いていたのである。
・更に、世子の息子スクチョルがイ・ヒョンイクの”治療”を受けていると知ったギョンスはスクチョルの身体に刺さっていた毒鍼を抜き、スクチョルを背負って逃げ出すのである。
■ギョンスが王の右手を麻痺させるために行った鍼治療。王は弔辞を左手で書く。ギョンスはそれをチェ大監に渡すが、王と話しを付けていたのか、反乱を止める。
だが、ギョンスは皆の前で国王仁祖が世子を毒殺した事を告白するのである。
・斬首を免れたギョンスはスクチョルと共に再び村で鍼医として仕事を始めるが、ある日王宮から使者が来る。
国王仁祖は孤独な中、精神を患い臥せっている。
ギョンスは、躊躇なく王の身体に毒針を打ち込み王を殺した後、その場を去るのである。
<今作は、自分を卑下していた盲目の鍼医が宮廷内の恐ろしい事実を知り、最初は怯えていたモノの、徐々に男としてやるべきことを自覚し、自身を可愛がってくれた世子の仇を打つ物語なのである。
それにしても、チェ大監の強かさや、世子の妻の最期などは、あんまり気持ちの良いモノではなかったかな。
何処の国でも、毒殺って昔からあるんだねえ・・。>
心の眼
などという問題ではない。見えているのである。/障害者や宮廷医に付与される思い込み(場合によっては偏見)をうまく生かしたプロットが心理戦にうまく生きていた。盲人だからといって、当然ながら聖者であるわけがない。かと言って悪人でもなく、ただただ生きるために手に職をつけ知恵をつけた者なのである。それ故、すっきりとした勧善懲悪でもないところが面白い。
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