梟 フクロウのレビュー・感想・評価
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権力と離れた盲目侍従医/暗闇の映像美
闘う勇気
権力はいつの時代も非道です。身内だろうが何だろうが、昨日の味方は今日の敵。
本作はサスペンスではありますが、メッセージ性にも優れた作品でした。ギョンスはただの盲目の鍼灸師ですが、王政という権力と対峙しました。あの時、ギョンスはそのまま外に出ることもできたのに。宮廷に戻った時には鳥肌ものでした。ラストは悲しい結末だと思っていたのにちょっと意外。
このひとりの弱者の闘う勇気を描いたことも、とても韓国映画らしいと思います。緊張感溢れる作品で、あっという間に時間が過ぎていました。
主人公は、完全に盲目の方がよかったのでは?
事件が起こるまでのテンポの良さと、事件が起きてからの二転三転する展開にグイグイと引き込まれる。
特に、最高権力者が事件の首謀者であるという絶望的な状況で、生き延びるために奔走する主人公の姿からは一瞬も目が離せない。
主人公が、自らの特技を活かし、鍼を使って国王に左手で文字を書かせるようにしたり、世子からの助言を回収する形で「見て見ぬふり」をやめ、国王の陰謀を暴露するといった見せ場がしっかりと用意されているところも、よくできていると思う。
バッドエンドの結末にモヤモヤしかけていたところに、勧善懲悪の決着をつけているのもよい。
ただ、盲目の主人公が、暗闇の中でだけ目が見えるようになるという設定は、本当に効果的だったのだろうかという疑問も残る。
確かに、そうした設定がなければ、主人公が暗殺の真相を知ることはなかったのであるが、一定の条件下でも目が見えるというだけで、謎解きのミステリーや、逃亡劇のスリルが弱まってしまったように思えてならないのである。
完全に目の見えない主人公が、「音」や「匂い」だけを頼りに陰謀に立ち向かっていくといった物語にした方が、もっとハラハラ・ドキドキが感じられたのではないだろうか?
鍼師のひとりごと
闇に隠れる真実と、闇に浮かび上がる真実
2024.2.15 字幕 アップリンク京都
2022年の韓国映画(118分、G)
李氏朝鮮時代に起きた世子暗殺事件を描いたスリラー映画
監督はアン・テジン
脚本はヒョン・ギュリ&アン・テジン
物語は、『仁祖実録』に収録されている世子殺害事件を紐解く流れになっていて、その事件の目撃者とされた盲目の鍼灸師ギョンス(リュ・ジョンヨル)の視点で描かれていく
明の衰退を受けて、今後の舵をどう切るべきかに悩む朝鮮王国が舞台となり、1645年6月27日に起きた出来事であることが明示されて始まる
ギョンスには病弱の弟キョンジェ(キム・ドウォン)がいて、ふたりは慎ましやかな生活を送っていた
目が見えないことを良いことに隠れた不幸に苛まれているものの、兄弟の仲は睦まじかった
ある日、仁祖(ユ・ヘジン)の御医であるヒョンイク(チェ・ムソン)が町にやってきた
この度、宮廷内での御医を募っているとのことで、試験を行うとのことだった
ギョンスは試験官が足を引き摺っている事に気づき、荒い息づかいから「卒中」ではないかと疑いをかける
ヒョンスクはギョンスの能力を見定め、彼を宮廷に招き入れる事に決めた
その後ギョンスは、案内役を買って出たマンシク(パク・ミョンフン)とともに宮廷に出向き、そこで見習いとして働き始める
不慣れな中、仁祖の昭容(アン・ウンジン)の診察を任されたギョンスは、そこでも能力を見せ、次第に信頼を得て行った
ある時、清から仁祖の息子・ソヒョン世子(キム・ソンチョル)が帰ってくる事になった
ソヒョンは清王(アン・セホ)とともに戻り、清国との国交を持つことが朝鮮にとって有意義だと考えていた
だが、明との関係を重視する仁祖はそれを拒み、清王の出迎えを拒否してしまう
領相(チョ・ソンハ)は出迎えをしないのなら職を辞すと覚悟を見せ、仁祖は仕方なくソヒョンと清王を出迎える事になったのである
映画は、朝鮮国内が明派と清派に分かれている対立構造を描き、明派の仁祖がソヒョン殺害を企てる様子が描かれていく
仁祖はヒョンイクに命じて、毒針を仕込ませるのだが、その様子をギョンスは目撃してしまう
ギョンスは昼間は盲目だが、夜になるとわずかに見える男で、それによってヒョンイクが使用した毒針を見つけ出し、証拠として確保する
だが、その際に蝶番に太ももをぶつけて怪我をしてしまい、ソヒョン殺害の濡れ衣を着せられてしまうのである
映画は、ギョンスの秘密を知るのがソヒョンだけという中で、どのようにしてヒョンイクが犯人であるかと伝えるか、というところを描いている
ソヒョンの妻である世子婿(チョ・ユンソ)に手紙を書くものの、黒幕が仁祖であることがわかり、口を噤まざるを得なくなる
そんな中、ソヒョンの息子ソクチョル(イ・ジュウォン)に手紙を託し、領相を動かそうと考えるのである
実録された事件をベースにして、夜目が効くという意味合いの「梟」をタイトルにしているのだが、このスリリングな展開は思わず手に汗を握る展開になっていた
夜のシーンが多く、人物の把握が難しいものの、パンフレットに記載されている8人を識別できれば問題ない
時代背景の知識などを踏まえるなら、パンフレットを購入して補完するのも良いのではないだろうか
いずれにせよ、さほど歴史の知識が必要というわけではなく、中国の属国時代の朝鮮がどの国と国交を続けるかという背景があるぐらいである
王室専属の医師と仁祖が企てたクーデターのようなもので、それを偶々盲目の男が見てしまったという構図になっている
国の存続が最優先される中で、権力闘争に明け暮れているのだが、その顛末は非常にわかりやすいので問題ないと思う
スリラー映画好きなら満足できると思うので、夜目を効かせながら、レイトショーに赴くのも良いのではないだろうか
サスペンス
見えない目撃者
タイトルが非常に上手く、ネタバラシされた際は感心してしまった。
一旦「全盲ではないだけ」と思わせるところもニクい。
ギョンスが感じているであろう“音”や“視界”の表現も素晴らしかった。
いくつか引っ掛る点があるのだが、残された鍼一本が証拠になるのかは特に疑問。
特殊なものだった描写もないし、指紋鑑定もないし…
朧気な視界と怪我した足でスムーズに駆け回りすぎなのも気になった。
完全な暗闇だと結局見えないハズで、自分だけ見えるなんて状況もないなら、制約としてもっと活かせなかったか。
世子の運命を冒頭で語り、ギョンスの秘密を早々に開示してしまったのは勿体無い。
信頼と恩義は別の方法で描いて、もっと引っ張った方がよかったのでは。
お調子者の先輩はキャラとしては好きだが正直浮いてたし、弟もアキレス腱としての役割で終わっている。
(どっちも“その後”の描写がないし)
生意気な内医院の子供やイチャついてた男女なども不要で、後半のピンチの数も多過ぎたと思う。
左手で書かれた文字など捻り方が面白いところも多いので、むしろ弾数を絞った方が効果的だったのでは。
冒頭にあのシーンを持ってきたのも意義を感じない。
個人的には漢字ばかりの名詞が憶えづらく、フリガナも最初しか出してくれないのがツラかった。
仇は討ったが領相は残ってるし、結末もスッキリせず。
単なる愛憎や陰謀ではなく、確信犯的な動機であるところは悲哀も感じて好みです。
確かに、私が見ました。
時は1645年。朝鮮王朝の歴史に詳しければ引き込まれるのは必至だろうけど、知らなくても十分面白い。大国中華王朝と陸続きの小国朝鮮は、顔色を窺いながら生きなければならない。それはかつての琉球などもそうだろうし。その時代的地理的背景が起こす政治的思惑、施政者は陰湿にならざるを得ないなあ。その気分を煽るような展開。権力欲の渦に巻き込まれる、幾人かの心に宿す正義と倫理観。盲目の鍼医師の設定も絶妙。説明過多じゃないのもいい。こちらも一緒に「あ!」と気付く快感がいい。そして、扉を開いた時の朝日、まるでドラキュラまがいのその瞬間の絶望感。ラストはなんだかモヤつくけど。
あまり韓国映画は好んで観ないけど、なるほど国民性を考えてみれば、韓国がノワールものが得意分野なのは分かる気がした。
ノンストップサスペンス
盲人は目を瞑らない
ぐおぉぉ...おもしれぇ...。ポスターからものすごい映画なんだろうと伝わってきたが、ここまでとは。これまで味わったことの無い緊張のあまり、自分の心臓の音がうるさい。「コンクリート・ユートピア」に続き、今年は韓国映画の調子がとんでもなく良さそうです。
朝鮮王朝を壮大なセットでリアリティたっぷりに描く前半。この映画のすごいところは、この前半部分だけでも人間ドラマとして完成されているということ。知識が無いのもあるが、私は普段あまり朝鮮・中国の歴史物は得意としないのだけど、本作は見事な脚本で自分でも驚くほどどっぷりと浸ることが出来た。専門用語も多く登場するけど、丁寧に描かれているためかなり勉強になる。
一方後半からは本題に入ると共に、物語の進行を一気に加速させる。時間の関係で若干早足、粗くなっているのは否めないが、こんなにも夢中で見られるサスペンスはそう見れるもんじゃない。一体どうなるんだ、どうなってしまうんだ...とスクリーンに釘付け。前半で朝鮮王朝の時代背景についてしっかり勉強したことで、より理解が深まり、見応えが増す。なんて美しい作りなんでしょう。「仕掛人・藤枝梅安」の記憶が新しい、鍼療法。本作で、《鍼サスペンス》は最高だということが立証されたでしょ。
主人公のあまりに堂々とした立ち振る舞いやラストの締めくくりには違和感があるものの、洗練されたカットと映画であることを忘れてしまうほど自然な演技、そして何より人物描写には、心奪われるどころかもはや肝が冷える。梟というタイトルの意味や当時の常識など、本作の魅力は数しれず。なんかもう、上手いんですよね...(語彙力皆無)。
「告白、あるいは完璧な弁護」が大好きな自分にとっては、今年もこんな傑作サスペンスが見れるなんて至極幸せ。韓国映画、最っ高!ネタバレ厳禁映画ですので深くまで言及出来ませんが、非常に良く出来ているので、見る映画に迷ったら是非本作を。
韓国宮廷モノ最高サスペンス!
怒涛の
単純に面白かった。
少し無理があるところもなくはないが、後半の怒涛の展開には見入ってしまった。
韓国の時代劇はちゃんとエンターテイメントになっていていつも感心する、日本の時代劇はどこか文芸的で娯楽性に欠けるので(もしくはコメディで、ハラハラドキドキ感はかなり乏しい)面白さという点では韓国時代劇を見習えないものかと思った。
日本の歴史にも裏切りの数々はあっただろう。しかし、日本人の気質か、裏切りや謀反にも大義名分があったりと、そんな無茶苦茶な、という完全なヒールがなかなか出てきづらい。
一昨年の大河ドラマ、鎌倉殿で主人公北条義時が後半徐々にヒールになってはいったが、それでも圧倒的に憎める存在にはなり得なかった。
ノワールの分野で邦画が韓国映画になかなか追いつけないのは元々の国民性の違いもあるのかもしれないなと思った次第である。
中盤からのスピード感や緊張感がハンパ無いメッチャ面白い韓国映画。 本年度ベスト!!
とても良い作品だった!
中盤以降の引き込まれ感が凄い!
終始暗めな映像が手に汗を握る緊張感を増していた感じ!!
難しい映画と身構えて鑑賞したけどストレートな作風がとても良い!
盲目の鍼医のギョンス。
盲目と言いながらも暗闇ではうっすらと見える設定。
ひょんな事から鍼の技術を買われ宮廷で働く事に。
そんな中、ギョンスに優しく接してくれた王の世子(跡継ぎ)が暗殺される所を目撃。
ギョンスが暗殺者と疑われ宮廷内で逃げる中、犯人と首謀者を知らせようとする展開。
首謀者の正体に驚く!
どうすれば良いの?
首謀者の動かぬ証拠を入手する為にギョンスが取った行動が凄い!
実際に出来る事か不明だけど流石の鍼医!
鍼で人も殺せるのか!
恐るべし鍼医(笑)
二転三転する展開のスピード感が凄いんだけど乗り遅れること無く観られる親切設計が良好!(笑)
鍼医のギョンスを演じたリュ・ジョンヨルさんの盲目の演技が素晴らしい!
個人的に主演男優賞を差し上げたい!
ラストは人により是非が問われるけど自分的には納得。
主演のリュ・ジョンヨルさん。
彼のインスタをチェックしたらスクリーンで観た雰囲気とは全く違ったイケメンでした( ´∀`)
もうひと盛り上りほしい
ホラーかと思ってたら時代劇サスペンス。
「見えない」という身体的なハンディキャップと、「見ない」という後ろ向きな態度が、具体的な現象かつメタファーとして並べられているのも上手いし、「(かろうじて)見える」にも条件があることが、タイムリミットの機能も果たすという、観ていて感心してしまう設定。
エンタメとしてすごく良くできているし、面白い。
ただ、冒頭で召し抱えられてからのコメディシーンがものすごく古臭くて雑なのと、宮廷の屋外シーンが「これは城壁や門の内側なのか、外側なのか」「この人は門から入って来たのか出てきたのか」がすごく分かりにくて、前半がモタモタして感じたのが、ノリ難さに繋がった感じ。
後半ももうひと盛り上りあるかと期待してしまったが、比較的おとなしくラストシーンに向かい、そのラストもあまりカタルシスは感じなかった。
そもそも「闇」と言われても、光って「0」か「100」かってものでもないし、その辺り含めてかなり強引に引っ張っていく印象も強くて、「お話」は面白いけど「話運び」はもう少しキレイに納得させて欲しかったかな。
「薬屋のひとりごと」なんかも流行ってるし、もっと注目されても良いとは思うけど。
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