「複数の説の一つであることについて触れて欲しい」梟 フクロウ yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
複数の説の一つであることについて触れて欲しい
今年64本目(合計1,156本目/今月(2024年2月度)17本目)。
(ひとつ前の作品「レディ加賀」、次の作品「ジェントルマン」)
作品に登場する人物ほかは大半は実在する人物ですが、李氏朝鮮の国王は不自然な死をとげた人物が多く、この映画もそれを扱っていますが、一部の例外を除けば原因が明らかになっていないものが多いです。これは、古い時代であるという単純な理由もあれば、李氏朝鮮の後の朝鮮が日本に併合された後に資料が大半散逸してしまったなど、いろいろあります。
この映画もちょうどそれにあたり、この人物については色々な説があります。そのうち「考えられる一つの説」を取ったものですが、この点、かなり多数の説がある上に、この人物は歴史上大きな役割を果たした人物であり、映画化するのは構いませんが「一つの説である」という点は明確に書いてほしかったです(定説のように思われると困る)。
※ この点は、「王の願い ハングルの始まり」でも同じことがいえた(ハングルの成立についての経緯)
かつこの映画は韓国映画ですから当然現地のほうが「先に」放映されたわけですが、またか現地「だけ」「一つの説を採用したものです」などという表示はしないはずなので(勝手に撮影するなだのといった著作権表示、たばこはダメよみたいなもの以外は基本的にどこでみても変わらないはず)、この点、現地の韓国でもこの状況(あくまでも一説である点のみが示されているもの)なのでしょうか…。
ちょっとそこが残念なところです。
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(減点0.4/この映画の上記の事情について
評価の減点の対象は大半ここにきます(ほかはまぁまずもってない。ただし後述)。この映画で扱われている人物は確かに色々な確執がありましたが、当時の中国の清との関係改善に関与したり、ヨーロッパから西洋文化を李氏朝鮮に「直接」取り寄せようといった実績もある人物で、李氏朝鮮の偉人といえば、世宗大王が真っ先に思い浮かびますが、それに同一レベルではないとしても、李氏朝鮮全体でいえば、歴史的にも文化的にも大きな貢献を残した人物です。
そうであれば、なおのさら、こうした事情があるのですから、映画のような結末を迎えるとしても、「一つの説である」点はちゃんと書いておいてほしかったです(なお、上記のように清との結びつきを強くしたり、西洋文化を取り込もうとしたために保守派の怒りを(本件とは別に)かったという説、あるいは、「黒い点がいくつも顔にあらわれ…」という当時の描写からマラリヤ・天然痘にかかってしまったなどの説があります(主に暗殺説、病気説があり、暗殺説の中でもさらに犯人が誰かがさらに複雑に分岐する)。
(減点0.1/「島流し」について)
ここは歴史上はっきりしており、李氏朝鮮においては「流刑」は済州島であり、済州島はこうした事情で発展をとげたところがあります。しかし、済州島はさらに時代が進むと1948年には荒れ地と化した(1948年4月3日の済州島事件)事情ほかもかさなり「済州島差別」(特に上記の流刑の事情から、身分が低い人が住んでいる、といわれた)が「現在でも」あるのは事実で、済州島とこそ映画内では明示されていませんが、少し調べればちゃんとわかることであり(ここは文献上の差異は一切見られない)、また常識的に考えても済州島以外の流刑場所がないので一発でわかります。この点、済州島差別の意図はないものと思いますが、こうした済州島の現在の事情(あるいは、麗水・順天ほかの全羅南道などの地域差別)も鑑みて適切な描写が欲しかったです。
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