「美味しそうな郷土料理と理解できない赦しの精神。」FEAST 狂宴 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
美味しそうな郷土料理と理解できない赦しの精神。
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マジで監督の了見がわからなくて戸惑ったが、それでもなお、どのシーンもやたらめったら面白い。金持ち一家が交通事故を起こし、随分と身勝手な贖罪に勤しむのだが、貧乏人である被害者遺族に対して、同じ人間として扱っているとはとてもじゃないが思えない。罪滅ぼしのために使用人として雇うのはかなりムリのある罪滅ぼしだと思うが、貧富の格差が開きすぎている社会では、意外と双方すんなり受け入れてしまえるものなのだろうか。にしても、息子の身代わりで刑務所に入る家長であるお父さんが、差し入れを持ってきた被害者家族にたいして「早く家族に会えるように祈ってる」なんてしれっと言ったりする。言われてる方は、テメエらのせいで二度と夫に会えないってのに。でも、そういうイビツな関係性を皮肉たっぷりに描いているのかと思っていたせいで、最後の最後に訪れる赦しの表現への驚きと戸惑いがただごとではなかった。なんだこの価値観? 異国フィリピンってこうなの? それとも監督の独特すぎる人生哲学のせい? とにかく理解とか共感がまったくできないオチで、まるで宇宙人と遭遇したような気持ちになるが、それも含めて、自分の中にないものを見せてくれたという点でものすごく面白い。そして次々と登場するパンパンガ州の郷土料理がものすごく美味しそうで、もうそれだけでも名作な気がしてきた。とにかくグローバリゼーションが進んだ現代に、異文化や異なる価値観に出会える経験は新鮮だし貴重。
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