劇場公開日 2024年1月12日

「(広義の意味の)ヤングケアラー問題を扱う問題として良作。」弟は僕のヒーロー yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5(広義の意味の)ヤングケアラー問題を扱う問題として良作。

2024年1月25日
PCから投稿

今年40本目(合計1,132本目/今月(2024年1月度)40本目)。
(ひとつ前の作品は「燈火(ネオン)は消えず」、次の作品は「劇場版 君と世界が終わる日に FINAL」)

 ※ 年に3日も特別有休が付与されるのに、それを毎年「使い切らないといけない」のは厳しいものですね。ということでその消化で見た作品です。

 福祉行政には「きょうだい児」という概念があります。ある親に子が2人以上いるとき、一人(複数)が障がい者であるとき、健常者の子のことを「きょうだい児」といいます(「きょうだい」は「兄弟」と書くが、兄弟姉妹に関係せず用いる)。この映画のように学校でいじめの対象になったり、広義の意味でのヤングケアラー問題が発生しうるということで知られます(特に結婚に際して避けられたりといったことは「現在の日本においても」存在します)。

 ※ なお、重度身障であってもテレワークによって健常者とほぼ同程度稼げる程度の状況であるなら使われることはない(せいぜい、親なきあとに「きょうだい児」が年に1回来るか来ないかくらいの話)ものの、この映画は年齢層がそうではないですからね。

 ストーリー自体は実話とのことで、イタリアという日本とはまた福祉行政の制度がまた少し違う国において、一般的な病気(小児がん)や難病ほかではなく、よく知られた病気ではあっても意思疎通が難しいとされる「ダウン症」を扱ったことに意義があろうというところです。

 私がみたときはやはり問題提起のタイプの映画は客入りも少なかったのですが、そのこともあってゆっくり見られたのは良かったです。

 この映画のようにダウン症の子であれば「きょうだい児」の問題は一方方向にのみ通常存在しますが、重度身障といっても知的能力に問題がない場合、「差別を受けていないだろうか…」と当事者が案じる「逆きょうだい児問題」というのもあって、それも論じるべきだったのではなかろうかと思いますが、本作品はこれが実話であり、ダウン症という設定である以上これを表立って扱うことはできない(不可能)である点は理解でき、そこはもう仕方がなかろうというところはあります。

 採点に関しては以下が気になったところです。

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 (減点0.3/映画の趣旨を考えたときの映画の「鑑賞代金」について)

 ・ ヤングケアラーの当事者の子にとって、それを証明する方法はない(まさか「きょうだい」児とはいえ勝手に身体障がい者手帳などを持ってくることはできない)点は理解するものの、この映画の「ある程度のターゲット層」としてそうした子が想定される以上、自己申告制(仮に虚偽によるものであったとしても、性善説に立ったとして)でもよいので、「映画の趣旨を鑑みれば」何らかの施策が欲しかったです。
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 ※ その割に、スペイン映画で「スペイン語学校に通っていることを証明できたら300円引き」とかという映画もあったりするので、どういう「割引施策」があるのかよくわからないのが困ったところ…。

yukispica