劇場公開日 2024年2月9日

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「エリセの「映画」感」瞳をとじて つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 エリセの「映画」感

2025年8月13日
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鑑賞方法:VOD

「ミツバチのささやき」のヴィクトル・エリセ監督、31年ぶりの新作。その31年ぶりというところだけに惹かれて観ることにした。一体どんな物語を紡ぐのだろうかと興味がわいたからだ。
ちなみに「ミツバチのささやき」は好みではない。内容も自分には難しかったのもある。

例えばペストは当時の人々の生活を一変させ、衝撃を与えたことだろう。それによりペストに関連した絵画や戯曲などが生まれた。
ペストを無視してものを考えることができなかったほどだと想像できる。
現代に人においてはコロナ禍がそれに近い状況だったかと思う。一変した生活に皆が何かしら考えたはずだ。今のことや未来のことなど。

私は映画ファンなので自然と映画人の行動を知ることになるわけだが、多くの映画人は当然といえば当然だが、映画について考えたようだ。
そして、もしかしたらもう映画館がなくなるかもしれない状況に直面したとき、それぞれが「映画」というものを語り始めた。
ある人は映画の未来について、ある人は自身の映画愛について、ある人は映画の持つ夢について。

そしてヴィクトル・エリセもまた、コロナ禍を経て映画について語りたくなったのだろうと、この作品を観て思った。
31年ぶりの作品を発表する動機としては充分だろうと、自分の中では妙に納得してしまった。

エリセが語る「映画」についてとは、映画制作に関わる者への讃歌だったように思えた。
演じること、過去を残そうとする努力、そして変化。映画の過去から現在、そして未来まで見据えたものに見えた。
それはある意味で、映画の魔法を具現化しようとしたのではないかと思える。

正直に言えばそんなに面白くなったのだけれど、誰かの映画愛を見ることは、一映画ファンとしてある種の喜びだ。
俺たち仲間だよね。みたいな感覚が嬉しい。

つとみ
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