「友人探しでありながら、結局は自分探しだった」瞳をとじて kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
友人探しでありながら、結局は自分探しだった
映画愛を感じさせる、どことなく『ニュー・シネマ・パラダイス』感さえあった。自分が映画に捧げてきた人生を振り返り、それが人にどのような影響を与えてきたのだろうか?年老いてようやく気づく・・・みたいな。
なぜか主人公であるミゲルやフリオよりも、編集者や映写技師に携わってきたマックスに惹かれ、さらには謎の中国人女性の可憐さにも恋してしまいそうな、脇を固める俳優陣の素晴らしさ。う~ん、一体何を見ていたのだろう・・・自分が似たような年寄りになってしまったからかもしれません。そして、愛犬カリにも心奪われてしまった。
スペイン内戦についても少しだけ会話に織り交ぜられていたけど、監督ビクトル・エリセからは切り離せない出来事だったのだろうなぁ。混乱の時代から生き抜いたものの、親友が行方不明になってしまった。これで寡作である映像作家の半生を映し出したかのように人生の重みをも感じさせる。
主人公ミゲルが隠遁生活を続けてきた渋さ。波の音が絶えず聞こえる海辺の町にも凝縮されているけど、その美しい海を前面に打ち出すことなく音で感傷にに浸れるという潔さ。フリオの娘を父親に引き合わせるというプロットも光っていたし、ラストでは記憶を取り戻したのかどうかを鑑賞者に委ねるという大胆さ。映画人という特殊な職業ではあるけど、全ての人にも共感できそうな作品でした。
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