スイート・イースト 不思議の国のリリアンのレビュー・感想・評価
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ダルい女子高生にタジタジになるオッサンどもの敗退録
オッサンどもが(若い男性も女性もいるが)、無感動、無関心で退屈しきった女子高生を手懐けようとしては逆搾取にあって撃沈していくという、なんとも皮肉で奇妙なロードムービー。しかし主人公のリリアンはリリアンなりに、自分で次の状況を切り開くし、ダルい無関心娘なりにそのときどきを楽しんでいる。しかし圧倒的に自分本位であり続け、世界が狂っていることなど意にも介さない。おそらくリリアンが生まれてこの方世界はずっと狂っていて、彼女にとってはごく当たり前の初期設定でしかないのだろう。
この空っぽの女子高生がやけに魅力的に見えてしまうこと自体が、オッサンどもが若い女性を搾取しようとする構造の裏返しでもあり、自分の中にも眠っているほのかな欲望を見透かされたようで、居心地が悪いような、風通しがよすぎて笑ってしまうような、非常に中途半端な気持ちにさせられ。なかなかほかの映画では得られない感覚を味わえる意味でも最高。とっつきにくいが、一度ハマると笑いっぱなしのブラックコメディ。とりあえずリリアンが歌い出したあたり(かなり序盤だが)から、すべてを受け入れると覚悟を決めて観ることをオススメします!
アッパー系『裸足のピクニック』
客層が不思議の国だった
65点ぐらい。タリア・ライダー
あらすじ読まずに、タイトルとポスターのイメージで『ピクニック at ハンギング・ロック』みたいな映画を想像し、鑑賞。
始まったら、主演の女の子の可愛さが目立つけど、話自体は、あまり意味が分からなく、コメディっぽいし、低予算っぽいし、インディーっぽくて前衛的。
登場人物が濃いキャラばかりで、けっこうハチャメチャ、不思議の国っぽさも少し感じた。
期待してた『ピクニック at ハンギング・ロック』みたいな映画じゃなかったけど、
なんだかんだ言って、終わるころには、もう1回観たくなった(笑)
終わり方が好き。
主演の女の子タリア・ライダーが可愛くてファンになり、スルーしようと思ってたけど、彼女が出るというので『JOIKA 美と狂気のバレリーナ』も観ます(笑)
物語の展開は予想外で、いい意味で色々と裏切られて良い
恩をあだで返す 不届きものです。(゙ `-´)/
アイディオロジストに好きなだけ語らせれば、財布の紐は緩くなる
2025.3.17 字幕 アップリンク京都
2023年のアメリカ映画(104分、R15+)
修学旅行中に抜け出した高校生が奇妙な大人と出会う様子を描いた社会風刺ロードムービー
監督はショーン・ブライス・ウィリアムズ
脚本はニック・ビンカートン
原題は『The Sweet East』で、直訳すると「甘ったるい東部(東海岸)」という意味
物語は、サウスカロライナ出身のリリアン(タリア・ライダー)たちの高校が、修学旅行としてワシントンD.C.に来る様子が描かれて始まる
彼氏のトロイ(Jack Iry)や彼にちょっかいをかけるクラスメイトのアナベル(エッラ・ルビン)たちがはしゃぐ中、リリアンはどこか物憂げに彼らとの距離を取っていた
いくつかの観光地を回った彼らは、地元のピザダイニングへと足を運んだ
アナベルたちがカラオケに興じている中、リリアンは席を外して、トイレで一服することになった
その後、店内に戻ってみると、店長(J・パトリック・マクエルロイ)に銃を突きつけているイカれた男(アンディ・ミロナキス)がいた
客は一目散に逃げ出し、その中にいたパンツファッションの男・ケレイブ(アール・ケイブ)は、リリアンに声を掛ける
そして、秘密の出口から地下道を通って逃げ切ることになった
その後、ケレイブについていったリリアンだったが、彼はアナキストの活動家で、ネオナチの集会を襲撃しようと計画を立てていた
映画は4つの章に分かれていて、「Fancy a Trip to Charm City?」「Right on the Delaware」「I’ve never ever been to Hollywood」「First time in Vermont?」となっていた
道程は、ワシントンD.C.→チャームシティ(ボルティモア)→デラウェア→ニューヨーク→バーモント→サウスカロナイアという流れ
リリアンは、その都度本当のことは話さず、友人の名前を騙ったり、直前に得た知識を自分ごとのように話していく
そんな彼女に対して、多くの大人がひたすら語るという内容になっていて、リリアン自身はそれを受け止めるでもなく、スルーするでもなく、という感じに対応していた
印象としては、何にも傾倒していない無垢な若者が「現代のアメリカのイデオロギーの何に反応するか」というテイストになっていて、その答えは「何も琴線にふれない」というものだった
現実に戻っても、それらのイデオロギーは彼女の一部になることはなく、アイディオロジストは自分語りで満足しているというふうにも見て取れる
ある意味、その主義主張に傾倒する人々を揶揄っている感じがして、この中には「現代の若者を取り込める力はないんだよ」と言っているようにも思える
アメリカの内政とその主義についての話なので、日本でウケるはずもなく、アメリカ通のコラムニストの解説をわかったふうで流すのが精一杯のように思う
ある意味、若者の声を聞こうとしない人の集まりのようなものなので、若者たちが傾倒するものというのは既存の枠組みではなく、若者の中から派生するのかな、と感じた
いずれにせよ、最後まで本当の自分を見せないリリアンなのだが、自分の彼氏をクラスメイトに取られても動じないほどに空虚だった
かと言ってそれが不幸にも思えず、自分自身は何者かとか、何かしらの使命感を持って行動している人たちを冷めた目で見てきた
結局のところ、彼女自身の生活に1ミリの影響もなければ興味も湧かない話なのだが、反発するとさらに語ってくることに気づいているのだと思う
気持ちよく自分の言いたいことを言わせられれば、その人のウィークポイントというものも見えてくるので取り込みやすい
彼女が不思議の国を渡り歩いたというテイストに見えるが、実際には「リリアンという不思議の国を旅して打ち砕かれた人々を描いていた」とも言えるので、アンチ・アイディオロジストの力というのは侮れないのかな、と感じた
この映画から見えるパーマクライシス=永続危機現象。した世界の状況。
昨日、町山さんの上映後解説もある事を知って、観て来ました。
サウスカロライナ州のごく普通の学生が、首都ワシントンD.C へ修学旅行に行き、バーで銃撃事件に巻き込まれて逃げ込んだトイレの地下通路を通り、サウスカロライナ州の自宅に戻るまで、アメリカ各地の様々な社会問題を経験する事を描く作品です。
作品に出てくる数々の出来事=ネオナチ、映画撮影現場での銃撃事件、マイノリティ、ジェンダー、地域格差、トランプ大統領2.0...等諸問題=世界中で起きているパーマクライシス=永続危機現象。とリンクする所が出て来ます。
上映後の町山智宏さんの解説も分かりやすく、過去の作品、撮影技術をフィードバックして製作した事、トランプ大統領2.0後のアメリカの状況を詳細に説明し、監督、俳優等が声をあげらない状況にある事、最後に「声をあげられない」状況でも希望を持って前に進む大切さの事を伝えていました。
本当、町山さんの行動力=作品の監督にインタビューする所には共感です。
是非推薦します。
スイート・イースト 不思議の国のリリアン(映画の記憶2025/3/14)
アルバトロスは裏切らない。
B級作品を掴ませたら右にでるものはいない。
ということで久々に意図が1ミリも伝わらない映画みたわ。たぶん47歳のおっさん監督から見た若者あるある集であろう。ただ主人公目線で入るか主人公を斜め下に見るかで作品解釈が変わる。
アメリカ社会の闇といえば闇を描いてるがおっさんはどっちを言いたかったの?
ちなみに50歩100歩なんだがね、、、、批判してるのは銃乱射事件とかなんだが、批判対象が変わるたびに前後を割と強引につなげる。ここが邦題で「不思議の国の」とつけた理由がわかる。
タリア・ライダーはこの後やるJOIKAで全然別軸の役だったと思うのでJOIKAも観てみようかなと思う良い演技をしていた。
まぁアルバトロスにしては良く選んだ作品なのでポイントは増しで
(個人的評価5点/10点中)
蝶と蛾に明確な区別はありません
サウスカロライナ州のJK3のリリアンが、修学旅行で訪れたD.C.から東海岸を北に向かって旅する話。
ヒャッハーな友人たちと訪れたカラオケバーで、銃を発砲する輩に遭遇し、逃げるのを手伝ってくれたパンクスと仲間たちの車にどういう訳か同乗し、ボルチモアへ向かい旅が始まって行く。
そもそもが、何がしたいのか良くわからないまま、着の身着のままの旅が始まり、上手いことオッサンを手玉に取って、気がつけばNY…は良いけれど、ここまでずる賢くやって来て、その状況でホイホイついて行くアホっぷりはどういうこと?それが
若さってヤツですかね?
それからの展開も流されるまま又北へとなるけれど、なんだか良くわからないままハイ終了って…何が言いたいのか全然わからないし、面白さもわからなかった。
HERDER(笑)
アメリカ国内のみで世界にはなかなか報道されないような事件や陰謀論、風変わりな集団などをパロってるので日本国内にいる我々には全くもってして理解しづらいスーパーサブカル映画。
鑑賞後に町山さんの解説が付いていたので監督の製作意図や意味については何となくわかり助かった。
サウスカロライナの女子高校生リリアンが修学旅行でワシントンDCに行ってから様々な変わった人と出会い、東海岸の都市や森を巡り、一通り冒険し数日後に戻ってくると言うまさに現代のアリスインワンダーランドのようなお話。
本作がデビューの監督ショーン・プリンス・ウイリアムズは超映画オタクのカメラマンだったらしいが、アメリカ人が何となく知ってたり覚えてたりする幾つかの出来事をパロディにしクスッとさせたいというのが先ずあり、それをストーリーとして一本串を通すためにアリス方式?を採用しただけなので、ストーリー自体に対しては評価すべき部分はほとんどない。
ただ、自分がある程度長くアメリカに住んでいたとしたら相当好きな映画になるんだろうなと思う。
主演のタリア・ライダーは角度によってはウィノナ・ライダーそっくりに見えるので子供なのかと思って観ていたがどうやら全く関係ないよう。
線は細いが物憂げな雰囲気が良いし美形なのでこれからもお目にかかれそう。
ネオナチのローレンス教授役だったサイモン・レックスの童貞感は何だかちょっとだけ笑えた。
紐解くキーワードの一部はHPで見ることができるが(配給する側も不安なのw)、それ以外にはANTIFA、D・W・グリフィス、國民の創生、東海岸南部の女性などです。
不可解に思うフィクションも、実は現実なのかも知れません
町山さんの解説が上映後に入るタイプを見ました。
まずは、全般的にサブタイトルでもわかるように、「鏡の国のアリス」を彷彿させる展開です。主人公がさまよう世界は、原作同様、不可解なことに巻き込まれます。不可解なことは、ネットの書き込みを信じ込んでしまい、偏った考えに固執してしまっている人とか、カジュアルに政治に関わろうとする若者とか、現在のアメリカで問題になっていることが関わっていたり、無声映画時代の作品や撮影テクニックをオマージュしていたり、主人公の名前は、その無声映画の主演女優からとっていたり、普段はふざけたことをしている人が、やたらと真面目な役で出てきたり。これ以外にもいろいろと小ネタが仕込まれているそうで、アメリカでも、それらについて事前に熟知して見ている人はいないだろうという感じ。最低限でも「鏡の国のアリス」を知っていれば、楽しめるかなと思います。
監督は、この映画で昨今のアメリカ社会を茶化しているそうですが、新政権になってからは、茶化すことすらできなくなったと嘆いていると、町山さんが教えてくれました。夢物語のようでも、実は現実なのかも知れません。
町山さん解説付きは、3月16日まで。それ以降は1000円もしますが、監督インタビューが載ったパンフレットを読めば、この映画の背景を知ることはできます。
手紙の最後に“your bitch”
決して万人向けではない、ワンダーランドとしての米東海岸の話
日本の副題が示すように、アリスがマッド・ハッターやハートの女王などの奇妙な人々と出会うように、リリアンもネオ・ナチやアンティファ、モスリム集団など奇妙でクセの強い人々と出会う。また、発砲事件のくだりは、当時のヒラリー陣営に対する誹謗中傷がエスカレートし、後にQアノンへと繋がる2016年のピザゲート(Pizzagate)事件を思わせ、陰謀論や社会の分断など現在のアメリカ社会の歯車の狂い方と、(自分の身に危険が及ばない限りは)それに関心をほとんど示さない若い世代のしらけぶりを皮肉たっぷりな風刺(カリカチュア)として描いている。
ただ、本作が制作されたのは実は2023年で、2024年の大統領選挙が行われる前。その当時は笑い話として揶揄っていれば済んだ話が、2025年の1月に新大統領が就任し、議会を無視した大統領令を立て続けに出している今、笑い事で済まなくなってしまっている。
やはり、彼の国を他山の石として、無関心でいないことを心掛けるしかないのだろうな。
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