「邦題が意味不明だが、移民と不法滞在者のリアルが描かれていた」ニューヨーク・オールド・アパートメント Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
邦題が意味不明だが、移民と不法滞在者のリアルが描かれていた
2024.1.22 字幕 アップリンク京都
2020年のスイス映画(97分、PG12)
原作はアーノン・グランバーグの小説『De bellige Antonio(1998年)』
クロアチア移民に恋をしたペルーからの不法滞在兄弟を描いた社会派ラブロマンス映画
監督はマーク・ウィルキンス
脚本はラニ=レイン・フェルタム
原題は『The Saint of the Impossible』で「不可能の聖人=劇中で登場する聖リタ」を表す言葉
物語の舞台はアメリカ・ニューヨーク
そこで暮らすペルーからの不法滞在者ポール(アドリアーノ・デュラン・カストロ)とティト(マルチェロ・ディラン・カストロ)の兄弟は、ある女性との思い出に耽っていた
その女性の名はクリスティン(タラ・サラー)と言い、彼女はクロアチアからの移民だった
二人が通う英語教室に突如現れたクリスティンに恋をした二人は、あの手この手で距離を近づけようと行動していた
二人には近くのダイナーで働いている母ラファエラ(マガリ・ソリエル)がいて、ある日突然姿を消した息子のことを案じていた
友人のルーチャ(Elizabeth Covarrubias)とともに仮住まいを訪れたラファエラは「移民局」の捜査が入ったことに気を病んでいた
映画は、ラファエラの回想を主体にしつつ、彼女が知らない兄弟の一面を再現していく内容になっていた
映画は、クリスティンとの色恋沙汰がメインの童貞ものという感じで、彼女には訳があるという内容になっている
彼女の恋人ジェイク(ブライアン・ドール)が収監されていて、その釈放のための弁護士費用を集めるためにコールガールをしているというもので、その真相が後半で暴かれる感じになっている
兄弟の本音を察したクリスティンが条件を提示して行為に及ぶのだが、その余波を受けた二人が移民局の世話になってしまう
ペルーに強制送還された二人が何とかルーチャに連絡を取り、それによってラファエラに安堵が訪れるというものだが、訳あり底辺なので足元を見られまくっているという流れになっていた
そんな彼女にも一時の清涼が訪れ、それがスイス人の官能小説家エワルド(サイモン・ケザー)なのだが、彼が家に来たことによって、兄弟たちの行動がエスカレートしていくように紡がれていく
要は、母親が兄弟のことを考えているふりをしながら男に傾倒し、彼らの始めるビジネスに巻き込まれるのだが、その反発は水面下で起こっている、という感じになっている
飲食デリバリーの経験があると言っても、無許可で無計画で始めるあたりが無茶苦茶で、そりゃあそうなるよねという結末が訪れる
エワルドはラファエラ捨てられた後にちゃっかりと新しい女を連れ込んでいたが、街角のラバが一撃をお見舞いするのは爽快と言えば爽快なのかもしれません
いずれにせよ、邦題の印象から「ニューヨーカーと移民の恋」みたいなイメージを持っていたが、原題の意味が劇中で登場した唖然としてしまった
久しぶりに全く関係のない邦題がついて呆れてしまったのだが、これ以外に思いつかなかったというのが現実なのかもしれない
原題をそのまま使用しても日本人にはほぼ意味が通じないのだが、せめて「ダウンタウンの聖リタ」ぐらいの宗教色を取り込んでも良かったように思えた