劇場公開日 2024年1月12日

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「幸せの未来完了形」ニューヨーク・オールド・アパートメント sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5幸せの未来完了形

2024年1月21日
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鑑賞方法:映画館

評判の良さを目にして、予告編も未視聴のまま鑑賞したので、のっけから衝撃を受けた。
自転車が車と衝突しても、車側から「傷がついたじゃない!」と怒られてしまう街なんですね、ニューヨークって。
公然と格差が肯定されていて、弱い立場の者は強い立場の者に何をされても逆らえない。まぁ、あの女性ドライバーからすると「デリバリーをしているのは、どうせ不法滞在者で、表に出られない奴らなんでしょ?」といったことなのかもしれないけど、ポールとティトの2人の「透明人間は嫌だ」と言う気持ちは痛い程伝わってくる。
2人が恋するクリスティンも、ちょっとは身につける物が小綺麗でも、男たちにいいように扱われ続けている様は、やはり「透明人間」。自分のポートレートを相手に渡し、自分が求める時にはすぐに提示できるよう指図するのも、相手が自分を大切に思ってくれていることを目に見えて確かめる、彼女にとっての存在確認の大切な方法だったのだろう。
スプレーとナイフを携帯しつつ、自分の身を投げ出すことと引き換えに対価を得てきた彼女が、そうした生活に耐えられたのは、愛する彼の存在があったから。だからこそ、それが裏切られた出所の場面、美しく着飾った彼女の顔がみるみるうちに歪んでいくあのシーンの切なくて残酷なこと。
2人の母親のラファエラから「愛を与えたつもり?」と尋ねられて、クリスティンの「(2人は)もともと愛でいっぱいだった」との答えが胸を打った。
ビールを飲みながら授業する英会話学校教師や、上から目線のスイス人エロ作家を始め、胸糞な輩は山ほど出てくるが、不思議と爽やかさが途切れないのは、やはりポールとティトが真っ直ぐで清々しいからだと思う。
まだ道のりは長そうだったが、この2人だったら、確実に将来的には幸せをつかむだろうという希望が感じられた。

個人的には、ラマに「いいね!👍」を連打してつけたい。

話は変わるが、今回鑑賞した映画館は、塩尻市の東座という。上映前に、支配人?の合木さんから、毎月2週間自分のおすすめ映画を上映するというこの「FROM EAST上映会」の説明と、今回の映画の見どころや監督に関する話があった。NO原稿で、柔らかな語り口で、しかも決して観る前の余分なネタバレにはならない内容で、その見事さに心から感動した。また是非足を運びたいと思った。

sow_miya
alpha23dさんのコメント
2024年1月24日

ラマがつばを吐きかけるシーンでスカッとしたし希望を感じるラストで救われました。

alpha23d
Mさんのコメント
2024年1月21日

上映会の情報をありがとうございました。

M
きりんさんのコメント
2024年1月21日

ご連絡ありがとうございました、
東座まで行って来られたんですね。
塩尻に住んでいますと、一大決心とたっぷりの時間をかけないと、長野や上田映劇や渋谷の映画館まではたどり着けません。渋谷だと 特急あずさは21時が最終ですから午後遅くの上映だと泊りがけということになりますし。
ちょっと空き時間に気になっていた映画を、と言えないところが田舎住まいの辛いところです。トホホ。

本作品は1週間前に鑑賞済です、もちろん東座で。でも書きかけのレビューの宿題は山盛り。原作の文庫本にも挑戦中。
sow_miyaさん、いいペースで堰を切ったように書いておられる!
跡を追いかけますからこれからもよろしくお願いします。

きりん