「聖リタの続きが見たかった」ニューヨーク・オールド・アパートメント 詠み人知らずさんの映画レビュー(感想・評価)
聖リタの続きが見たかった
これは、本当に良い映画なのだろうか。
スイスから資金が入っているが、監督との関係か。登場人物の一人、エドワルド(なぜか英語表記はEwald)はスイス出身との設定。ただし、露悪的で興醒め。
ストーリーは、最近日本で公開されるフランス映画に時々あるように甘い。何かの配慮があると、plotが緩むのだろう。ペルーからアメリカに密航し、ニューヨークの下町で、なんとか生きようとする親子の物語。彼らが巻き込まれる事柄の時間的な経過を入れ替えて、観客はごまかされている感じ。
ティトとポールの双子の兄弟は、結局ペルーに強制送還されるけど、同居の母親ラファエラはなぜ、一緒じゃないの?あとで、GPSで追跡される。
母ラファエラが知り合ったエドワルドの出資で始めたブリトーのデリバリー(当然、未認可)には、彼女のアパートが使われていたはずなのに、いつの間にか、さんざんに荒らされている。当局がやったの?
若いクロアチア出身の美女クリスティンはどうにもならないとしても、兄弟と再会するのは事件を起こした後なの?
たった一つ興味を惹かれたことは、兄弟が聖リタに毎晩、祈りを捧げるところ。初めはマリア様に祈っているのかと思った。この映画の原題は「Saint of the Impossible」(不可能の聖人―不可能を可能にするとの意か、聖リタのことを指す)。でも確か、聖リタは、イタリア中部の聖人のはず。スペインの強い影響下にあったペルーにどうして伝わったのか、是非カトリックの人に聞いてみたいと思った。南米やカトリックの国の人がこの映画をみたら、全然違って見えるのかもしれない。
日本語の字幕にも意訳が多い感じ。街頭の声を拾ってくれないのは仕方がないとしても。兄弟とクリスティンが通っている英語のクラスで、ノルマンディーのことから太平洋戦争に話がおよび、その時日本人を指す蔑称が聞こえた。もちろん字幕には出てこなかった(と思う)。クラスには、明らかな日本人はいないにしても、現代のNYで日本人のおかれている微妙な立場が感じられた。密航してきたペルー人には(ある程度の)配慮がある。しかし、少なくとも一旦は西洋人を追い越していった日本人は、一体どのように捉えられているのか。今、同じ立場に置かれつつあるのは中国人。この映画にも終夜営業らしい四川料理店が出てきたけれど、彼らは一晩中働くくらい、なんとも思わないだろう。彼らはずっと逞しい。