「【“そろそろ、あの20年前の忌まわしき日に起きた事を話そうか。”今作は山間の小さな町で起きた少年殺害事件により、別々の人生を歩んだ少年の同級生3人の生き様を描いたサスペンスミステリーの逸品である。】」罪と悪 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【“そろそろ、あの20年前の忌まわしき日に起きた事を話そうか。”今作は山間の小さな町で起きた少年殺害事件により、別々の人生を歩んだ少年の同級生3人の生き様を描いたサスペンスミステリーの逸品である。】
■山間の小さな町の橋の下で、木田正樹少年の死体が発見される。同じサッカー部で、同級生だった阪本 春(成人後は高良健吾)、吉田 晃(成人後は大東駿介)、朝倉 朔(成人後は石田卓也)は、河原の粗末な小屋に住んでいた”オンさん”が犯人だと決めつけ、3人で彼の家を訪れ、朝倉 朔がシャベルで”オンさん”を殺してしまう。
だが、家庭内暴力により”悪を憎む”阪本 春は、全ての罪を被り、”オンさん”の家に火を放ち、少年院に入る。
そして、20年後。同じ町に住みながら顔を合わせなかった3人。春は、闇仕事も請け負う実業家に、晃は父と同じ刑事に、朔は農家になっていた。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・まず思ったのは、今作が初監督だという齊藤勇起氏のオリジナル脚本のレベルの高さである。これが、百戦錬磨の監督であればこんなことは書かないが、初監督で今や貴重なオリジナル脚本の深くて重くて、多数の人物を20年の歳月を盛り込みながら練り上げた脚本のクオリティの高さには、敬服する。
てっきり、有名ベストセラー作家の本が原作だと思っていたよ。
・20年前の出来事を引きずって生きる、春と晃と朔の疚しさにフォーカスした脚本が見事なのである。
特に、木田正樹少年殺害の20年後に起きた、犯罪組織と癒着した町を牛耳る刑事佐藤(椎名桔平)が”面倒を見ていた”、春と同じくシングルマザーから虐待されていた小林少年が、木田少年と全く同じ状況で殺害された事から、次々に明らかになって行く事。
小林少年の死体には、木田少年の財布が入って居たり・・。
・殺人事件を捜査する晃と、調査される春が対峙するシーンや、晃がずっと春に対して持っていた疚しさを詫びる橋上のシーンは、グッと来たな。
”何だ、こんな簡単な事だったのか・・。”と言って二人は肩を抱き合うのである。
二人が少年時代に戻ったかのように、友情を確かめ合うからである。
・設定の上手さは、更に続く。朔の弟ナオヤが、ずっと引き籠りになっていた理由。それは、彼が少年時代に”オンさん”にレイプされ、助けようとした朔も又同様の事をされていた事。
そして、それに感づいた木田正樹を、朔が蹴った時に正樹が石に頭を打ち付け、死んだ事が、最後半に描かれるのである。
■春と晃は、引きこもりのナオヤに会いに行くが、彼は殺鼠剤を服用して死んでいたのである。そこに駆け付けた朔の姿。
そして、春と晃は朔を夜祭に呼び出し、真相を聞こうとするが、朔はそれに応えずに一人歩き去り、公園から出ようとした道で、”暴走軽トラック”に撥ねられて死ぬのである。
このシーンの意味は、分かるよね!
私は、こういう観る側に想像させる手法が好きなので、この演出を指示するのである。
<今作は、少年時代に犯した殺人の”罪”の意識を抱えつつ、大人になった三人の男の生き様と、真なる”悪”とは何であるかと言う重いテーマを、閉塞感に満ちた山間の小さな町を舞台にしながら描いた、社会派の要素も絡めた、骨太なサスペンスミステリーの逸品なのである。>