「新人監督でこの完成度は驚き」罪と悪 チーズさんの映画レビュー(感想・評価)
新人監督でこの完成度は驚き
本作の監督を務めた齋藤勇起は、本作が初監督とのことだが、そうとは思えないほど密度が濃く、完成度も高い作品だった。
脚本で褒めたいのは、誰がいい、悪いといったように単純な勧善懲悪モノにしなかったことだ。人によって正義が変わってくるように、なにが“悪”でなにが“罪”なのかも変わってくる。もっと言えば、年齢によって立場は変わってくるわけで、同じ人間でも“悪”や“罪”の基準は常に変わっていくだろう。正解のない難しい問いにいきなり挑んだ齋藤監督の意気込みは大したもんだと思う。
本作は主人公たちが子供時代に犯した“殺人”という重い罪が、20年以上の時を経て再び再燃する仕組みになっているが、どれだけ時が経過しても犯した罪は消えないという製作陣からのメッセージのように感じた。主人公たちが過去の罪で今さら捕まることはないだろうが、罪悪感は一生消えないし、もしかしたら逮捕されたほうが罪を償えた気になって楽かもしれない。そういった意味ではかなりビターな内容だったのではないだろうか。
俳優陣の演技も本当に素晴らしかった。高良健吾、大東駿介、石田卓也らメイン3人の演技は全員良かった。それぞれ立場は違うが、今を必死に生きている様子を3人の俳優がそれぞれ違う角度で表現しており、とても見応えがあった。
そして子役たちの演技も忘れてはいけない。とてつもなく難しい役柄だったはずだが、リアルというものすら超越した演技で、“田舎の普通の高校生”が“人を殺した犯罪者”に移り変わっていく様子を繊細な演技で魅せていて素晴らしかった。
最後それぞれのキャラクターがどうなったかは詳しく描かれない。ただ、それはそれで鑑賞した人の想像に任せればいいのかもしれない。齋藤監督の次回作が今から楽しみだ。