劇場公開日 2024年1月19日

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「幻影を追い求めて。」サン・セバスチャンへ、ようこそ 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0幻影を追い求めて。

2024年2月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2020年。ウッディ・アレン監督。妻の仕事でスペインのサン・セバスチャン映画祭にやってきた自身もかつて映画監督だった男は妻の浮気を疑っている。浮気相手は新進気鋭の若手映画監督で、かつてのヨーロッパ映画を愛する主人公はこの男の作品も気に入らない。仕事にも恋にも強すぎる憧れを抱き、返す刀で自分自身を含む現実に幻滅し続ける主人公。そのように人生に幻影を求め続ける主人公の姿をユーモアに描くウディ・アレンにしか作れない映画作品(たち)最新版。
主人公は憧れの映画作品を夢(や白日夢)として見るのだが、浮気疑惑を気に病むあまり、その作品は自身と妻の身の上に重なっている。監督はこうした場面を「勝手にしやがれ」や「突然炎のごとく」や「市民ケーン」のシーンをカット割りや画角も含めて再現する形で自分自身で撮り直している。そこに現代の人間たちが出演している。これがやりたかったんだろうな。憧れに近づこうとすることが律儀な模倣となる、しかし、照れと自虐でそのままは撮れないからパロディにしてしまうというウディ・アレン的精神構造が明け透けにみられる。この「明け透けさ」も監督独特のあり方だ。
青い空と光、静かな海、コンパクトな街並みに、赤い車や白ワインが映える。人生とは幻影を追い求めることであり、その純粋な形は映画(映画製作)である。それがウディ・アレン監督の変わらぬテーゼだ。

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