ビヨンド・ユートピア 脱北のレビュー・感想・評価
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緊迫の脱北の一部始終
脱北者にカメラが密着という驚異的な手法で作られたドキュメンタリー映画。作品の中心となるのは、脱北者家族とそれを支援する韓国人の牧師、それにかつて一人で脱北したものの息子を連れてくることができなかった母親だ。本作は、なぜ北朝鮮から脱北する物が後を絶たないのか、その背景を貴重なフッテージとともに明らかにしたうえで、国境を越えて中国入りした後からカメラが密着し家族の逃亡劇を事細かに見せる。中国から東南アジアまで長い道のりを通って韓国までやってこなければならない、中国もラオスなども親北朝鮮の国なので、国境を抜けた後も数多くの危険があるのだ。
緊迫の映像だけでなく、南北の分断の歴史に欧米や日本の戦争がどのように責任があるのかも描き、映画に描かれる人々がなぜ苦しんでいるのかの構造的問題にまで踏み込む内容になっている。大変に優れたドキュメンタリー作品で、一見の価値がある。コロナで脱北が難しくなったという近年の事情も描いていて、これが現在進行形の問題であることを指摘することも忘れていない。
題材の衝撃性のみならず人間性が深く描かれた秀作
生々しい手触りを持った脱北ドキュメンタリーで、自分にとっては相当な衝撃作だった。まずカメラの被写体となるのは韓国で脱北者の支援を行うキム牧師なのだが、ことの深刻さとは裏腹に、牧師はいつも温厚ででっぷりとお腹が出た体型。その佇まいからして癒しがある。そんな矢先、中国国境の山奥で幼児と高齢者を含む5人家族が見つかり、ブローカーからは彼らを支援するか否かの打診が。本作はブローカー数十人や支援者の手を介し、彼らが東南アジア経由の厳しいルートで脱出に挑む姿を記録した作品だ。115分間、無駄なく情報が散りばめられ、北朝鮮の歴史や文化に関する知識まで盛り沢山。加えて特筆すべきは幼児と祖母のリアクションで、つまるところ、国家政策で叩き込まれた思想と外界の現実とがあいまみれ、彼らの中で何かが静かに崩壊していく様子が、最も純粋な表情として伺えるのだ。かくも”ヒューマン”が刻印された一作に成り得ているのが尊い。
On the North Korean Refugee Experience
There have been a number of documentaries on life in the Hermit Kingdom, but Beyond Utopia is the first I have seen on its runaways. The film focuses on a Christian priest who buys them from human traffickers in China. They must venture by land to the Thai border where they can then fly to South Korea. As such, its more scathing of the regime than others that tend to humanize with silver linings.
この映画の監督は編集係に過ぎないが、撮影は命懸け…。
脱北という現実は存在し、それを助ける人もいる。その情報網があるということは、北朝鮮や中国国内にも協力者がいるということなのだろう。
しかし、老人を含む家族すべてを救い出すことは不可能だと思われるが、この映画の中では、それを実行し、成し遂げている。
よく撮影したと言えば、それまでだが、なんとも言えない気持ちになってしまう。
牧師さんと、撮影する人と、三世代の家族は、ジャングルの中を歩き続け、強制送還や、身の危険から逃れ、安全な場所へと逃れた。
この映画の監督は出来ても、出演者や撮影者になる人は存在しないだろう。
しかし、それが映画として成立しているところに、理解不能になっている自分がいる。
自由を奪われ、外の世界から閉ざされた人達が隣国にはいる。
脱北という手段ではなく、北のすべての人々が解放される日を願いたいと思う。
最後のシーンの、おばあさんの笑顔が強く印象に残った。
【”地上の楽園、世界で一番立派な人が治める国”からの命懸けの脱出過程を描いたスリリング過ぎるドキュメンタリー映画。脱北者の若き女性が語る真の彼の国の姿にも戦慄する作品でもある。】
■最初に敢えて書くが、私はドキュメンタリー映画を観る際には、心の何処かに懐疑的なモノを持ちながら鑑賞するようにしている。
それは、且つて「主戦場」というドキュメンタリー映画を観た際に、衝撃と感銘を受けたのだが、その取材方法を知ってガッカリした苦い思い出があるからである。
ー このドキュメンタリーでは、高齢の女性と幼い女の子2人を含めた5人家族の命懸けの脱北する姿と、母と息子を彼の国において脱北した女性の二組の家族の姿が、描かれる。
そして、且つて彼の国を脱北したイ・ヒョンソさんが語る、マスゲームの実態なども、印象的な作品である。-
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・私は、数作であるが、彼の国に関わるドキュメンタリー映画を観て来た。その中では彼の国では”金”一族が神聖化され、”地上の楽園”と呼ばれ、日本からも多くの方々が且つて渡って行った事が描かれていた。
・だが、今作を観ると、矢張り彼の国は”地上の楽園”とは、程遠い状態になっているようである。
特に、現在、彼の国の痩せた主要人物の中で、一人だけ妙に太っている”トッチャンぼーや”が国を治めるようになってから、状況はドンドン悪化している事は周知の事実である。
”トッチャンぼーや”が世襲により、トップに立った時に、一番驚いたのは、彼の国の中で比較的自由思想を持っていた最高幹部の一人、張成沢の粛清である。”トッチャンぼーや”は、一番警戒する人物に経済政策の失敗の罪をなすり付け、酷いレッテルを貼り粛清した。
この事実は、当時驚きと恐れを持って日本でも報道されたので、覚えている人も多い筈である。その後、彼の国では”トッチャンぼーや”に表面上は逆らう人は居なくなった。
だが、経済政策の失敗により、彼の国は一層貧しくなっているが、”トッチャンぼーや”は、核開発に予算の多くを割き、飛翔体を定期的に日本に向けて撃ち始めている。
劇中でも描かれているように、”トッチャンぼーや”がトップに立ってから、街中で餓死者が出ているのにである。
・今作では、
1.高齢の女性と幼い女の子2人を含めた5人家族
2.母と息子を彼の国において脱北した女性の二組の家族の姿が、描かれる。
1.の家族は一番警戒すべき“彼の国と最も近しい、且つ脱北者を見つけると、年収の半額近くを貰えるという中国”を抜ける。当然、このドキュメンタリーでは中国を抜ける映像は殆どない。音声が少しだけである。
ベトナムの過酷な山越えをする辺りから、カラーで映像が映し出されるが、ベトナムも又“彼の国と近しい国”であり、次に向かうラオスも同様であるが徐々に家族を映すシーンが多くなってくる。
ここで、驚き、恐ろしかったのは高齢の母親はともかく、幼き娘二人が”トッチャンぼーや”のことを”世界で一番立派な人”と言うシーンである。洗脳の恐ろしさや、他の国の状況を知らない恐ろしさを感じたシーンである。
2.の家族の末路は悲しい。息子は鴨緑江で中国に捕まり、強制収容所へ送られた事がブローカーから連絡が入る。母は泣き崩れるのみである。
・韓国のキム・ソンウン牧師は、1.の家族の1万2千キロにおよぶ脱北を助ける。1000人以上の脱北者を支援してきた彼の行為は如何に宣教活動とは言え、危険過ぎる。だが、彼は中国にも入国出来ない状況下、”地下活動”の主要メンバーとして、活動を続けている。立派過ぎるが、彼の身の危険も考えてしまうのである。
なにしろ、”トッチャンぼーや”は兄弟でも暗殺してしまうからである。(この事件についても、ドキュメンタリー映画が製作されている。)
<この映画を観て、改めて思ったのは彼の国の現在の危険な状況である。彼の国は共産主義を謳っているが、実際は”独裁国家”である。
劇中でも言われているが、彼のナチスと同様の状況になっている。隣人が隣人をスパイとして密告し、報奨金を得る国。国のトップが餓える民の事を考えずに、飛翔体を撃ち続ける国である。
私は、現在の世界に置いて、一番の驚異の国はロシアでもイスラエルでもなく、核兵器開発に邁進する彼の国であると思っている持論を、このドキュメンタリー映画を観て確信したのである。>
脱北ルートの星屑
「ビヨンド・ユートピア 脱北」脱北を支援する牧師の奮闘と脱北を試みる5人家族の北朝鮮〜中国〜ベトナム〜ラオス〜タイの過酷な旅路を追った秀作ドキュメンタリー。この酷い状況を作り出したのはこの国にも責任があると心に留めながら観る。あと、脱北支援の組織も「地下鉄道」と呼ばれているんだな。
一家と牧師がラオスから小さい舟に乗ってタイへと渡るシーン、頭の中では中川敬の「バルカンルートの星屑」が流れていました。
F1レーサー以上に命がけの仕事
これは脱北者支援を続けるキム牧師はもちろん、撮影クルーも本当に命がけでこの映画を作ったのだということが、まぁ誰が見てもそれこそ寝ながら見ても解ります。逆に言うと、現実には無数の脱北失敗事例があり、その現場は恐らくは凄惨で残酷なものであろうことは想像する義務があると思います。非常に良質なドキュメンタリー映画です。
悲劇を消費するとは?
タリバンの処刑者リストに挙げられた男性が家族と共にアフガニスタンを脱出してヨーロッパに向かう過程を自身で撮影し続けた『ミッドナイト・トラベラー』(2021)というドキュメンタリーがありました。本作は、ある意味では更に過酷でリスクの高い北朝鮮から韓国への逃避行、いわゆる脱北を試みる家族を脱北ブローカーや協力者の手を借りて撮影し続けた記録です。
北朝鮮と韓国は勿論隣国同士なのですが、37度線の越境は余りに危険性が高すぎるので脱北には、北朝鮮 → 中国 → ベトナム → ラオス → タイ という複雑な経路を辿らざるを得ません。しかも、ラオスまでの国々は北朝鮮と国交があるので身分がバレると強制送還の憂き目に遭う可能性のみならず、人身売買市場に売られてしまうとんでもないリスクもあります。
その旅の途中で語られる北朝鮮の貧困の厳しさ、公開処刑の残忍さ、強制収容所の過酷さには声を失い、逃亡中の隠れ家の部屋で初めて見た液晶TV画面を「学校の黒板だと思った」と語ったり、幼い子供がポップコーンを見て「これは何?」と首を傾げる姿には溜め息が漏れます。
そうして塀の上を恐る恐る歩く様に行程を進める家族の姿に我々はハラハラするのですが、僕は徐々に妙な思いがして来ました。
「僕は、このプロセスをサスペンス映画として消費してるんじゃないのかな?」
注意していると、この作品自体も所々に音楽を挿入して政治の醜悪さや逃避行の切迫感を煽っている様にも感じました。「ドキュメンタリーは他人の不幸を食い物にしている」とはしばしば指摘される事ですが、世界で現在起きている事を多くの人に観て貰うには仕方ない事という一面もあるでしょう。う~ん、難しいけど、この作品は音楽なしで事実の鋭さで勝負すべきじゃなかったのかなぁ
祖国からの逃避行
北朝鮮から川を渡り、中国〜ベトナム〜ラオス〜タイ。タイまでに通過する国々は共産圏なので、捕まると北朝鮮に返されてしまう(そして厳しい懲罰をくらう)
合間合間に逃避行を手助けするブローカーの存在がある(画面には登場しないが、彼らは巨額の利益を得ているはず)
脱北の援助をしているキリスト教の牧師が、祖母と女児ニ人の一家を救うため奔走するパートと、単身脱北してきた女性が今回は息子を呼び寄せるパートの2つに分かれる
ドキュメンタリーだから画面も落ち着かず、主観的過ぎる映画かと思ったが、スマホの映像、赤外線カメラの映像等がうまく編集されている
北朝鮮という国に産まれ落ちたことを呪いたくなるような実情もイラストで解説されて、脱北者で今は北朝鮮の悲惨さを訴える活動をしている女性の体験談も凄絶で、北朝鮮は国ごとがアウシュヴィッツのような絶滅収容所だと評されることが、決して大袈裟ではないことがわかる
牧師の妻も脱北者で、笑顔が素敵な明るい人柄なのだが、台所で料理をしながら「麺を茹でた湯は北朝鮮では捨てない。水も配給制だから無駄に出来ない。茹で汁もスープのようにして飲む」と言っていて、まさに収容所のようだなと思った
脱北というエピソード2つだけでなく、共に語られる北朝鮮という国の解説が奥行きを与える。逃げた一家の、顔つきや国の指導者への評価の変化の対比も興味深い
何度か挟まれる隠し撮りされた北朝鮮の市場での庶民の素朴な笑顔、何かを拾い食いする孤児だと解説される痩せた子ども、ラストには中国国境から川越しに撮られた大きい荷物をおぶって何処かに歩いていく人々の姿…
生まれる場所は選べないけれど、少なくとも北朝鮮に生まれなくて良かったと心から思う
【映画公開時に見逃してしまい、今回ひょんなことから家の近くの二番館で三日間限定で公開されるのを知り、見てきました
接する機会があれば、ご鑑賞をお勧めします】
見てほしい…作品である
今年1月に封切られ、映画館で見たのは2月。つまり4カ月前にレビューを書かないままでいたのを、今更のように書いておく。
封切り時、映画評では一通り取り上げられてはいたものの、テレビでCMが流れるわけでもなく、一般にはそれほど作品の存在が浸透しないままだったのではないか。
苦労に苦労を重ねて、地獄から脱出する家族の姿をよくとらえ、彼らを食い物にするブローカー、韓国で手引きをしようとするキリスト教関係者ら…。
カメラは過不足なくそれらを追いかけ、見るものに届けている。
ドキュメンタリー、よくできた作品だと思う。
この先、配信されるのかは知らないが、機会があったら見てほしい。
国民がかわいそうとしか言いようがない
脱北を支援する韓国人牧師に密着した再現映像なし(アニメーションで再現)のドキュメンタリー。
脱北を試みる2組の話に加えて、脱北者の証言や隠し撮り映像で北朝鮮の現状も紹介される。
一般的なヒトよりは少し北朝鮮のことは知っている自負はあるのだが、水道がなくて水も配給制であったり、聖書を持っているだけで収容所送りになるのは、金日成の神話が聖書から引用しているので、それがバレないためとか初めて知ったことも沢山。
専門家が、北朝鮮は現代のナチスドイツだと言っていたが、脱北に成功した家族が、壁掛けTVを黒板と勘違いしたり、クラッカーやポップコーンを初めて食べたり、山の木々に感動するのは、北朝鮮での暮らしぶりがいかに酷いのかと改めて思い知らされる。
東側諸国の優等生だった東ドイツとの統合でもかなり大変だったのに、いつの日か朝鮮半島がひとつになったときは韓国も共倒れになるんじゃないか。とにかく、とんでもない国に生まれた国民が不憫でならない。
映像で残した意義は大きい。
脱北の過程、北のリアルな状況、高齢者の
国への想いを映像で残せたことが本作の
おおいなる意義だと思います。
とてつもない労力と工夫で映像にする
体制を構築し、そして撮影できた。
すごいとしか言いようがないです。
アニメ作品「トゥルーノース」の中で
語られていた北の状況を人間の口から
語られる映像はインパクト大です。
こういう方法でのみ我々は事実を知ることが
できないのですよね、残念ながら。
脱北のリアルを、北のリアルの一片を
本作でぜひ知ってほしいと思います。
過大な演出が入っていないことがより
現実を際立たせています。
おばあちゃんの妄信的な国(独裁者)への
信心が怖くて仕方ないです。
国は人。
人が変わらなければ国は変われない。
絶望します。
衝撃の脱北ドキュメンタリー!
2004年の小泉首相時代に拉致被害者の方が帰国して以降、他の方については前進していない。
2002年の小泉首相訪朝など、こういったニュースがメディアで報道されていた頃、
北朝鮮の内情を取り扱った報道や番組は今より全然多かったと感じる。
一方、今は情報が本当に少ないと思う。
ミサイル発射や金正恩にまつわる報道のみだから、北朝鮮の国内の状況について触れる機会がなかった。
そんな状況下での、本作鑑賞は衝撃的としか言いようがない。
・国民は大貧困
・道端で人がバタバタと普通に死んでいる
・水は捨てない
・人の💩を肥料としてつかうため、学校・会社に持っていかねばならない
・子どもの頃に処刑シーンを見せて恐怖を植えつける
・逃げたら捕まって殺される
・金正恩らの写真を家の中の最も良い場所に飾らなければならない
・↑そして、埃がついていたら罰せられる
・事実を捻じ曲げた教育と洗脳
そりゃあ逃げたくなる。
韓国にはすぐ行けない。地雷がめっちゃ埋まっているから。
中国→ベトナム→ラオス→タイ。タイで警察に保護されてやっと安全になる。
北朝鮮の人たちは、外部の情報に触れることはまずないが、
仮に触れる機会があった場合、その情報を疑うそうだ。
そうなってしまうまでの洗脳は、なんとも悲しく、切ない。
このドキュメンタリーに出てくる脱北者たちの言葉が非常に重い。
いろいろと考えさせられる作品だった。
こういう作品はもう撮れないんじゃないかと思うほどすごい。
必見だと思う。
でも、ちょっと待て
人権が存在しない、或いは軽視されている社会は、いつの時代も悲惨。しかしそれは、現代のこの社会に生きているからこそ抱ける感覚だろう。外部からの情報が遮断され、そこが世界の全てとなれば、一人のために国民が犠牲になる世界も当たり前になる。この映画は脱北した人たちの価値観が変化していく様を、インタビューを通して比較的丁寧に撮っていたように感じられて好感を持てたが、最後の高層ビルを観て圧倒されてるハルモニのシーンは(そこに我々は優越感をくすぐられたり、誇らしい気分になるかもしれないが)その描き方はちょっと違うだろうと思った。これだと民主主義や資本主義最高!みたいな結論になってしまう(断っておきたいが、社会主義や共産主義が良いと言っているわけではない)。韓国がユートピアなら(日本もそうだけど)あんなに自殺率高くならんでしょう。脱北に成功したらめでたしめでたし、ではない。でも2時間でその後生活を追うのは難しいし、ゲスな言い方をすれば「撮れ高のある映像」にはきっとならないので、難しいですね。
まだまだ闇深い北朝鮮
僕は北朝鮮のことを本当に何も知らないのだと思い知らされた。
この映画で語られたことは昔のことではなくつい最近のことだなんてびっくりだ。
人間が皆、自由に生きられるように世界がなって欲しい
アメリカ側の立場で制作された作品 果たしてどちらが洗脳させられてい...
アメリカ側の立場で制作された作品
果たしてどちらが洗脳させられているのか?
・脱北の旅路を映像で残していること。
・なぜ今脱北をする必要があるのかを理解すること。それは過去日本が朝鮮半島を自分の土地にしたことから始まることも説明されている。
・日本が戦後復興したのは第二次世界大戦後に、日本がアメリカに負けて、朝鮮半島が分断されたことで起こった朝鮮戦争の利益によってということも。東京タワーは朝鮮戦争の戦車でてきている。
・今もなお、アメリカとロシアの立場で世界が動かされているという事実。
・牧師さんの他者への愛
この作品を見て、ただ単に北朝鮮が怖いという恐怖というイメージだけを感じることと脱北する家族の気持ちに寄り添った感情が心を動かすだけでなく、今もなお日本人でさえ、戦後アメリカの立場に立っているということを感じさせるような映画だった。
(USAという歌がヒットしたことなど)
長きにわたる脱北ルートを映像を通して見られ、家族の感情を身近に感じるという点でとても良かったです。
そして、日本にいる在日朝鮮人の方達は日本に職を求めてやってきた主に今で言う韓国の人たちが多いこと、中国にいる在日朝鮮人は北朝鮮側の人たちが多いことなど、いろんな情報を知るきっかけになると良いなと思いました。
旅行していると日本では、結構良い観光地なのになかなか知られていないという国がある。そこは共産主義の国が多いと感じています。
日本人もある意味偏ったプロパガンダを見せられているのでは?と感じる時があります。
自分の目で見て自分で考える必要があり、いつの時代も奔走させられるのは一般市民ということを考えなければならないと改めて感じました。
外の世界を知らないということ
タイトルにもなっているユートピア(理想郷)。最も私たちからすればそれは北朝鮮以外の世界を指すのだが、北朝鮮にいて北朝鮮以外の世界を知らない人たちにとっては、彼らが暮らすその北朝鮮こそがユートピアだと思い込まざるを得ないのだ。
それは作品で登場する脱北家族のひとりである老女が取材陣に語る場面で色濃く現れている。老女は祖国を信じ、金正恩を崇拝していた。将軍様がご立派なのに国民の努力が足りないから国が発展しないのか…とまで語っていた。(娘が横から「そうじゃないでしょ」と指摘する。)
そもそも北朝鮮では情報規制がされているため、国民は政府が操作した情報しか与えられない(見られるテレビは国営放送のみの1チャンネル)。そのため北朝鮮以外の国では飢餓の蔓延や孤児の大量発生があるなど、北朝鮮がいかに恵まれた国なのかということが植え付けられてしまうのだ。そして、外の世界を知り、外の世界と繋がり、外を目指す者は厳しく処分されるシステムだ。
北朝鮮の人口は約2500万人とされ、韓国の約半分。人口の確からしささえ疑ってしまうが、このうち2023年に韓国入りした脱北者は、前の年の3倍にあたる196人だったそうだ。(コロナ禍での行動規制が緩和されたことが背景。)
脱北を試みたが叶わなかった人たちも多いだろう。それでも、本当に一握りの人たちだけが行動に移すことができるのだと思った。それ以外の多くの人が北朝鮮以外の世界を知ることなく一生をそこで過ごす。
無事に脱北した人々の幸せを願う気持ち、脱北を望むもそれが叶わない人やそもそもあえて脱出を願わない人たちの葛藤、変わらない北朝鮮社会への怒りや失望…色々な想いが重なった作品だった。
映画を観に行った3月1日は、1919年に三・一独立運動があった日。過去も今も未来も、日本が関わっていること(関わってゆくこと)を忘れてはいけない。
専制主義体制に盲従する人民を批判できるのか
北朝鮮の人権状況を世界に発信
この映画はメインに脱北の実態を据え、その間に北朝鮮がこのような国家になるまでの歴史的な背景、北朝鮮の内情、特に人々の生活の実態さらに北朝鮮に関する研究者の発言も交えて構成している。こうした要素を取り込むことにより、北朝鮮のことを知らない人にもなぜ大きな苦難を強いられても脱北するのか分かりやすくしている。今更、脱北者から北朝鮮の人民が置かれた状況を伝えられても大きな驚きはない。それでも金王朝がいかに人民を統制しているかを目の当たりにすると言葉がでない。徹底的に外部との接触を断ち切り、独裁体制を維持し易い世界観を人民に信じ込ませて自国をユートピアだと自覚させる。民主的な国家では信じえない、ジョージ・オーウェルの小説「1984」でさえも描き切らないデストピア世界が実在することを理解させたいがためのつくりなのだろう。
非現実的な崩壊シナリオ
いずれ崩壊すると言われ続けるこの体制が崩壊しないの一端を脱北者家族の言葉が雄弁に伝える。メインストーリー上の三世代の家族の80歳の老女と幼い姉妹の脱北後も容易に解けない洗脳の呪縛は、これが過酷な体制に適応して生き抜く術であったことの証左だ。内部崩壊なんてシナリオが現実化するというのは妄想に過ぎない。
外界の価値観では測れない人民の暮らしぶり
登場人物が語る生活のレベルは壮絶だ。ただ、これが平壌に住む核心層の生活となると大分違うだろう。映画の登場人物は核心層ではないことが想像される。
脱北ブローカーという必要悪
この映画ではキム牧師の活動を支える2つの存在を密かに紹介している。いずれも今後の活動にも差し支えないように顔や場所を特定されないようにしている。一つはブローカーと呼ばれる脱北で金儲けをする人たちだ。ブローカーも危険を冒して活動しているので、金を無心するのは仕方ない。しかしながら、ここでも詐欺がいるというのにはやるせない気持ちになる。詐欺かもしれないと疑いながらも自ら脱北したあと稼いだ身銭をはたいて残した家族の脱北を見ず知らずのブローカーにの託す心境は想像してもしきれない。
体制に盲従する人々を批判できるのか
巧妙な仕組みを三代にわたって築いて来た体制の転覆を計ろうとする人々がいないことに疑問を持つ人は多くいるだろう。ただ筆者が問題意識を持つのは翻って我が国はどうだろうか、民主主義を掲げる国々、なかんずく西欧諸国はどうだろう。我が国では戦後長く自民党体制が続いてきた。幾度かの政権交代が実現したことはあった。それでも非自民政権が長続きした例は皆無である。政治に希望を見出せない、関心がない人々が多く、選挙で投票率が50%に満たないことに驚く人はいない。有権者の過半数の支持を持っていない政治家が大手を振っている。ロッキード事件の賄賂、年金の無駄づかい、リクルート事件、そして政治パーティーのキャッシュバックと脱税と政治家の悪行を挙げればキリがない。それでも多くの国民は毎日規則正しく労働の義務、納税の義務などを果たして生活している。納税を怠れば脱税、追徴課税などの制裁は免れない。碌な説明も出来ない政治体制に声を挙げない国民は、暗黙の政権支持をしている自覚を持っていない。政権に抵抗しないで黙々と通常の生活していることに専念している国民は、北朝鮮の人民と本質的に異なっていると断じられるのか。生まれてくる場所が違うだけで背負う人生の不平等をいつまでもも放置しておくこともまた非人道的だとあらためて考えさせられる。
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