劇場公開日 2024年1月12日

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「題材の衝撃性のみならず人間性が深く描かれた秀作」ビヨンド・ユートピア 脱北 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0題材の衝撃性のみならず人間性が深く描かれた秀作

2024年1月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

生々しい手触りを持った脱北ドキュメンタリーで、自分にとっては相当な衝撃作だった。まずカメラの被写体となるのは韓国で脱北者の支援を行うキム牧師なのだが、ことの深刻さとは裏腹に、牧師はいつも温厚ででっぷりとお腹が出た体型。その佇まいからして癒しがある。そんな矢先、中国国境の山奥で幼児と高齢者を含む5人家族が見つかり、ブローカーからは彼らを支援するか否かの打診が。本作はブローカー数十人や支援者の手を介し、彼らが東南アジア経由の厳しいルートで脱出に挑む姿を記録した作品だ。115分間、無駄なく情報が散りばめられ、北朝鮮の歴史や文化に関する知識まで盛り沢山。加えて特筆すべきは幼児と祖母のリアクションで、つまるところ、国家政策で叩き込まれた思想と外界の現実とがあいまみれ、彼らの中で何かが静かに崩壊していく様子が、最も純粋な表情として伺えるのだ。かくも”ヒューマン”が刻印された一作に成り得ているのが尊い。

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牛津厚信