あんのことのレビュー・感想・評価
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重いが、見て損はない
映画館にて鑑賞しました。
主人公自身は若干やさぐれてこそいるものの、人の優しさに応えられるし助けの手をしっかりと掴めるんですよね。(流されやすいとも言えますが。)だからこそあの母親に利用されちゃうんですよね。
また、その母親を演じた河井青葉さんすごいですね。演技力が凄すぎて、ヘイトを一身に背負っているな、と思いました。久しぶりになかなか腹が立つ人物でした。
こういった雰囲気の家庭の空気感の再現が凄いなぁ、と思いながら見てしまいました。
人の優しさやぬくもりは、人が成長していく上で大切ですね。
完全に余談ですが、佐藤二朗さんがこの役でヨガをやっていると、その瞬間だけコントっぽく見えてしまうのは、自分の心の問題だなと思いました笑。
この映画の感想とは直接異なりますが、こういう映画を見ていると生活保護ってなんのためにあるんだと思いつつも、そんな簡単に認められるものでもないよなぁ、とも思ってしまいます。生活困窮者を救うことができるセーフティネットとはどういったものなのだろうか、と無力感は感じてしまいます。
ああいった生活保護を断られるシーンは、こういった映画の中では、困っている状況の人物を助けない公的機関、それにより苦しい状況に置かれる主人公、という場づくりに利用されているな、とも感じてしまいます。
大丈夫…
世の中は優しいのか、過酷なのか
杏さんはどんな気持で大事な選択をしたのか
そばにいた場合に「大丈夫」と声をかけてあげられていたか
そんな答えの出せない問いを抱えながら劇場を出ました。
「コレさえなければ」って要因は多くの場合一つか二つだったりするんじゃないでしょうか。
彼女には数多くのことが「積み重なり」すぎていました。「大丈夫」とあたたかく受け止められることで、介護する相手に「大丈夫」と言ってあげられるまでになった彼女なのに。
間違いなく、彼女にとっては世の中は残酷すぎるものでした。
そんな彼女が実際もがき苦しみながらやりたいことを見つけて前を向いていたこと、そういう存在が世の中に彼女一人ではないこと、そういう存在に社会が寄り添ってあげられていないことは、せめて多くの人が知るべきなのかなと感じました。
そして、河合優実さんはそんな杏さんに真摯に向き合った一人になっていたような気がします。
あんの揺れ動く心情に、こちらも心が動かされる
河合優実はずっと着目していて楽しみにしていた一作。
映画としては、わかりやすい展開、俳優陣の過剰すぎる演技、ちょっとこじつけっぽい最後と、お世辞にも上手い作品とはいえないものの、作品タイトルの通り、あんに尽きる作品。
河合優実の悲喜こもった演技、表情、仕草に惹かれた2時間であった。自然と感情移入され、苦難に見舞われるたびに、心がざわつく。
苦難の中で訪れる少しの幸せなときの表情が最高である。
他の俳優陣では、佐藤二朗らしさが良かった部分もあったが、全体でみると佐藤二朗ではないほうが良かったと思うし、稲垣吾郎も役柄にはあってはいなかった。
ただ、そのおかげで、河合優実の魅力が目立ったのかもしれない。
テーマとして、いろんな人間の欲望が混ざり合っていた。必死に生きようと思う欲望、助けたいと思う気持ち、報われたいという渇望。その欲望で社会は成り立っており、その狭間であんのような人がいるということ。
つらい現実を浮き彫りにする絶望系
観てよかった。
救いがなくすごく凄惨な内容だったが、本当にあった事件を基に脚色したドラマらしく。
真正なクズ毒親に浸食された子供の心が、一気に崩れる姿を描いていた。
『告白』『由宇子の天秤』などに似た系統。
「絶望系」とでもいおうか?
観た人間に「あなたはこの現実をどう考えますか?」という問いと、「こんな環境に置かれた子供たちに『自己責任』と正義感を振りかざして言い放つ人々が正しいと思いますか?」という疑問と。
そんな主人公を演じた河合優実が神がかっていて、迫真の演技だった。
河合優実が凄い
ドリルが進んでいたのに…
なんともやるせない。
あん以外の、ほとんどの人物が嫌いでした。
いちばん嫌いなのは、母親ですが、祖母にも腹が立ちました。まだ65歳なら、あんと、家を出て二人で暮らせばいいのに。シャキッとしろよ‼️と、怒鳴りつけたくなりました。
あの家のゴミを全部捨てたかった。
多々羅にも腹が立ちますが、給与明細を自宅に送って、あんの居場所を母親にバラしておきながら、対して謝りもしない介護施設の所長にも腹が立ちました。
せっかく夜間中学に入って、勉強を頑張っていたのに。
神様はいないのか。
実話を基にした作品がこんなに救いがないのなら、やっぱり、私は、後味の良いように作られている作り話ばかり観てきているのかもしれない、と思いました。
あんの記事も、泣きながら読んで終わりにしている私も、彼女を見殺しにしている一人なのでしょう。
何ができる?
何をするべき?
答えはすぐには出ない、一生、出ないかもしれない。
でも、あんが生きていたことは、ずっと忘れないでいよう、と、心に誓いました。
事実は事実として。
実話に基づいたフィクションということで。
母親役の河井青葉の演技が、めちゃくちゃ良かった。彼女がいなかったら、成り立たない作品だろう。彼女の演技は映画史に残してほしい。
自分が、いわゆる「標準的な」環境で育ててもらい、こんな過酷な環境下になかったから、こんな生活は想像できないし、もし、目の前にいたら手を差し伸べられるのだろうか。
多々羅のように手を差し伸べて搾取し、あるいは、桐野のように正義感故の行動によってその逃げ場を奪い、あるいは、役所の窓口のように四角四面な対応をし、あるいは、その存在すら見もせずに過ごすのだろうか。
答えは見つからないけど、この世界のどこにでもこんな事があるのだと、心に留めておくべきなのだろう。
正直、似たような作品で『誰も知らない』があったが、そちらの方が完成度が高かったような気がしてしまった。すみません…
河合優実を観るための作品
御多分に洩れず、「不適切にも程がある」で知った女優、河合優実。これまたとんでもない若手が出てきた❗️と歓喜してたら主演映画と。これまた何と絶妙なタイミング❗️
なんてーふしぎなーちからー😁
河合優実はドラマでもそうだったが、あまり笑顔を見せない。ホントに、記憶の片隅にある、山口百恵を彷彿とさせる表情。
そんな彼女が、あんとして、ネグレクト売春薬物から只管に更生に励む日々を綴った、日記の様な映画だった。
正直、彼女だけで充分だった。
脇を二朗と吾郎が支えるのだが、
二朗のいつもより抑えた演技は、それでもまだ抑えが足らない気がする。恐らくは彼のパートは彼任せであろうが、もっと凄みと感情の昂りを抑える感じにして欲しい。同じセリフを4回言うシーンは若干暴走気味。
吾郎はいつもの感じだね。飄々として裏で何かを企む。今回はそれでも、あんの更生を一番応援してくれてた理解者であるから、もっと二朗とコミュニケーションがあっても良かった。
いつもならこういう脇の人が終始寄り添うものだが、それすら阻んでいた新型コロナのパンデミック。
急とはいえ子育てするあんには、あまりにも過酷な現実。そこに飲み込まれていった人間は、彼女だけではなかったはず。
「薬物依存の女性が」云々というニュースが流れても、自分は眼もくれない。そんなの自己責任でしょ、としか思わないだろうが、そのバックポーンや「マンボウ」が及ぼした影響は知る由もない。「密です」と言って遠ざけて良い話ではない。
物憂げな河合優実を、これ以上なく浴びた。
また目が離せない女優が増えた。
あの母親は、
「52ヘルツのクジラ」を想起した方も多いかな❓
そして唐突な早見あかり。
二朗と吾郎は逆でも良かったかもね。
上手くいっていたことが一つ崩れると
しばらく出番の少ない作品ばかりだった河合優実さんの(個人的に)待望の単独主演。
だが、重い。
予告編でやんごとなき内容なのは分かっていたし、河合さん迫真の名演技だったけど、思ってた以上に重い。
河合さん主演てことで、実話ベースってこと以外の予備知識なかったから、多々羅さんがタバコポイ捨てしたり道に唾吐いたりするのを見て、けっこう前の話なのかと思ったら、わりと最近なのか。
確かにリスカなんて現代の言葉だよなぁ。
観ていて辛くなるような出来事ばかりで、なんで彼女だけなのかと怒りのようなものが込み上げてくる。
母親が元凶なのは確かなのだけど、必死に現状を変えようと頑張っているのに、次々と周りの大人にぶち壊され、心の拠り所を失っていく杏に胸が痛い。
コロナ禍がなければ、介護施設と学校が救いになったかもしれないのに。
じいちゃんの車椅子アタックが、杏の更生を物語っていたような気がする。
積み上げてきたものを自ら壊してしまった日記の最後の◯が、なんとも悲しい。
河合さん主演というだけでなく、きっとまた観てしまいそう。
コーヒー買ったけど一口も飲めず、終映後に一気飲み。
やるせない怒りと悲しみ
売春や麻薬の常習犯である21歳の香川杏は、母親と祖母と3人でゴミ屋敷で暮らしていた。子どもの頃から母親に虐待され続けた彼女は、小学4年生から学校に行けなくなり、母親から強要され12歳から体を売って金を家に入れていた。刑事・多々羅に捕まったことをきっかけに更生しようとした杏は、多々羅やジャーナリスト・桐野の助けを借りながら、介護の仕事を始め、母親から離れるため新たな住まいでの更生生活を始めた。しかし、突然のコロナ禍で仕事が無くなり、そして多々羅の逮捕、毒親に見つかり・・・杏はどうなる、という話。
実話に基づく作品とのことで、衝撃を受けた。
沖縄の貧困問題を描いた、花瀬琴音主演の「遠いところ」を連想してしまい、やるせない怒りと悲しみが湧いてきた。
杏役の河合優実目当てでの鑑賞だったが、彼女は期待どおり素晴らしかった。母親役の河井青葉も狂気の毒親ぶりが素晴らしかった。
多々羅役の佐藤二郎は良い人だと思ってたのに、うーん、ちょっとガッカリかな。
これも日本の現状。自分が何も出来ない無力さを感じながら、知ることから始めないといけない、と思わせてくれる。
なるべく多くの人に観てもらいたい作品です。
違和感。
監督の作品だからという理由のみ、貧困系という以外の前情報なしで鑑賞。
うーん、言いたいことは分かるのだが弱い。紙巻タバコを選択している時点で、今の時代とのミスマッチを感じる。そういう人間としてデフォルメして描いているのだとは思うが、フィクションでもリアルに寄せないと、違和感がメッセージを凌駕してしまうのではないだろうか。
社会的弱者の行き着く先(職場)が介護職ってのも、定番中の定番だけど。描きやすいんだろうなと思う半面、チープな印象を受けてしまう。
主人公・あん。毒親、貧困の連鎖、救われない者はどの時代においても確かに存在する。
若い女性の方が注目されやすく、同情を得やすいのも確か。
同じように救われず成人した、世間から忘れ去られた男性も無数に存在するのだよな、とも思う。
近しいテーマでは昨年鑑賞した「遠いところ」の方が、でーじ良い、と感じた。
ここから目を背けてはならない
予告から、マスコミの是非を問うような作品かと思って鑑賞しましたが、そんな生やさしいものではありませんでした。衝撃に打ちのめされ、胸に強く刻まれるような作品でした。
ストーリーは、水商売の母親と足の悪い祖母と3人で暮らし、子どもの頃から体を売ることを母親に強要され、売春と麻薬の常習犯となっていた香川杏が、親身になってくれる刑事・多々羅との出会いをきっかけに更生をめざし、少しずつ生活も軌道に乗り始めた頃、またしても周囲の状況により苦しい生活を強いられていく姿を描くというもの。
冒頭からあまりにも重く苦しい描写が続き、胸を締め付けられます。子どもは親を選べないとよく言いますが、“親ガチャに外れた”という言葉では表しきれない、あまりにも理不尽な惨状がまざまざと描かれます。死んだ目をして、心をなくして、ぼろぼろになりながら体を売った金を毒親に渡す杏の姿に、胸を抉られます。
そんな杏に寄り添い、更生の道を示す多々羅の存在が、彼女の大きな支えとなっていきます。杏にとって、初めて信頼できる大人との出会いだったのでしょう。多々羅を介して、ジャーナリストの桐野、更生をめざす仲間、職場の理解ある上司と、人の温かさに触れ、少しずつ心を開き、懸命に頑張る姿が胸を打ちます。
それなのに、あれほど親身になってくれた多々羅の裏切りが、杏を激しく動揺させ、心を深く傷つけます。また、毒親はいつまでも杏の足を引っ張り続けます。親の愛情を知らずに育った杏が、そんな親でも捨てきれず、他人に押し付けられた子どもにも精いっぱいの愛情を注ぐ姿に胸が熱くなるとともに、そこにつけ込む母親の非人間性に吐き気がします。新型コロナが蔓延する中、心を通わす相手もなく、誰にも頼れず、孤独と不安が杏をさらに追い詰めていきます。
そんなさまざまな要因が重なって、ついに杏の心の糸は切れてしまったのでしょう。薬に逃げ、多々羅に救済され、裏切られ、それでも歯を食いしばって生きていたのに、母にまたもや踏みにじられ、再び薬に手を出した杏。最後は自分にさえ絶望し、もはやこの生き地獄から逃れる術は、自死しかないと思ったのでしょうか。彼女の心中を思うと言葉も出ません。
本作は、事実をもとにしているということですが、どこからどこまでが事実なのかはわかりません。でも、どのシーンを一つ切り取っても、おそらく日本のどこかで今も続いている事実でしょう。多くの日本人が気づかない、気づこうともしない、この国の現実や闇をまざまざと見せつけられた思いがします。かといって何の行動も起こしていない自分には、多々羅の行いを責める資格すらないように思います。虐待やヤングケアラーの問題が叫ばれる昨今、せめて自分の手の届く範囲だけは、できるだけの優しさを届けたいと思います。
主演は河合優実さんで、魂を揺さぶるような渾身の演技に胸を抉られます。脇を固めるのは、佐藤二朗さん、稲垣吾郎さん、河井青葉さん、早見あかりさんら。中でも、河井青葉さんの壮絶な毒親ぶりは必見です。
人を救うとは?What does it mean to save someone?
観ていて苦しかった。
毒親なんてレベルじゃない。
主人公の女性は
その優しさゆえ、
一人でそこから抜け出せないでいた。
誰かを放っておけない分、
自分を犠牲にする。
だから彼女は
自分に差し伸べられた手を握るのに
時間がかかった。
人から求められた手は、
何をさておいても握り返し
手放さないのに。
主人公の誠実さに、
心が痛くなる。
どこかで強さを育む時間があったら、
彼女の優しさには誰かを救う、
未来があったのに。
いや、一人救っていたか。
理不尽を見せつけられた。
ちくしょう。
It was painful to watch.
This was beyond just having toxic parents.
The female protagonist, because of her kindness,
couldn't escape from there on her own.
She sacrificed herself because she couldn't abandon anyone.
That's why it took her time to grasp the hand extended to her.
Whenever someone sought her hand,
she would grasp it back without hesitation and never let go.
The protagonist's sincerity makes my heart ache.
If she had time to cultivate some strength,
her kindness could have saved someone in the future.
No, she had already saved one person.
I was shown unfairness.
Damn it.
実話ってことが怖い…
本当にこんなひどい母親がいるのか、信じられない。
おばあちゃんは杏のことを庇ってくれたという台詞があったが、
もしかしたら、
昔は母親を虐待していたのかもしれないと疑った。
よく「負の連鎖」の話は耳にするから。
多々羅刑事に出会い、やっと人間らしい生活を手に入れたと思ったときに
コロナが蔓延。
ふと思い出したのが「特別定額給付金」のこと。
この家族受け取ったのだろうか?
間違いないのは、
杏は絶対に受け取ってはいないこと。
流れてくるニュースも理解してなかっただろう。
逆に、給付金を利用して儲けていた輩もたくさんいた。
本当にやるせない…
簡単に言葉にはできないが、
実際にこのような子がいたということは現実なんだ。
辛い映画ですが、
杏を演じた河合優実さんは素晴らしいと思いました。
モデルとなった実際いた方と、手を取るように演じたと
パンフレットには書かれていました。
日本のどこかで杏のような子は、他にもいるのかもしれない。
私たちはそれを知らないで生活してます。
だって、こうやって映画を見る生活を送っているのだから…。
でも、まずは知ること。
それで、今はいいのか、正直わかりません。
◯の積み重ね
売春や麻薬の常習犯である21歳の女性が向き合ってくれた刑事に薬物依存症回復団体を紹介されて前を向く話。
客がお薬で泡を吹いたことで警察の厄介になった主人公の前に、他とは毛色の異なる刑事が現れて、薬と売りをやめる決意をするストーリー。
THE毒親の紹介で12歳の時に初めて売春をし、薬に溺れつつ稼いだ金は親に奪取されという凄惨な家庭環境に胸が苦しくなる。
まともに学校にも行かず、それしか知らない暮らしに救いの手を差し伸べ寄り添ってくれた刑事、そして彼の取材をしていた記者。
そして抜け出す為の努力の前にも障壁として立ちはだかる母親。
更には頼れる人がいなくなり、そんな中訪れるパンデミックによる生きにくさとかタイミングが辛すぎる。
何もしなかったクセに膝から落ちトンチンカンなことを言う記者とか、何もわかっていない能天気なヤツで締めるのも、胸クソ悪さをダメ押しされた感じでたまらなかった。
あんのこと、忘れない
*
主人公のモデルは朝日新聞の記事に
登場したハナ(仮名)
幼少期からの虐待や薬物依存を乗り越え
介護福祉士になる夢ができた
夜間中学で学ぶはずだったが
コロナ禍に前途を阻まれ、
2020年春25歳で命を絶った
*
これが現実に起きた話だなんて
信じたくない…
なぜ毒親は存在するんだろう…
その連鎖はなぜ止まらないのだろう
普通に学校へ行って、友達をつくって、
夢を見つけて勉強に励む…
そんな当たり前の権利が彼女には
与えられなかった
自分の身体と引き換えに
ただお金をつくって渡すだけの
ほんの一筋の光さえも見えない現実に
風穴を開けて光を見せてくれたのは多々羅だった
多々羅は杏のことを思ってサポートした
杏の目は生気と光を取り戻していった
初めての給料で杏は手帳を買った
なんでもない「普通」が輝いてみえた
おばあちゃんにケーキを振るまった
なんだか「普通」の家庭にみえた
ラーメン屋さんで3人でご飯を食べたり笑ったり
カラオケではしゃいだり安らぎの時間があった
その様子を見ていてずっとずっと
これが続いていったらいいのにと思った
このひとときは紛れもなく幸せだった
多々羅が居なくなってから
少しずつ変わって行く現実…
桐野はそのことに後悔のようなものを
抱いていたようだけど
彼は彼の仕事を全うにこなした
ただそれだけ
生活の基盤は整っていたから
多々羅や桐野が居なくなっても
杏は前に進んでいけるはずだった
しかしそれはコロナ禍によって
どんどんと破壊されていく
ほんとにコロナ禍が憎くて仕方ない…
彼女は犠牲者だ
介護施設での別れのシーン
お金や物ではない
「心」を、ただ、自分の存在を、
頼ってくれた時は嬉しかっただろうな
シェルターで暮らしていた
隣のシングルマザーから子の子守りを頼まれ
いきなり母になってしまったのは驚いたけど…
そんな状況も杏の持ち前のひたむきな努力と
責任感と前進力でこなしていっていた
すっかりお母さんのようになっていた
自分の親のようにはならないと覚悟して
精一杯の愛情を注いだのだろう
適応能力が並大抵ではない…
人と人との最後の絆のようなものが
取り上げられてしまい
またもや努力が泡となって消えた
もうやめてくれ…
一体彼女が何をしたというのだろう
ああ、あの日に逝ってしまったんだ…
頑張れって、ありがとうって、
空が応援してくれたあの日に逝ってしまったんだ…
ただただ絶望に暮れてしまって
涙すら出てこない
ただただ、たらればを繰り返す…
繰り返したって彼女は帰ってこないのに
*
杏がいまどんな気持ちで何を感じているのか
心の描写が細やかに表現されていて
すごくわかりやすかった、痛いくらいに…
とても重いテーマだったけれども
河合優実さんが尊敬の気持ちを込めながら
実在していた彼女を生き返してくれたから
目を背けずに最後まで見届けることができた
彼女の存在を知ることができてよかった
今日もどこかで彼女と同じような苦しみを
強いられている…その現実を胸に刻む。
*
多々羅も佐藤二朗さんしか考えられない
「タバコくらい吸っとけよ!」すこし笑った
杏を支えたい、助けたい、その気持ちは本心…
涙しながら彼女を慰めていた姿は嘘じゃない
だからこそ
自分の心の闇にもきちんと目を向けてほしかった
*
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