あんのことのレビュー・感想・評価
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実話ってことが怖い…
本当にこんなひどい母親がいるのか、信じられない。
おばあちゃんは杏のことを庇ってくれたという台詞があったが、
もしかしたら、
昔は母親を虐待していたのかもしれないと疑った。
よく「負の連鎖」の話は耳にするから。
多々羅刑事に出会い、やっと人間らしい生活を手に入れたと思ったときに
コロナが蔓延。
ふと思い出したのが「特別定額給付金」のこと。
この家族受け取ったのだろうか?
間違いないのは、
杏は絶対に受け取ってはいないこと。
流れてくるニュースも理解してなかっただろう。
逆に、給付金を利用して儲けていた輩もたくさんいた。
本当にやるせない…
簡単に言葉にはできないが、
実際にこのような子がいたということは現実なんだ。
辛い映画ですが、
杏を演じた河合優実さんは素晴らしいと思いました。
モデルとなった実際いた方と、手を取るように演じたと
パンフレットには書かれていました。
日本のどこかで杏のような子は、他にもいるのかもしれない。
私たちはそれを知らないで生活してます。
だって、こうやって映画を見る生活を送っているのだから…。
でも、まずは知ること。
それで、今はいいのか、正直わかりません。
◯の積み重ね
売春や麻薬の常習犯である21歳の女性が向き合ってくれた刑事に薬物依存症回復団体を紹介されて前を向く話。
客がお薬で泡を吹いたことで警察の厄介になった主人公の前に、他とは毛色の異なる刑事が現れて、薬と売りをやめる決意をするストーリー。
THE毒親の紹介で12歳の時に初めて売春をし、薬に溺れつつ稼いだ金は親に奪取されという凄惨な家庭環境に胸が苦しくなる。
まともに学校にも行かず、それしか知らない暮らしに救いの手を差し伸べ寄り添ってくれた刑事、そして彼の取材をしていた記者。
そして抜け出す為の努力の前にも障壁として立ちはだかる母親。
更には頼れる人がいなくなり、そんな中訪れるパンデミックによる生きにくさとかタイミングが辛すぎる。
何もしなかったクセに膝から落ちトンチンカンなことを言う記者とか、何もわかっていない能天気なヤツで締めるのも、胸クソ悪さをダメ押しされた感じでたまらなかった。
あんのこと、忘れない
*
主人公のモデルは朝日新聞の記事に
登場したハナ(仮名)
幼少期からの虐待や薬物依存を乗り越え
介護福祉士になる夢ができた
夜間中学で学ぶはずだったが
コロナ禍に前途を阻まれ、
2020年春25歳で命を絶った
*
これが現実に起きた話だなんて
信じたくない…
なぜ毒親は存在するんだろう…
その連鎖はなぜ止まらないのだろう
普通に学校へ行って、友達をつくって、
夢を見つけて勉強に励む…
そんな当たり前の権利が彼女には
与えられなかった
自分の身体と引き換えに
ただお金をつくって渡すだけの
ほんの一筋の光さえも見えない現実に
風穴を開けて光を見せてくれたのは多々羅だった
多々羅は杏のことを思ってサポートした
杏の目は生気と光を取り戻していった
初めての給料で杏は手帳を買った
なんでもない「普通」が輝いてみえた
おばあちゃんにケーキを振るまった
なんだか「普通」の家庭にみえた
ラーメン屋さんで3人でご飯を食べたり笑ったり
カラオケではしゃいだり安らぎの時間があった
その様子を見ていてずっとずっと
これが続いていったらいいのにと思った
このひとときは紛れもなく幸せだった
多々羅が居なくなってから
少しずつ変わって行く現実…
桐野はそのことに後悔のようなものを
抱いていたようだけど
彼は彼の仕事を全うにこなした
ただそれだけ
生活の基盤は整っていたから
多々羅や桐野が居なくなっても
杏は前に進んでいけるはずだった
しかしそれはコロナ禍によって
どんどんと破壊されていく
ほんとにコロナ禍が憎くて仕方ない…
彼女は犠牲者だ
介護施設での別れのシーン
お金や物ではない
「心」を、ただ、自分の存在を、
頼ってくれた時は嬉しかっただろうな
シェルターで暮らしていた
隣のシングルマザーから子の子守りを頼まれ
いきなり母になってしまったのは驚いたけど…
そんな状況も杏の持ち前のひたむきな努力と
責任感と前進力でこなしていっていた
すっかりお母さんのようになっていた
自分の親のようにはならないと覚悟して
精一杯の愛情を注いだのだろう
適応能力が並大抵ではない…
人と人との最後の絆のようなものが
取り上げられてしまい
またもや努力が泡となって消えた
もうやめてくれ…
一体彼女が何をしたというのだろう
ああ、あの日に逝ってしまったんだ…
頑張れって、ありがとうって、
空が応援してくれたあの日に逝ってしまったんだ…
ただただ絶望に暮れてしまって
涙すら出てこない
ただただ、たらればを繰り返す…
繰り返したって彼女は帰ってこないのに
*
杏がいまどんな気持ちで何を感じているのか
心の描写が細やかに表現されていて
すごくわかりやすかった、痛いくらいに…
とても重いテーマだったけれども
河合優実さんが尊敬の気持ちを込めながら
実在していた彼女を生き返してくれたから
目を背けずに最後まで見届けることができた
彼女の存在を知ることができてよかった
今日もどこかで彼女と同じような苦しみを
強いられている…その現実を胸に刻む。
*
多々羅も佐藤二朗さんしか考えられない
「タバコくらい吸っとけよ!」すこし笑った
杏を支えたい、助けたい、その気持ちは本心…
涙しながら彼女を慰めていた姿は嘘じゃない
だからこそ
自分の心の闇にもきちんと目を向けてほしかった
*
こんな胸糞な映画あるだろうか。 毒親では足りないほど気の狂った母親...
観たあとも胸に残る
これが実話なのか、、、物語が進むにつれてその境遇に衝撃を受け、さらにそれを演じる河合優実にも衝撃を受ける。どうか、どうか救われてほしい、そう願いながら叶わぬ結末に観おわったあとも気づけばずっと頭から離れない。
家に帰りこれを書きながらもう一度涙が流れた。
今日も日本のどこかで繰り返される
『香川杏(河合優実)』は生活力の無い母親から暴力をふるわれて育ち
十二歳の頃から売春を強要され、
小学校にも通えず
二十一歳の今では麻薬も常用するように。
「私、頭が悪いから」と、ことあるごとに口にするも、正しくはない。
単に学ぶ機会が無かっただけで、
何かの際にはどうすれば良いのか、
誰に頼れば良いのかを知らないだけ。
無口なのも、どう表現すれば良いのかを学んでいないだけ。
そんな彼女が、型破りな刑事『多々羅(佐藤二朗)』に出会ったことで
更生への道を歩み始める。
『多々羅』は麻薬中毒者の面倒を親身に見、
自助グループさえも個人的に組織する。
しかしそんな彼も二面性を持つのが世の常であり、
後々にスレ違いを生む一要素に。
また『多々羅』主宰の「サルベージ赤羽」に出入りする
雑誌記者の『桐野(稲垣吾郎)』も同様。
『杏』に親身になる一方で、
『多々羅』の近くに居るのは何らかの理由があることが、
ちらほらと示唆される。
これも後に、正義と情の狭間で懊悩することに。
物語が始まるのは、コロナが流行する前の東京。
順調に世間並みの暮らしに近付いていた主人公は
コロナが猛威をふるうとともに、
一つ一つと退路を断たれ、
次第に立ち行かぬ状況に追い込まれる。
2020年のあの頃。我々が伝染病の影に怯える裏では、
こうした惨事があちこちで起きていたに違いない。
自身の子供を、生活のための道具くらいにしか考えていない親は、
残念ながら多いのだろう。
本作の『杏』の母親は、
日頃は罵詈雑言と暴力を浴びせるのに
時として「ママ」とあり得ない呼称で娘を呼び
強く懇願する。
本来であれば暖かい単語が、
ぞわっと背筋に突き刺さるように聴く者の耳に入って来る。
離れたいのに切れない血縁に縛られるのは
どれほどの絶望感か。
そしてまた肝心な時に、信頼し頼ることのできる人間が
身近に居ない心細さはいかばかりか。
冒頭、重い足取りで明け方の街を歩く主人公の背中を追うシーンは
終盤で再び繰り返され、
そこに我々は深い悲しみを見る。
自身の力だけでは、どうにも抗えない
世間や社会に対しての。
新聞には毎日を目を通していても、
本作の元になった事件は
たぶん読み飛ばしているのに違いない、
既視感のある、ありがちな記事として。
しかしその背景を詳しく知れば、
心が引き裂かれるほどの背景が詰まり
困窮する多くが遍在することを理解する。
その義憤を映像に繋げた『入江悠』も見事だし、
カラダを張って監督の期待に応えた『河合優実』にも
賛辞を贈らずにはいられない。
今年一番の衝撃作。悲しすぎて涙が出ない
影と光
どう感想を書いたらいいのか…それくらいこの映画に動揺している。
閉鎖した状況から逃れられない人物に寄り添い、描き続けている入江悠監督。
今作では親から虐待を受け続け、覚醒剤や売春に手を出してしまった主人公杏に、今迄以上にそっと寄り添い、見つめている。
単純に良い映画という事を許されないような、監督の憤りの様なものを感じる。
壮絶な映画。暫く頭から離れそうにない。
兎に角、杏を演じた河合優実さんが素晴らしい。
箸の持ち方や筆記具の持ち方だけでも、育ってきた過程が見えてくる。
特に中盤、杏が更生に向かい、仕事が安定し、行けなかった学校にも通い始める所は、普通の生活と学ぶ事が楽しくて仕方ないという感じがする。そんな表情の変化が見事。
また、照明も初めは人物を影に納めながら、杏の変化とともに光を入れていくのが見事。
そして、杏と刑事の多々羅、ジャーナリストの桐野の3人のシーンが何とも良い効果。暖かくなるんです、その段階では!
ここから始まる地獄。
「人は良い事をしながら悪い事をする」と言ったのは、池波正太郎先生だったか、彼は欲望と贖罪に揺れながら生きて来たんだろうな。うん、佐藤二朗さんというキャスティングは見事だ。
正しい事と思いながらも、揺れ続ける桐野の稲垣さんも見事!
そしてコロナ禍が、築き上げた関係性全てを無にしてしまう。
不意に預けられた子供を虐待の連鎖なんて起こさず、ちゃんと育てようとする姿に杏の本質が垣間見える。依存していた部分があるとしても。
だからこそ、最後の絶望は辛すぎる。あそこで母親を刺せる杏なら、死にはしなかったんだろうな。けど、自分を傷付けても人を傷付ける事が出来ないのも杏の本質なんだろう。
まだ、ちゃんと咀嚼しきれてないけど、今年ベストの映画になりそうな気がする。
そして、今年の主演女優賞は河合優実さんにあげて!
#あんのこと
絶望と閉塞感
絶望と閉塞感に満ちていますが、そこに指す微かな希望や光をもっと対比として鮮明に落とし込み描かれていれば、更に良かったかなと少し残念に思いました。
またディテールが消化不良で、ストーリーに深みが無くなってしまったようにも感じました。
それは週刊誌記者の桐野と刑事の多々羅の描き方にも現れています。善人か悪人かパーソナリティーの表現が中途半端で、もっとドロドロした人間臭さを出した方が面白かったと思いましたが…。
あと確かに近頃の若手の中では河合優実は良い演技をしていると思いますが、演技力についてはややワンパターン気味だし、皆さまが絶賛する程そんなに良いかな?
実力があって評価されていない人は他にも沢山いると思います。
ただ、今過大な評価をするのでは無くて、コレから更に期待出来る可能性の有る役者だとは思いますが…。
人生で見た最高の映画
切ない作品
河合優実は本当に存在感があり、素晴らしい演技でした。目を引くような美人ではないが、山口百恵のような日本的美しさがある女優。悲しくて過呼吸になるシーンは、命をすり減らして演技していると感じました。
多々羅のことは力強く優しい父親のように感じていたのかな。自分を助けてくれて、信じていた刑事の裏切り。新型コロナの感染で自宅待機となり、施設の入所者やスタッフとの繋がりが途切れてしまった。最初は扱いに困っていた子供も、彼女の生き甲斐になっていた。
度重なる不幸の連続に、衝動的に覚醒剤を使ってしまう。積み上げてきた努力を自ら台無しにしてしまったその自責の念に耐えきれなかった。自分に期待してくれている施設の入所者や関係者など、心の支えとなっている周りの人達に申し訳ない気持ちもあったのでは。
彼女の人生がうまく行き始めると現れて、肝心なところで邪魔をする母親。あのような母親がどのようにして出来たのか気になった。
もう少し生活の基盤が確立し、もう少し自分に自信が持てるようになり、もう少し強くなっていれば、何とか乗り越えることもできたのかな。
酷い人生を歩んできたが、弱者に寄り添える優しい娘。悲しい結末がとても切ない作品でした。
【”絶望と諦念の日々からの微かな灯。そして・・。”今作はコロナ禍に起きた出来事を基に入江悠監督の鎮魂のオリジナル脚本に応えた、河合優実さんを始めとした役者陣の渾身の演技に魅入られる哀しき逸品である。】
<感想>
■入江悠監督の練り込まれた鎮魂のオリジナル脚本の凄さ
・悲しき出来事をベースにしながら、オリジナル要素である
<シェルターマンションに避難していたあん(河合優実)の元に、同じマンションの男とトラブルを起こした女(早見あかり)が、幼子ハヤトを押し付けて逃げ去る所からの、コロナ禍の中、仕事と学びの場を失いつつも、あんがハヤトを懸命に育てる姿。>
を練り込んだ事により、あんの人間性の清さ、強さ、尊さを際立たせた事である。
故に、彼女が遺したハヤトの食べ物の好き嫌いを記した燃え残りの日記の頁を親である女が見るシーンは、哀しい。
■脚本に応えた役者陣の渾身の演技
・勿論、筆頭はあんを演じた河合優実さんである。冒頭の目の下の隈を作りながらフラフラと歩く姿から、クスリの誘惑に負け泣き崩れる姿や、懸命に再生しようと介護施設で高齢者を介護する姿。
無理やり押し付けられた幼子ハヤトをDVの負の連鎖に嵌らずに、懸命に育てる姿。そして、ハヤトがご飯を食べる姿に喜ぶ優しき表情。
更には、再び絶望に突き落とされ、再びクスリを打ち、日々記していた日記を焼く姿。
ー 河合優実さんの出演作はデビューからほぼ全て見ているが、どんどん凄い女優さんになって行く。ー
・怪しげでありつつ、善性も併せ持つ不可思議な雰囲気を漂わせる刑事、タタラを演じた佐藤二朗さん。
あんの再生の手助けを懸命にしつつ、サルベージ赤羽に通うミヤビと言う女性を恫喝し性的関係を強いていたアンビバレンツな男を怪演している。
ー 佐藤二朗さんと言えば、ご存じのように福田雄一監督の数々のコメディ映画でおバカな演技をしているイメージが強いが、監督・脚本を務めた「はるヲうるひと」や「さがす」でのシリアスで、場合によっては悪辣な演技も凄い。今作では、後者の面が炸裂している。ー
・毒を振りまく母を演じた河井青葉さん。
あの役の演技はさぞやキツカッタだろう。鬼気迫る演技であるが、あの毒母を河井さんが見事に演じた事により、この映画の底知れぬ怖さに奥行きを齎している。
特に、あんに縋る時に彼女を呼ぶ”ママ、ママ・・。”と言う声と表情には観ていて、激しく嫌悪感を催すが、河井さんの演技が凄いからである。
<今作は、毒を振りまく母親に人生を蹂躙されながらも懸命に生きた若き女性の半生と、現代日本の数々の闇を抉り取った入江悠監督の練り込まれた鎮魂のオリジナル脚本の凄さ及びそれに応えた河合優実さんを筆頭にした役者陣の渾身の演技により成立している悲しみ溢れる邦画の逸品である。>
ぐちゃぐちゃになった感情を引きずる
重く生々しく、良くも悪くも未知の領域
暗澹たる日本の現実を思い知る
超怒涛の衝撃作です。2021年夏、東京五輪の開会式に合わせブルーインパルスが青い空に真っ白な五線を描く、その下で少女が自らの命を絶った。あの思い出したくもない不快なオリンピックのポスターを随所にさりげなくフレームに移り込ませ、本作の時代設定を示すと同時に、その表と裏をくっきりと本作は焼き付ける。
実際の出来事に基づく、と冒頭のテロップ。よもやよもやの展開に疑念の余地を一切与えず、まるでドキュメンタリー映画のように対象に張り付く。ちょいと邦画では珍しく、米国の社会派映画の荒々しさで深層に迫る作劇。だから例えば稲垣吾郎扮する週刊誌記者が河合優実扮する主人公・香川杏に名刺を差し出すも、名刺を画面にアップしない。例えば杏がお婆ちゃんにケーキを買ってきた時、おり悪く毒母が男を連れ込んで登場するシーン。身も心も少し安定した杏を象徴するショートケーキが、映画では必然のようにグチャグチャにされる描写、当然に崩れたケーキをアップでカットするべきを、敢えてしない。積み重ねる映画的描写を捨て、切り返しも最小限に、リアルを覗き見る手法。
だから観ていてとても辛いのです、刑事・多々羅役の佐藤二朗も、ТV「不適切」で一躍メジャーとなった河合優実も知ってはいるけれど、あまりにリアル。そんな中やっと登場のメジャーな稲垣吾郎を観ると、当たり前ですが本作は再現フィクションと言う免罪符を以って、少し落ち着いて観る事が出来る程。とは言え、後半押し付けられた幼児の登場するシーンに至っては、明らかに泣きじゃくる幼児をフレームに収めながら取っ組み合いの喧嘩なんて、もう胸がはち切れそうなのです。無論、最大限のケアの下での撮影でしょうけれど、逆に役者も大変とつくづく思います。
こんな義務教育すら満足に受けられていない子供達、7人に1人が貧困生活、給食以外に食べ物もない少年・少女が確かに現在の日本にいる現実。全く機能していない我が国の為政者の実態が、あの青空のジェットスモークだと言う事。悪事も悪評も何時の間にか霧散して消えてしまうとばかりに。
それでも一方では地道なボランティア精神にいそしむ人々がいることを本作は確かに伝えてくれる。薬物依存脱却のための施設、まるで米国映画でしか観る事の出来ない集団での発言シーンは素晴らしい。人手不足の介護の現場職員も、DV避難の住居提供も、頭が下がる思いです。しかし、よりによって薬物依存脱却施設での悪事が週刊誌記者によって暴露され、砂上の楼閣のように拠り所が崩壊してしまう悲劇。被害者がいる以上、暴露し成敗せざるを得ないでしょうし、全く同次元でコロナ禍での閉鎖も主人公を追い詰める結果を導いてしまった悲劇。
冒頭からの茶髪を多々羅の庇護の元、ショートにカットした主人公、殆ど中学生くらいにしか見えない主役・河合優実。絶望の苦痛の表情をアップでまるで切り取ってくれない作品ながら圧巻の演技です。ちょっと前までは杉咲花の独壇場の役でしたが、時は移り今は河合優実だと強烈に印象付けられる。佐藤二朗も殆ど主役扱いで、普段はコメディタッチが多い事が逆に活きる。ベテランでしたら内野聖陽がぴったしの役ですがね。稲垣吾郎にはラストの自殺に驚くシーン以外にさしたる見せ場なく、少々勿体ない。最大のヒール役である毒母に扮した河井青葉はよくぞ頑張った、昨日観た「かくしごと」にも出てらっしゃったのね。
無謀にも幼児を押し付けた女に警察が言う「後悔してませんか?」と。このセリフ1つで幼児のその後の容態が一挙にクローズアップされ、最後になってその傍らに元気な姿を確認出来ほっとする段取りはいいけれど。が、あんたが無謀な事をしなければ杏は生きていたはずと、手を繋ぐ親子の最終カットに心底腹立つのです。
絶望の中に感じたもの…
「可哀想」が際立つ
公開当初から評判が良かったので劇場へ。
入江悠作品は何本か観てきたけど、やっぱりあんまり私の趣味とは合わないのかな。
河合優実の演技は光ってるし、「自宅が地獄」っていう残酷なシチュエーションも効いてる。
救いを与えてくれる人は皆途中で退場、地獄だけが向こうからしつこく追い掛けてくる。
思い返せば、あの毒親も自分の母親を守る為に客をとっていたんだろう。
公的な支援や活動も、時には牙を剥き、守るべき弱者から順に襲いかかる。
ただ、作品としては最終的にそんな主人公が「可哀想」に終始してしまった気がする。
多々羅の件もイマイチ腑に落ちないし。(個人的に佐藤二朗が苦手ということもあるが)
ホントなら、あの男の子は彼女が残した数少ない「優しさ」「生きた証」だったはずなんだけど、ほぼ懐いた様子もなかったし。もう少しここの光を描くか、逆にもっと突き放すかしてくれたら、印象は違ってたと思う。
早見あかり扮する無責任な母親にフォローされても「お前が言うな」って感じ。
必死で頑張っても仇で返され、苦しんで苦しんで、それでも闘ってそして…
次は?
行き止まり?
このラストまでが実話なのであれば、もちろん取って付けた様な美談にすることはできないってのも分かる。
でも、「可哀想」で終わるよりは「それでも彼女は必死で生きた」という部分がもう少しあれば。
そんな変なモヤモヤが残った。
なんでも最後は
全465件中、401~420件目を表示