あんのことのレビュー・感想・評価
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貧困女性というジャンル映画
「万引き家族」「百円の恋」「MOTHER」「市子」と、ここ数年の貧困を描くと当たる流れに乗った作品。「実話ベース」で合わせ技一本。
シングルマザー、毒親などの貧困女性を演じることが一流女優への登竜門となって久しい。「キューポラのある町」からの伝統ではあるのですが。
この手の作品は映画館を出る時に暗い気持ちになることが多いので、たまにはハッピーエンドを見たくなる。
あんのこと
どこまでも自己中心的な母親が娘に暴力を振るい、自分の為に売春をさせ、娘をママと呼ぶ未成熟さが痛々しい。そんなどうしようもない毒親からの自立を図りなんとか生活を立て直そうとするも、電線に脚を絡め取られたカラスのように自由に空を羽ばたくことが出来ない。
薬物依存から立ち直る為のサルベージは間違いなく機能していたし、刑事の功績も大きかった。
記者が「私があの記事を書かなかったら、彼女はまだ生きていたんでしょうか?」と問うていたけれど、たったひとりの刑事の個人的努力によってしか救えない事自体が社会の問題で、やはり刑事の逮捕は間違っていなかったとおもう。それとは別の問題として捉えないといけない。
全く救いのないように見える物語だけれども、主人公はおばあちゃんのことをずっと想っていたし、あんな母親でも直接的に傷つけることはできなかった。
唐突に預けられた他人の子供もちゃんと面倒をみて、自分の体を犠牲にしてでも救おうとした。
だからこそ、彼女には幸せになってほしかったけれど、母親のように誰かを傷つける前に自分を傷つけて、それでも耐え切れずに命を絶ってしまった。
こんな子供たちの為に、映画を観ている私たちは何ができるんだろう。
きっともう忘れられない。あんのことを。
考えさせられる映画でした
今、若手の最先鋒(正しくは急先鋒?)河合優実さんの迫真の演技が話題で絶対観ようと思っていたものの、なかなか映画館に足を運ぶことができずVODでも「しっかり腰を据えて臨もう」と思っているうちに年末を迎えてしまいました。
紅白で珍しくちょっと感動して、カウントダウンは遠慮して精神的にしっかりした状態で鑑賞しました。
が、これは凄いというかなんだか後味が悪い状態で新年を迎えることになってしまうとは!?それにしても河合優実さんの、本物じゃないかと思えるほどの演技に圧倒されました。事実をもとに作られたお話というのもより苦い後味の一因かと。日本の貧困社会にコロナ禍が相まって、とても哀しい展開になっていましたね。
福田監督作品の佐藤二朗さんは正直好きじゃないのですが、今回の色々な苦悩を抱えた演技には見直さざるを得ませんでした。同郷で大学の後輩でもある佐藤二朗さんを陰ながら応援してきた甲斐がありました。余談ですがジブリパークの宮﨑吾朗さんも同時期安曇野あたりで青春してたと思います。またふつうのジャーナリストの吾郎ちゃんとの対比もよかったです。吾郎ちゃん、『半世界』での寡黙な雰囲気よかったですね!もうSMAP再開しなくても大丈夫でしょう!
もうひとりのかわい(川合)さんも本当に憎らしく、、いけないこととは思いながら「刺しちゃえ!」って思っている自分がいました。TVドラマ『Mother』で幼い芦田愛菜ちゃんを虐待する尾野真千子さん&駆け出しの綾野剛さんを思い出しました。悪役の演技は心から憎々しく思わせたら『勝ち』ですね。
今日は一日明け、年も明けて心穏やかな朝を迎えていますが一年前の突然の震災や社会が抱える根の深い課題を考えると、普通の生活が送れることの幸せに感謝しなければと心から思います。事実に基づく話であることを再度認識して後味の悪さは置いておいて考えさせられる大事な作品だと思いました。
それにしても河合優実さんからしばらく目がはなせませんね。缶コーヒーのCMの中でファン第一号を名乗る神木隆之介の気持ちがよくわかります!!
話題性、過激性、マーケティングに問題あり
河合優実主演で話題作になるかと思えば都内なのに上映劇場は少なく配信もすぐ終わった。
これでは観ないでくださいとでも言っているよう。
やっとPrimeビデオで観れたので見た。
PG12なのに性的なシーンなど皆無
ただラリってる風なシーンのみ
暴力シーンも軽微なものしかなくPG12にする必要あった?
せっかく河合優実が主演を承諾したなら
「闇の子供たち」くらいの事したら良かったのに。
新聞記事が元だと言う事だから活字からの実写化だからかリアル性にも欠けるような淡々さ。
杏は薬物中毒者であるがSEXワーカーを強いられている虐待児なのに
体を売るのが日常であった事が1ミリも描かれておらず
現実を知らない脳天気日本人にキレイなところだけ見せて終わりにして可哀想を誘う映画。
馬鹿なの?
この手の事実はいつだってあるし、他にもニュースになった実話は沢山あるよね。
最初から最後まで救いがないようにたんたんと流れていくが、
心臓がびっくりしないように活字だけから作った淡白なお話。
同じSEXワーカーを描いた「エゴイスト」はフィクションであれもリアル性にはかけたがまだマシだった。
この手の映画は人に観てもらわなければなんの啓発にもならない。
もっとまともな作品作りをすれば河合優実の代表作にもなったかもしれないのに。
残念だ。こんな映画で心が痛くなったとかほざくお花畑日本人がいたら失笑する
つらい…
「新型コロナウィルス」の人々に及ぼした影響を描いた映画としても鑑賞する価値はありましたね。
今年最後の目黒シネマさんにて『~光と影のはざまで息をする~』(12/26(木)~12/28(土))と題した『ミッシング』『あんのこと』2本立て鑑賞。
『あんのこと』(2024)
2000年6月に実際に朝日新聞に掲載された実話をモチーフにした作品。
家庭崩壊、母親からの虐待の末に不登校、売春、ドラッグに溺れた杏(演:河合優実氏)がドラッグの更生施設も主催する刑事・多々羅(演:佐藤二朗氏)との心の交流のなかで復学、就職をして自立更生していくが、新型コロナウィルスの流行による学校・職場の閉鎖、多々羅の更生者への性加害による更生施設の閉鎖と逮捕により、徐々に元の荒れた生活に戻っていくというのが大まかなストーリー。
鑑賞中は令和の時代にかなり荒唐無稽な話だと思いましたが、鑑了後身近に起きた事実、主人公・杏の壮絶な人生に愕然としましたね。
山田洋次監督『学校』シリーズのようなハートウォーミングな作品、ラストを想定していましたが、完全に心をえぐられましたね。
河合優実氏の体当たりの演技は見事でしたが、佐藤二朗氏の普段とは違うシリアスな演技、
多々羅氏との友情と記者としての正義に揺れる稲垣吾郎氏の両氏もお見事でした。
世間が忘れはじめた「新型コロナウィルス」の人々に及ぼした影響を描いた映画としても鑑賞する価値はありましたね。
大変参考になりました!
河合優実さんの演技に拍手
最後実話だと思い出してからそれまでの健気さに涙
2024年劇場鑑賞44本目 傑作 75点
正直、1年通して2024年一番期待していた作品かもしれない
そんくらい河合優実の独壇場をリアルタイムで堪能できることを心待ちにしていた作品である
結論、素晴らしい完成度のドキュメンタリー再現映像の様だった
家庭内での取っ組み合いにちゃぶ台返し、その雑多な空間と綺麗なぶつかり合いじゃない再現性、それを表情や腕っぷしにフォーカスを当てる様な撮り方でなく、あたかも現場にいわさせてしまった配達員が何もできずに硬直してただ側から見ているかの様な目線での映像
序盤の河合優実の虚に目の奥がくすみきっている眼差しと全身から漂う負のオーラが拭えない猫背など、苦悩が伺える等身に脱帽
そこから、出会いや機会に恵まれて(一理あるが)自分の人生を生き始める
おばあちゃん子で、母への憎しみの皮肉なのか助けになりたいと介護職に触れてみること、ひょんな出来事から預かった赤子の為に奮闘する姿、一刻と終わりへ向かう年配の方への注力から、これからを生きる新たな命の為に自分の必要性を見出し生き始める力強さと終始感じる彼女の心優しさ故に、最後に迎える悲劇が、彼女が構築してきた生き甲斐とか生まれてきた新たな心の糸が分断された様で、新しい自分と新しい命(赤子)の丁寧に生き始めた印を書き記した日記やアレルギー一覧を燃やし灰にし、抱きしめながら命を断つあのシーンの一部始終は今年ベストの喪失感と衝撃である
彼女は2021年公開の由宇子の天秤から認識し、当時から作品は勿論、彼女の存在感に映画ファンが飛躍を確信し、予定調和でドラマの躍進や今作の抜擢・怪演である
2025年1月公開予定であり、由宇子の天秤ぶりに瀧内公美との共演作、敵での成長した姿楽しみである
救いのない物語
重い…
見る前からある程度想像はしていたが、見終わった後の素直な感想は『重い!』。
大人になりきれていない年齢だけ年を重ねた精神的にまだ子供な大人が、自分の子を作るとこんな惨劇が起こるんだなと、とても悪い方に向かったことを描いている。
主人公のあんはこの状況を求めてなったわけではないし、この状況から逃れたいけどどうしたらいいかわからないジレンマからこの状況に陥っている。これは手を差し伸べてやらないといけない案件のはず。何もわからない子供の頃からこんな状況に置かれて、行政や周りの大人が何かしらわかるだろうに全く干渉することなく育っていかざろうえなかった悲劇。明らかに人災。こうならないために世の中のいろんな仕組みがあっておかしくないのにとても苛立ちを覚えた。
そんな中心の中のほんの少しの光であった刑事に支えられ支援されようやく本来の笑顔で仕事やプライベートな時間を過ごせるようになったのに…やらかしてしまって、何やってんだってここでも苛立ち。
かなりアホな母親に無理やり押し付けられた子供と理不尽だと思いながら過ごした時間はきっとあんにとって本当に孤独を忘れさせてくれる、貴重な僅かな時間だったんだろうなと容易に想像できる。映画でしかないけど、あの映像を思い起こすと涙が出てくる。
そんな僅かな些細な時間も生まれた時から自身の1番身近で1番障害となる母親にぶち壊され、自暴自棄になってしまったシーンは本当に心が張り裂けそうな場面だった。あれはないよな…
評価を見て、最後だけ救いがあるって感想の人たちがいたがどうしてもそうは思えなかった。押し付けやすそうな子に身勝手に自分の子供を押し付け、時間が経って取り戻しにきている母親にも苛立ちを感じる。勝手すぎだろ…今はわかってはいるが、早見あかりの顔はあまり思い出したくない。
とにかく、久々にすごい映画見たなって言うのが感想です。この主演の河合優実さん、すごい女優さんになりそう。
散らされた花、残された明日
本作は、主人公の杏が置かれた過酷な現実を克明に描き出し、観る者の心を揺さぶる。もう一度観賞するのを躊躇するほどであり、あたかも作品の世界に腕を掴まれ、引きずり込まれるようであった。
作品を通して伝わってきたのは「社会問題に対して無関心でいることはできない」というメッセージである。幼少期からの虐待や薬物依存を乗り越え、仕事をこつこつとがんばり、夜間中学で学びに勤しんでいこうと励んだが、新型コロナウイルス感染拡大により、事実上、その道が断たれる。
作中、警察官の多々羅は杏に付き添い、区役所を訪れる。毒親からの虐待、経済的搾取から逃れ、負の連鎖から脱出すべく、その一歩として、職務経験のない杏が生活保護を申請するためである。
理解者たる多々羅が交渉を試みるも失敗。腹立たしいが「まだ若いから自力で何とかしろ」という具合で埒が明かない。その場に漂う冷ややかな空気こそが、社会全体が弱者を切り捨てているという現実を象徴している。
制度の網目からこぼれ落ちていく人々、そして、その現実を変えられない無力さに、多々羅は怒る。社会への深い悲しみと怒りを物語っている場面である。
本作の結末が示しているとおり、社会問題を解決しようとするのは実に難しい。また、そのために当事者が声をあげようとすることも容易ではない。
杏のケースでは、そもそもどうやって声をあげればよいのかわからない、声をあげたとしても、福祉の手が差し伸べられなかったり、行く手を阻む者(毒親など)が現れたりする。思い通りにいかないことの方がずっと多い。
だからと言って、当事者だけではどうすることもできないことはどうしようもないかというと、そうではない。つまり、映画は、単に娯楽を提供するだけでなく、社会問題に対する人々の意識を高め、行動を促す力を持っている。
なぜなら、映画が持つ共感力や想像力を刺激する力が、人々の心を動かすからである。ただただ現実に起きた出来事が悲惨だと伝えるのは刺激が強すぎるし、すんなりと受け入れられることは難しい。
しかし、このような形で映像化することが大切である。当事者が声をあげるだけでは動かなかった世論に対し、大きな影響をもって社会に訴えかけることも可能である。
「弱者と連帯する」と言うは易しであるが、具体的な行動として、ボランティア活動や寄付など、様々な選択肢がある。例えば、地域のフードバンクへの支援や、ホームレス支援団体へのボランティア参加、あるいは、貧困問題に取り組むNGOへの寄付など、一人ひとりができることはたくさんある。
しかし、まずは、自分自身が社会問題に関心を持つことが大切だ。映画を観る、ニュースを見る、本を読む、そして、周りの人々と意見交換をする。これらの小さな一歩が、大きな変化につながる可能性を秘めている。
社会問題の根底には、社会構造的な問題が横たわっている。私たちは、個人だけでなく、社会全体で問題解決に取り組む必要がある。そのためには、社会福祉制度の改善を求める署名活動に参加したり、政治家や行政に働きかけたりすることも重要だ。
市民社会は誰かがお膳立てしてくれたものに乗っかるだけでは完成しない。例えるならば、大きなパズルのようなものだ。一人ひとりがピースとなり、全体像を完成させていく。一人ひとりは微力であっても、それが合わされば大きな力となる。決して無力ではない。
しんどい。ただしんどい
見たらしんどいのだろうなぁとは思っていたが、本当にしんどかった。リアルベースで現実にある世界で。最近歳をとったのか、子供の未来を潰す、追い込むような大人、犯罪に巻き込むような大人はみんないなくなれば良いと思っているので、この映画の世界はほんと辛くてしんどい世界だった。
コロナ禍か。ほんと最近の話なんだなあ。。
世界はいつからこんなに歪になったのか。昔からそうだったのか。
俳優陣の演技はドキュメントを見ているかのような気持ちにされた。名演技だった。ただ名演技であればあるほどしんどさはマシマシだった。
多々羅が悪者という判断はあるが、彼は悪者なのか?私はそんな簡単な話ではないとおもった。
作品としては本当に良いのだが、楽しかった面白かった基準で評価してるのでこの点数。
起伏のない人生
メンタルが強いとき限定
そのうちもう一度観たいと思うけれど、決して人にはお勧めできない、自分もいつ観ようと思うか判らない、複雑な後味。
物語の大部分は、あんが様々な人達に支えられ、不意に訪れる厄介ごと?でさえも、前向きに成長していく姿がとても愛おしく感じた。
しかし終盤で不穏な空気からのエンディング。
社会は1人の少女を救う事はできなかったが、あの子供や母親、刑事の心を揺り動かしたと思う。それだけがこの映画の救い。
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