あんのことのレビュー・感想・評価
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善と悪と正義と
心の深奥に刺さる映画である。
DV、貧困、無知、売春、覚せい剤、打算とこの世に蔓延する悪の中に、杏という弱々しい
無償の善の持ち主を放り込み、「悪に翻弄される善」という普遍的なテーマを展開する。
ここまでなら良くある構図だが、監督が秀逸なのは、そこに多々羅という極端な善悪両面を備えた刑事と、正義を標榜する新聞社の記者を据えたことである。かくして善悪だけでは割り切れない複雑な構造を映画にもたらすことに成功した。その結果、降りしきる雨の中で杏を抱きしめる多々羅刑事の姿は、善悪を超えた崇高さを持ち、一方で正義の遂行(新聞による告発、児童相談所による幼児の確保)が杏にとどめを刺す、という胸をかきしめられるような展開を描き出した。
登場人物の中で杏だけが、ただ他人の為に生きた。燃え残った日記の一片には、子供のアレルギーや好き嫌いに配慮した食事が記されており、それは善の塊であり、杏の生きてきた証であり、墓標である。
幕が閉じた時、監督からの問いかけに気づく。お前は誰だ。杏か毒親か新聞記者か刑事か。「いえ私はただの観客です。杏はかわいそうでした。行政はもっとしっかりすべきです。」といつもの日常に戻るのは簡単だが。
杏に出会ってしまったからには、日記の続きを託されたと観念すべきであろう。
河合優実、河井青葉、佐藤二朗の演技は圧巻である。
杏の不幸の根源は……
河合優実の素晴らしい演技に没入
2020年実際に起きた事件から着想を得て、入江悠監督が映画化。幼い頃から母親に暴力を受け、壮絶な人生を送ってきた主人公を描いた作品。
彼女が置かれたあまりにも絶望的な環境、そこから抜け出そうともがく、救いのない重いストーリー展開。
助演の河井青葉の鬼気迫る演技も凄かったが、主人公のあんを演じ切った河合優実は、他の共演者たちを完璧を凌駕、その素晴らしい演技に没入した2時間。中々よいキャスティングの中で、稲垣吾郎が唯一余計だった。
現代の社会問題を描くこの作品、悲しく、救いようのない現実が存在していることを深く印象づけた。
この河合優実、そして杉咲花、山田杏奈なども然り、最近の日本映画界には、主役をしっかり演じ切る若手女優が増えたと、この作品を通じて改めて思った。
杏ちゃん
私は脚本も書ける監督さんをとても尊敬しているのだ。
本作も入江悠監督が脚本も手がけている作品なのだが、代表作?のラッパーシリーズは未見。
「太陽」と「22年目の告白 私が殺人犯です」しか知らないので、どんなテイストの作風の監督なのか?
いまいちわかっておりませんm(__)m
本作は河合優実ちゃんが主演というだけでチェックしていたもので、いつもなら気になる監督すら確認しないまま鑑賞。
キービジュアルは見ていたが、事前情報ほぼゼロです。
最初に「実話ベース」とのテロップが出る。個人的に苦手な演出。
どこまでフィクションで、ノンフィクションなのか気になってしまうし、第一印象に影響が出るから。
でも、本作では有効だったと思った。
キノシネマのリクライニングできるゆったりした座席に腰を下ろし鑑賞している自分。
冒頭で映し出された杏ちゃんの顔のアップ。
目の下のひどいクマ。正気を失った表情が映し出された時、
「あ、、どうしよう」と動悸がしてきて、、、でも覚悟が決まった。
目を逸らしてはいけない。
実話ベースの悲惨な事件であることは間違いない。
杏ちゃんを救えなかった日本の現状。
だけど、この闇や大人達に怒りの感情を向けるだけではダメなのではないか。
断罪する事にこだわっている様ではこれからも変わらない。
まだ日本のどこかに存在しているであろう第二、第三の杏ちゃんは救えない。
この絶望的な世界に身を置く子供達を、取りこぼしたままでいる日本を変えなくては!と、強く思うものの、では、自分に何が出来るのか?と、問うてみても、無力過ぎて落ち込むのだ。
日々流れて来る似たような事件を目にするたびに、心が痛み、憤りを感じ、大きなため息が出るだけだ。
(身近な所だと新宿のトー横とかか)
だから考える。考える事を止めてはダメだ。
今の私にも出来る事。
自分の周りの人には優しくいたい。
バカみたいな言葉しか出てこないけど、何かあったらあの人に!って頭に浮かぶ人間になりたい。
(あと選挙行く)
杏ちゃん。
あなたの頑張っていた人生を少しだけど、見せてもらったよ。
知らなくてごめんね。
助けてあげられなくてごめんね。
動のさとみ、静の優実。
主演女優賞はさとみなんだろ〜けど、私は優実ちゃんを推したい!
◎追記◎
タタラのモデルになった刑事に裏の顔があった事も実話に基づいていると知りました。
言葉が出ません。
救いはあった。それでも救われない現実
救いがないわけじゃなかった。ただ、救いはあっても掬いきれないことはあって、救われない現実に心が痛む。こういう映画を観ても、「自分に何ができるか」なんてことは考えずに生きてきたし、そんなふうにしか生きていけない。それでも、河合優実さんが演じたような環境にある人がいること、そういう人と向き合っている人たちがいることは見て見ぬふりをせずに生きていきたい(Xへの投稿コピペ)
目をそらすことを許さない河合優実さんの見事な演技
ほぼ全編通してふざけない佐藤二朗さんの渾身の演技
抑制が効いて実在感たっぷりの稲垣吾郎さんの演技
娘あんへのもう一つの呼び名に身の毛がよだつ河井青菜さんの怪演
見どころたっぷりの演者たちと、
家の様子やロケーションなどで実話ベースであることを
違和感なく見せた入江監督の手腕に拍手です。
河合優実の適切な演技
先日放送していたテレビドラマ「不適切にもほどがある!」に出演していた河合優実さんが主演という事で、女優さん目当てで鑑賞に行きました
期待どおり河合さんの演技はピカイチで、大袈裟なところが無く台詞も自然で、人物が実在するような演技ができる女優さんであることを再認識し、ますます好きになった
わたしのなかで最近どハマりしていたのは杉咲花さんでしたが、河合優実さんが並んでツートップの位置を占めました
重いテーマをドキュメントタッチで描いたように感じた今作、ワンカットが長く、シーンが冗長に感じることが多々あり好みは分かれる、というか、わたしはダメだった
最後の5分から10分は付け足された感じもあり、不必要なシーンに感じた
河合さんの演技は最高でしたが、評価は星3
河合優実の説得力
河合優実の演技が、演技に見えない説得力。実話に基づく物語ですが、ドキュメンタリー以上にリアルな感触を与える、すごい女優さんが出てきたな、という印象です。佐藤二郎が絶賛する理由がよく分かる。
理不尽な家庭環境から絶望さえ知らなかった少女が、ほんの少し希望を与えられ、少しずつ人生を立て直していけるか…と思ったらまた理不尽に奪われ、突き落とされる。トーヨコにいる少女達も多かれ少なかれ、こういった背景を抱えているのだろうと想像できて、苦しくなります。
大人が大人の責任を果たさないことのツケを、子ども達が払わされている理不尽。観て、我々大人達が反省し、次の行動につなげなきゃいけない作品です。
河合優実推しですが
愛なのにを観てから河合優実を推している。NHKドラマの家族だから愛したのではなく愛したのが家族だったや、不適切にもほどがあるも面白かった。
本作では河合優実の魅力が発揮されていたが、佐藤二朗と稲垣吾郎は今一つ。佐藤ではなく岡部たかしの方が二面性が出るし、稲垣ではなく北村有起哉の方がジャーナリスト感が出たのではないか。ドラマ化されるのであれば、ぜひこのキャストで。
実際の事件を元にして作られているというが、どこまで同じなのか知らない。ただ、PG12ということからも、描き方が中途半端な感じがした。
コロナ禍の影響はあまり関係なく、母親はコロナ前でも家庭に満足に金を入れずに自分のために使い、祖母の介助も杏にやらせていたのだろう。後半で男の子の世話をするが、祖母や母親のために生きることが杏にとっての生きる意味だったのか。ただ、自死をするまでの流れは、脚本がやや甘かったと思う。
杏のような子供は、程度の差はあっても多く存在するのではないか。
期待を裏切らない河合優美
想像力や思いやりの欠如がもたらした悲劇を描いた作品。
馬鹿な大人たちの犠牲になった少女が憐れ過ぎる。
冒頭からデイパックを背負って早朝の赤羽のOK横丁を一人歩く河合優美(杏)。
佐藤二朗の多々羅。こんなイイ刑事いるかぁ?とは思いつつも、稲垣吾郎を含めて3人で杏の就職を祝ってカウンターで乾杯したり、カラオケするシーンに幸せを感じて、もう何年も足を向けないようにしているOK横丁に寄りたくて仕方がなかった。
サルベージ赤羽紹介してもらおうか😅
ロケ地は赤羽台団地や埼京線沿線武蔵浦和あたりのマンションか。
なんでブルーインパルスが飛んでるシーン入れた?
インパルス堤下を連想しちゃった。
クスリつながり?
KEYUCAで絶対可愛い手帳を万引きすると思ったのに、すんでのところで思いとどまる。多々羅へのお礼のプレゼントを買う。細かなこころの変化を演じる河合優美。
佐藤二朗も好演。
「さがす」での伊東蒼との佐藤二朗もよかった。確実に進歩してる😎好感度あげた。
どうにも薄っぺらい正義やうわべだけのマニュアル対応に苛つく多々羅。介護施設のおじさんの対応は神。元ヤンキーって言ってたな。
ゴミ屋敷はちょっとやり過ぎ。生活保護もらってないのに、缶酎ハイやビールの空き缶が多すぎ。結構リッチじゃんと思ってしまった。
あんな境遇にもかかわらず、母性に目覚めたあんちゃん。ジャガイモの皮を剥かないで賽の目に切るところなんか泣かせる。
杏の母親は酷すぎる! 馬鹿すぎる。
よく我慢していたというか、あんちゃんはいい子過ぎる。元ヤンにみえる河合優美は実はお医者さんちのお嬢さんなんで、そこはかとない品を感じる。
鈍いオイラだって、燃やしかけた手帳から切り取ったページが育児期間のものだってわかる。
杏
幾つか河合優美さんの作品を視聴してきたが
あの映像を観た時、彼女は正にあんだった。
不思議なリアルさを感じた。
貧困家族、虐待、暴力、売春、覚醒剤、コロナ
非正規雇用。
地獄のような道を辿ってきたが更正しようとする
杏。
産まれた時は皆同じ。
ただ、環境や育て方や周りにいる大人達の
影響は有り得る。
最初から悪い人はいないし、そんな事は
誰も望んでないが現実には限界もある……。
新しい部屋を見て入った瞬間のあんの表情や
ラーメン屋さんのでの食べる姿が印象的。
少しずつ人間らしく生きたいと思い始めたのに。
言葉が出ない。この過酷な社会のシステム。
本当にこのような方は存在していたの
だろうと思わせた河合優美さんの演技は
凄かったし重みも感じた。
しんどいけど観ておくべき作品。
主人公以外の配役が微妙でした
主人公の杏役の河合優実さんは圧巻の一言。
ただ刑事役佐藤二朗さんは正直役柄に合ってないと思いました。良い人の役はしっくりくるのですが、この映画でのクズ役は疑問。決して嫌いな俳優さんではないだけにもったいない感じがしました。
佐藤二郎が人情味あふれる刑事…本当か?…うそだろ!?
「不適切にもほどがある」で好演していた河合優実が主演ということに惹かれ鑑賞してきました。
母親から暴力を振るわれ、身体を売って金を稼ぐよう言われ、麻薬中毒にもなり、そんなどん底人生だった杏が人情味あふれる刑事多々羅(佐藤二朗)と出会い、彼と友人のジャーナリスト桐野(稲垣吾郎)の助けを得て更生の道を歩み始めるのだが、世間ではコロナウイルスが流行し始め仕事も学校もなくなってしまう。母と祖母のいる家を出て一人暮らしを始めていたのに不運なことから母に居所がバレ、再び暴力を振るわれ売春して金を稼いでこいと言われ…
(感想)
・佐藤二朗の人情味あふれる刑事、ちょっと強引で昭和の刑事みたいだけど、親身になって杏を更生させようとしているように見えたのに、まさかの展開に呆然
・NHKドラマ「ひきこもり先生」みたいに杏の頼れる存在だと思ってたのにさすが佐藤二朗、ゲスい役はお手のものでしたね。見事に裏切られました。
・桐野もネタのために多々羅に近づいてたのですね、稲垣吾郎が演じるくらいだからクリーンだと思ってたのに…残念
・せっかく更生の道を歩き始めてた杏の道が突然すべて閉ざされてしまう過酷な運命に同情を禁じ得ない。
河合優実の熱演が光る映画であった、と同時に佐藤二朗の演技もこの映画の魅力になっているのは確かである。
悲しいストーリーではあるが。
親に感謝と情が湧くとは
脚本がかなり雑。
思いつくまま書きます。
あの記者はなぜ投身自殺したときだけ現れるのか?シェルターを紹介したのは刑事と記者なのだから、子供を無理やり預けられたときや、母親に騙されて自宅に戻ったときはなぜ駆けつけたり世話を焼いたりしないのか?自宅の場所だって知ってるはずなのに連れ戻しにも行かないし。これ以上ないくらいに不自然。
あと無理やり預けられた子供にあんなに愛情が湧くだろうか?
母親も介護施設で明らかに暴力を振るっているのになんのお咎めもないのだろうか?
あんなだらしない生活してるのにいつまでも公団に住み続けることができているのもものすごく不自然。
だらしない生活、娘に体売らせてますけど家賃だけはきちんと払い続けてます?ムリあるでしょ、それは。
あとは子供を無理やり預けた母親の態度があまりにもあっさりし過ぎ。
あそこまで面倒見てもらってんだから絶対墓参り行くだろう。母親が教えなかったら胸ぐら掴んででも墓の場所聞き出すだろ?
で、預かった子供が児相に連れて行かれたくらいでやけになってまたヤクに手なんか出すか?児相に連れて行かれた「だけ」だぞ?死んだわけじゃないんだぞ?しかも児相に子供を引き渡した母親に対して怒りをぶちまけるわけでもないし。これもあり得ないくらいに不自然。
これが現実…
ランナウェイ
薄暗い廊下を手をつないで母子が歩き去るラストシーン。一旦陽が射してすぐに暗がりに戻るがそこで抱きあげる。親とはこうであって欲しいという制作者の願いだろう。
毒親が元凶なのは誰の目にも明らかだが、とどめを刺したメディアを、桐野に「懺悔」させる事で免罪していいのか?彼らはあの投身すら詳報して更なる部数稼ぎに精を出すだろう。
法律の想定外の窮地を役所は救えないが、救えるよう法整備して網を拡げるとそれを悪用して甘い汁を吸う輩が群がってくる。また、多々羅に象徴されるように法を執行する者も善人ではあっても聖人ではない(あのシャブ女と連れの男にハメられた)。民間ボランティアも限界がある。この袋小路から抜け出すのに必要なものは善意なんかではない事だけは確かだろう。可哀想だから助けてあげる、では助けにならないと胆に銘じたい。
私見だが、河合優実は杉咲花と並ぶ令和の大女優。
キャスティング
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