劇場公開日 2024年6月7日

「令和の胸糞系映画の最高地点は、昭和的戦争映画と構成は同じだった。」あんのこと ソビエト蓮舫さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0令和の胸糞系映画の最高地点は、昭和的戦争映画と構成は同じだった。

2025年4月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

朝日新聞の記事を叩き台にストーリーを作った、胸糞系社会派作品。
主人公がとにかく悲惨な女性として描かれ、
貧困、劣悪な母子家庭環境、虐待、薬物依存、売春生計と、
世の現役世代の女性に、ありそうであんまりない不幸事を、
これでもかと詰め込み、凝縮して出来上がっている。

河合優実の最大の特徴である「虚ろな視線」は、
この作品の為にあったのかという程に、
悲惨な女性がハマっている。

そうした悲惨な境遇から、誰かの支援なり応援なり協力があって、
一歩一歩着実に、改善し更生し、
良い方向に進んでいく所をエピソードとして挟みつつ、
人為的方面と天災的方面の双方から、
同時に再びどん底へ叩き落される。

プロレス技でいう所の、パワーボムやブレーンバスターが、
なぜ必殺技足り得るか、それは、
「持ち上げてから落とす」からだ。その方が威力が増す。
胸糞系作品の定番である「持ち上げて落とす」の構成。

不幸を描くには、一旦持ち上げ幸せにさせといたほうが、
そのあと不幸映えするし、落とし甲斐もある。
佐藤二朗のフリ要素、効いてたなあ。
悪人がいい事なんかすんなよって思った(笑)

河合優実や佐藤二朗は、賞レースでも評価されていたが、
もう1人、この作品で凄く良かったなと思ったのが、河井青葉。

河井青葉、いいねぇ。
(*'ω'*)

あの憎たらしい毒母っぷりは、
「誰も知らない」のYOUよりも、凶暴な母親だったし
「愛を乞う人」の原田美枝子よりも、胸糞具合MAXな母親だったし、
ああいう母親が、古臭い昭和式団地の一角に住んでるのかと想像するだけで、
団地に近寄りたくなくなる。
団地ママってこえぇなぁ。

こうした人為的方面の胸糞具合だけでも相当なもんだったが、
天災的方面からのコロナ禍は、まだ人々の記憶に新しく、
まだ傷が癒えてない人も、多々いた事だろう。
コロナ禍のせいで、店を畳んだ人、仕事を失った人、家族を亡くした人。
苛烈な不条理を体験してしまった人のトラウマは、
まだ笑って振り返るのは時期尚早かもしれない。

このように、持ち上げてから落とす構成と、
苛烈な不条理でどん底に突き落とされる構成から生まれる胸糞具合は、
戦争映画とほとんど変わらない事に気づく。

「私は貝になりたい」なんかも、
やっぱり主人公は最初は貧乏で、蔑まれ生きてきて、束の間の幸せを実感した矢先に、
赤紙がやってきて、とんでもない悲劇に巻き込まれてしまうお話だった。

胸糞系映画の最高地点は、昭和も令和も、構成は同じなんだなと思った。

良かった演者
河井青葉
河合優実
佐藤二朗

ソビエト蓮舫
またぞうさんのコメント
2025年4月17日

河井青葉、普段のイメージと違う役でしたが、凄く怖かったです。

またぞう
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