「どうすれば救えたのか、考え込んでしまう「あんのこと」」あんのこと LittleTitanさんの映画レビュー(感想・評価)
どうすれば救えたのか、考え込んでしまう「あんのこと」
1. あんを救う手立てあるのか?
売りをさせ、ヤクのキッカケを作ったのも、義務教育の機会を奪ったのも、ラストの悲劇を招いたのも毒母。何処までが実話か不明だが、実の娘に売春させる母親のニュースは何年かに1度耳にする。時代を遡れば「碁盤斬り」の元ネタの落語のように、貧して娘を遊郭に売る親は少なくなかった。ここまでの毒親は稀であってほしいが、トー横に逃げこむティーンの中には、かなり複雑な家庭事情があるとも聞く。
毒親が娘の自死を悔やんでも自業自得と切り捨てられるが、放置して救われないのはあんの様な若者。摘発されてからでも、多々羅の様なボランティアやNPOに出会えればラッキーなのだろうが、多々羅1人の逮捕で崩壊する組織では心許ない。焼け石に水であっても、児相等により強い権限を与えるなどの改善はあるべきかもしれない。トー横しか逃げ場がなければ、群がるオヤジの性欲の捌け口にされかねない。
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2. 予想以上に観やすい映画
予告や番宣の段階では、観るのに忍耐が必要な気がして鑑賞を躊躇した。しかし観始めたら、序盤からコロナ禍で子供を押し付けられるまではテンポが良くて、驚く程観易く入江監督の演出力に唸った。ただ、あんが自死してからの時間は蛇足に感じた。桐野と多々羅の悔恨も、息子を押し付けた母親の後日談も要らなく感じた。あんの母性が子供を救ったとしても、あんが報われたなんて胸をなでおろせない。
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3. 虐待の被害者は、毒親ホイホイか?
毒母に虐待されたあんは、別の身勝手な母親に幼児を押し付けられる。見ず知らずの女性に、殆ど事情を説明せず幼児を押し付けて行方を暗ます母は間違いなく毒母。
同じ年に公開された「52ヘルツのクジラたち」でも、虐待されて育ったヒロインが、別の毒母にネグレクトされた少年を見るにみかねて引き取る。毒母に育てたられた子供は、成長後別の毒母に出会う運命でもあるのだろうか。本作が実話ベースであるなら、其のトンデモ仮説に現実味が出て怖い。