「傑作でした‥気になっている人は是非」あんのこと komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
傑作でした‥気になっている人は是非
(完全ネタバレですので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
あえてマイナス面から‥
個人的には最後の留置所面接の説明セリフは全く要らないとは思われました。
あんなにセリフで説明されなくても、その前のシーンで全部十分見ていれば分かりますし、監督は、自分のモンタージュの積み重ねの演出と役者の表情の演技を、観客の鑑賞力を、信じて欲しいと思われました。
多々羅保(佐藤二朗さん)と桐野達樹(稲垣吾郎さん)は、善悪の曖昧な立ち位置が(こちらにも否定と肯定を錯綜させる)魅力であったのに、なぜ最後に善の方向に人物に引き戻して、その善悪の曖昧な立ち位置の魅力を破壊する表現をするのか、本当に疑問しかありませんでした。
最後の留置所の説明セリフは全く要らない要らない、と、個人的には心の中で叫んでいました。
キノフィルムの作品では少なくない作品で私的見られる印象で、日本映画の少なくない部分で見られる印象ですが、あの自分たちを善人の側に置こうとする欲望のみっともなさはどうにかならないかと常日頃思われています。
日本映画界(の一部)に根強く居座っている、自分たちを善人の側に置こうとする欲望のみっともなさは、本来は矛盾に満ちた人間を描く映画にとって、個人的には害悪以外になく、本当に滅んで欲しい利己的な欲望だと思われています。
そして個人的には、入江悠 監督には『AI崩壊』などで、善悪の描写が分かれ過ぎる印象を持っていてどうしても不信感はぬぐえていないのですが、今作でも最後の最後に顔を出してしまった、もったいない以外にないとの感想を持ちました。
また、最後のシーンも、重要なエピソードを短い2場面でパンパンと見せて終わった方が良かったと思われます。
仮に、最後の留置所のシーンがなく(あっても多々羅保の表情のみ)、ラストが短い2場面で終わっていれば、個人的には久しぶりの、文句無しの5点満点の素晴らしく見事な映画作品だったと思われました。
主人公・香川杏を演じた河合優実さんの素晴らしさは言うまでもありませんが、2020年の当時の空気感を描いた、描かれなければならない描写も含めて、現時点では2024年の邦画でトップの作品に感じました。
ここに書いたマイナス面を差し引いても、それをはるかに凌駕する、図抜けた傑作だと思われています。
この映画が今後、広く評価されることを個人的にも強く願っています。