劇場公開日 2024年6月7日

「ツラいけれど観るべき」あんのこと ぱんちょさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ツラいけれど観るべき

2024年6月7日
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鑑賞方法:映画館

とにかくツラい。見通すのも苦しくなるほどに。
しかしこうした生を送った女性がいたということを我々は知るべきだ。社会の一員として。
この映画には数々の問題が含まれている。ネグレクト、DV、児童虐待、売買春、性的搾取、貧困、麻薬、依存症、セーフティネット、報道、そしてなによりもコロナ禍による断絶。
彼女をあそこまで追い詰めたのはコロナ禍なのか、社会なのか… いや、コロナ禍に押し潰されない強度を持った社会を築けなかった我々の責任だろう。
しかしカメラはそうした残酷な状況を描くだけでなく、時に訪れる幸せもきちんと捉える。
シェルターで一人暮らしを始める時に窓から外を眺める表情。日記を万引きしようか考えた挙げ句にヨガマットをプレゼントとして買う瞬間。漢字ドリル。またシャブに戻ってしまったときに「大丈夫だ」と繰り返してくれる人。ハンバーグ。玩具。公園。
それをほんの少しの台詞とともに微細な表情で感じさせる河合優実の演技はまるで本当にそんな子がそこにいるかのように圧倒的だった。複雑な面を持つ役を演じた佐藤二朗も素晴らしい。
とはいえ、冒頭のシーンが再度映されたときの「この時だったのか」という絶望感は衝撃的…
ツラいけれど、絶対に観るべき映画。

ぱんちょ
ぱんちょさんのコメント
2024年6月23日

再見。やはりツラい…
あらためて、ノートを買うシーンは魂が揺さぶられる名シーン。
あと、思っていて書かなかったんだが、あんの母親だけでなく祖母もやはり身体を売る他に生きるすべが無い人だったのだと思う。
だからこれは毒親問題というだけでなく、貧困の連鎖を断ち切る道を用意してこなかった社会の問題なのだと、あらためて思う。

ぱんちょ
ぱんちょさんのコメント
2024年6月12日

誰がなんと言おうと。

ぱんちょ
ぱんちょさんのコメント
2024年6月12日

忘れてた。
ラストのちょっと前、コロナ禍に断絶が加わり絶望したあんが開けた窓の向こうに飛んだブルーインパルス。コロナ禍の断絶になにも手を打たず、すべてを自己責任、自助と切り捨てた自民党政権を、やはり許すことは出来ないと、思いを新たにした。これだけは入江悠監督と同じ思いだと(だからあんなシーンを入れたのだと)思う。

ぱんちょ
ぱんちょさんのコメント
2024年6月8日

コメントありがとうございます。
仰る通りで、ただ良い話で終わったらあまり意味なかっただろうなと思います。
その後の行動になにか影響を及ぼす力のある作品になったのもあくまでも真摯に現実を描いたからかと。
もうこんなことが起きないようにするために、まずは政治から変えたいですね…

ぱんちょ
大吉さんのコメント
2024年6月8日

映画だからもっと希望のある終わり方を、とも思いましたが、それだとあぁ良い映画だったね、で終わってしまう。救いのないエンディングですがそれが現実だと突きつけられれば、観た者が何かしなければと考えさせられる。辛いけれど観るべき映画だと思います。

大吉
ぱんちょさんのコメント
2024年6月8日

毒母を演じた河井青葉さんもスゴい芝居だった…

ぱんちょ