「コロナ禍に実際に起きた出来事を元にした、ある少女の物語です。同じ事が起きない事を願うのは勿論の事ですが、この少女の事を忘れないで欲しいとのメッセージを感じました。」あんのこと もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
コロナ禍に実際に起きた出来事を元にした、ある少女の物語です。同じ事が起きない事を願うのは勿論の事ですが、この少女の事を忘れないで欲しいとのメッセージを感じました。
実話ベースのお話らしく、家庭内暴力・薬物使用・そして
体を売る少女のお話です。その主人公を河合優実が演じると
あって、予告編を観た時点から気になっていた作品です。
上映時間がなかなか合わずにいたのですが、なんとか観るこ
とができました。 ・_・ヨシ
軽い作品のハズ無いよなぁ と構えて観たのですが、その予想
を遥かに越える重い内容の作品でした… @_@ ; ヒィ
どんな内容かと言いますと。
祖母と母親と3人で暮らす香川杏(河合優実)。
10才の頃から万引き常習者となり不登校に。 うーん。
12才の頃から母親の紹介する男に体を売るように。うーん。
16才の頃から薬物に手を出すように。(強要?) うーん。
そしてとうとう、警察のご厄介になってしまう。
その時の担当警官が多々羅刑事(佐藤二朗)。
この刑事、言葉遣いが悪く口調も荒い。
どこでもタバコを吸うわ,やたらとツバを吐くわ と
一見してまともな警察官には見えない。 うーん。
そんな男なのだが、薬物使用から立ち直りたい人の為の
立ち直りを支援する組織(サルベージ)を運営してもいる。
杏もこのサルベージ組織に加入することになる。
そしてここを中心に、社会に適応するための行動をする。
・薬物使用からの脱却、
・母親のDVからの逃避
・介護士を目指して施設で実習に参加
介護士を目指す理由は、将来自分の手で祖母の介護ができるように
なりたいとの想いがあったかららしい。
このサルベージ組織には、桐野(稲垣吾郎)というジャーナリスト
も頻繁に顔を出していた。この記者も、多々羅刑事同様、杏に対して
好意的な対応を見せてくる人物なのだが。(…実は訳アリ)
理解者はさらに増える。
ある介護施設の経営者は、杏のプロフィールを知りながら、自分の
運営する介護施設に採用してくれた。
住む所も「訳あり女性を支援する団体」の紹介で、同じ境遇の女性
しか入れない、専用のアパートに入居できた。
さあ、これからが人生のリスタート。
…となるはずだったのだが… うーん。
2020年に世界的に流行し始めた新型コロナウイルス。
そのあおりを受けて非正規従業員の解雇。…杏も非正規だ。
働いている場所が母親に知られ
住んでいる幅所も母親に知られ
祖母がコロナだと母親に騙され
預かった男の子を人質にとられ
また体を売ってこいと強要されて… ああああ
少しずつ積み上げてきた、杏の新しい世界が崩れていく。
何もかもを失った杏に残された道は一つしか無かった。
というお話であります。
うーん。うーん。うーん。
…
コロナの初年。
未知のウイルスの出現で、世の中全体が奇怪しくなっていました。
その中で起きた「一人の少女の自死」という出来事です。
新聞の記事になったそうなのですが、全く知りませんでした。
その当時、杏を救う方法があったのかどうか。
今更ですが、「可哀相な女の子がいたという話」だけで済ませては
ダメな問題なのだとは思います。
杏のような少女が自分の周りにいたとして、自分には何ができるのか。
そう自問してみても、簡単に答えが出そうには無いです。
…けれど。
考え続けることは、止めてはいけないとも思います。・-・;
ずっしりと重いテーマの作品でした。
観て良かったかといえば、良かったのですがそれでは不正確。
” 観ておくべき作品を観ました ” そんな心境です。
◇あれこれ
■この作品を通して思うこと
記事になった内容や、杏の生きた背景などに関して
鑑賞後に色々と疑問なことが頭に浮かんできました。 ・_・
・どんな内容の新聞記事だったのだろうか?
・何がきっかけで記事になったのか。コロナの犠牲者として?
・子供を預けた母親は、多々羅をリークしたのと同じ女性?
・杏が付けていた日記は作品に反映しているのか?
杏を自死に追い込んだ一番の原因は、あの母親にあるとは思うの
ですが、あそこまでひどい母親になったのにも理由があるのでは?
と、そこも気になっています。
杏の父親は登場しません。なので想像するしかないのですが、
「母の杏に対するDV行為同様、父から母に対してもDVがあった」
そんな可能性もあるような気がします。
杏のお骨の行方が気になってます…。
結局のところ最後まで、
あの母から逃れられなかったのかな と思うと…。(涙)
■河合優実さん
「自分が杏なら、どんな表情や仕草をするだろう」
と考えながら杏を演じたと、パンフの記事にありました。
その結果は観てのとおりなのですが、杏の存在がリアリティを持って
感じられる演技でした。いや、演技に見えないリアルさでした。
これからの活躍に、ますます期待しちゃいます。
■河井青葉さん
杏の母親役を演じた女優さんです。
作品中では本当に憎ったらしい毒親を熱演されてました。
地の性格がこうだったらどうしよう(んな訳無いですよね)
なんて想いながらパンフを読んでいたら
「本当の河井さんは、役とは正反対のやさしい方です。
この役を演じて辛かったと思います」
との河合優実さんのコメント。
役者さんて色々と大変なんですね。としみじみ。
◇最後に
いくら考えても、杏にとって救いの無い終わりとしか思えず
半ば呆然としながら映画館を後にしました。-_-;
あ 「薬物中毒からは抜け出していた」という多々羅の一言
だけが、救いといえば救いです。T_T
その言葉が杏に届くことは無く、それが哀しい。
これだけ心をかき乱される作品、そうそう出会うものでは無い
気がします。
あの” 毒親 ” は、実の娘という金ヅルを失った後どうやって生き
続けていったのでしょう。そんなところまで気になってます。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
共感ありがとうございます。
あんが自死を選択した心理の推移が痛々しいですね。普通なら自暴自棄になって薬物に再び手を出し、それに溺れて毒母と同じようになっていく・・が定番でしょうが、彼女はそうならなかった。折角詰んだ積み木が崩された絶望感の方が強かったんですかね。真面目過ぎた面も有るんでしょうね。