劇場公開日 2024年7月26日

「白昼夢にも似た夢と現の越境感が独特の余韻を残す」めくらやなぎと眠る女 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0白昼夢にも似た夢と現の越境感が独特の余韻を残す

2024年7月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

以前、ある監督から「長編の村上文学は許可が下りにくい。短編小説の方がまだ可能性がある」と聞いたことがある。ただし、短編には短編で、長編とは違う特殊な持ち味があるため、結局のところ映画作家には斬新なアプローチが必要となるという。本作はまさにその言葉を裏付ける一筋縄ではいかない一作だ。6本の短編小説を緩やかに融合させている時点でかなり大胆というか恐れ知らずだが、もともと実写で撮られた映像をアニメーションへと変化させる過程で生じた、さながら白昼夢のような夢と現との越境感が独特な印象を刻む。極めて実験的、尚且つ出口のなかなか見えない作品であるため、見る者を選ぶ作品ではあるものの、小説でも映像でも変わらず「かえるくん」が愛らしく、一方、小説「かいつぶり」を基にした「長くて暗いトンネルをひたすら歩く」というイメージが、それそのものというよりは、主役らの心理模様として機能しているのが効果的で余韻を残す。

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牛津厚信