「ひねりが無い」NOCEBO ノセボ mamemameさんの映画レビュー(感想・評価)
ひねりが無い
シンプルな展開かと思ったら複雑な裏が隠れていて……というのが、観客を良い意味で裏切る展開だと思うのだが、今作は逆。何かあるのかと思ったら何もなかった、そのままだったというオチ。
前半いくつかの意味深なシーンがある。たとえばダニを見て眉をひそめるダイアナ(自分がかけた呪いならそんな顔をするだろうか?)、クリスティーンが消耗した状態で発したタガログ語、夫の言葉に「支配したいものは別にいる」と答えるダイアナ。
そういうパーツに気付くと、なんかもっと深い関連性があるのかなと思えてくるのだけど、そんなものはありませんでした。単純にダイアナはクリスティーンをぶっ殺したいってだけでした。
ノセボという言葉はプラセボの対義語として出てくることが多い。プラセボ効果は「効果のない薬でも信じ込むことでよい効果が出る」現象で、ノセボは逆。毒でなくても思い込むことで毒となる。
このタイトルの意味から考えると、もしかしたら最初はノセボ効果で体調を崩し、ダイアナは正気で正常になったクリスティーンに対して復讐したいから治療したのかしらとも思えるけど、たぶんこれも考えすぎで、それっぽいものを並べて観客をけむに巻いているだけでしょう。
クリスティーンを狙うことになった娘の死も、直接的な原因は工場の管理者なのだからこの復讐劇はつまり逆恨み。
共感するところはないし、得られるメッセージ性も無し。あるとしたら、理不尽に復讐のターゲットになることがあるから気をつけようね、ということか?
これは自論であって一般論ではないけど、日本のホラーは「わからないもの」が恐ろしいという描き方はしない。それより「恨みの深さ」「積み重ねた時間の重さ」を恐怖の源として描くことが多い、と感じる。
それは「わからないもの」を「八百万の神」や「妖怪」として理解してきた文化的下地があるからだと思う。
今回の映画はダイアナやフィリピンを「わからないもの」=遠い土地から来た異文化のものとして描くことで不気味さを演出しているが、日本で見るとあんまり不気味じゃない。
だから見てて全然怖くなかったというのが正直な感想。
ごちゃごちゃミステリ風に伏線っぽいものを散りばめるなら、もうすこしストレートな復讐劇にしてほしいなと思うが、欧米じゃこっちの方が売れるだろうなあ。