「イーライ・ロスの感謝祭は出血大サービス!」サンクスギビング 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
イーライ・ロスの感謝祭は出血大サービス!
2007年にクエンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲスが競作した“グラインドハウス映画”。
その中で流れた幾つかの予告編。これらは実在しない映画の“フェイク予告編”で、イーライ・ロスによる『感謝祭』もその一つ。
ホラーファンの間で話題を呼び、いつか本当に映画化を!
…したのが本作である。ちなみにロドリゲスの『マチェーテ』も同じく。
まず、“オールスター感謝祭”は知っているけど、日本人には馴染み薄い“感謝祭”とは…?
アメリカ11月の祝日の一つ。収穫と前年の祝福に感謝と犠牲を捧げる日。
家族や友人らと七面鳥メインの豪華ディナーを楽しむ。
その起源は…、1620年にイングランドから自由を求めて清教徒“ピルグリム・ファーザーズ”がマサチューセッツ州プリマスに入植。映画の舞台でもあるプリマスは感謝祭発祥地とされている。
作品自体はこれらを知らなくても全然大丈夫。
“アメリカの故郷”とも呼ばれる町プリマスで…
感謝祭の日、町の大型量販店がセールを行い、その時起きた大惨事…。
未だ町の人々の傷が癒えぬ中、一年後の感謝祭。
惨事の関係者が一人一人殺されていく。“ジョン・カーヴァー”のマスクを付けた殺人鬼によって…。
ジョン・カーヴァーはプリマス入植地創設の実在の人物。
かつて彼の周りで清教徒たちが謎の死を遂げた不穏な都市伝説もあるという…。
代々からの歴史や曰く付きの伝説を題材に、『ハロウィン』のように“特別な日”が舞台。
歴代ホラーキャラ同様、マスクを付けた殺人鬼が織り成す惨劇。
対する美人ヒロイン。
犯人はコイツ!…と思わせての真犯人。
アメリカン・ホラーのあるあるド定番たっぷり。
そこに、イーライ・ロス印のグロゴア描写。プラス、ブラックなユーモア。
近年、まさかの非ホラーのファンタジーやゲーム原作のSFアクション大作が控えるなどフィールド広げるロスだが、原点回帰。
久々の本格ホラーに楽しんで作った感や余裕、自身の表れも。
グロゴア描写や様々な殺しのオンパレードがまさにそれ。
身体切断、首切断、首ねじ曲げ、皮剥ぎ、はらわた切り裂き、電動ノコで内臓露出、トランポリンの下から突き刺し、オーブンで生きたまま丸焼き…。
残虐な殺人鬼だが、猫には優しい。
感謝祭と言えば、豪華ディナー。勿論用意されている。
惨劇関係の“客人”を招待し、これまた惨劇関係の“食材”で、腕を振るった“グリーン・インフェルノ”風味の衝撃ディナー…!
イーライ・ロスのお・も・て・な・し!
これら戦慄インパクト充分だが、でも何より恐ろしいのは、冒頭の感謝祭セール。
押し寄せた客たちが暴徒となり、ガラスドアを破壊して乱入。
揉み合い、奪い合い、踏み潰され、ガラスの破片で血まみれ負傷し、惨たらしい死…。
何かに異常になる人々の様を強烈ブラックユーモア描写で、イーライ・ロスならではの風刺も効いている。
『ハロウィン』×『スクリーム』な感じで、敢えて狙ったB級路線だが話の分かり易さ、戦慄と恐怖と衝撃とブラックユーモアの楽しさ、エロが足りないのは残念だが、イーライ・ロスからの出血大サービス!
続編も決定。
さあ、感謝祭を楽しんで♪︎