「イーライ・ロスらしい、真心たっぷりのおもてなし」サンクスギビング 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
イーライ・ロスらしい、真心たっぷりのおもてなし
爆発的な直感力とこだわりを持つ奇才イーライ・ロスだけあって、この映画には恐怖と共に、妙に感心してしまう要素も搭載されている。例えばメインの連続殺人犯が、メイフラワー号に乗って(ジェームズ1世の迫害を逃れて)アメリカ大陸のプリマスへ上陸したピューリタンの一人、ジョン・カーヴァーのお面をかぶっているとは、なんと気の利いた設定なことか。それに白眉なのは事件の発端を描く序盤。ブラックフライデーの売り出しが待ちきれぬと店前に大挙する町の人々の姿は、人間が目的のために血眼になる時の地獄絵図を辛辣に表現しつつ、と同時に、ロメロの映画「ゾンビ」への目配せという側面も併せ持っているのだろう。このど迫力のテンションには恐れ入ったし、これと後半の感謝祭パレードの盛り上がりは、いわば合わせ鏡のような構成。全体的にスラッシャー的な部分もありつつ、怖さとどぎつさと笑いが入り混じったイーライ・ロスならではのもてなしだ。
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