「人の傷に向き合う静かな激しさ」一月の声に歓びを刻め Motoさんの映画レビュー(感想・評価)
人の傷に向き合う静かな激しさ
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心に棲みついた傷をカルーセル麻紀、哀川翔、前田敦子の3人が3章で演ずる心の救済をテーマにしたような作品。
1章は娘を性犯罪に奪われた父が暮らす洞爺湖が舞台。そこを元旦に訪ねたもう1人の娘夫婦の一家が父の作ったお節を食べるシーンがある。問題を抱えた娘夫婦と亡くした娘への思いに執着したままの父で食卓を囲む渇いたリアルさは、食を印象的に演出する三島監督の真骨頂に感じた。
2章の八丈島の哀川翔と娘の食事のシーンも印象的で、だからこそ、監督自身の幼少期の性被害をもとにした衝撃的な3章で傷を抱えた前田敦子演じるれいこがなにひとつ食べない演出に深みを覚えた。
性被害を受けた被害者であるはずのれいこが、まるで自分が罪を犯したもののような心を前田敦子が見事に表現していた。彼女に詳しくなかったので、今後も注目したい俳優のひとりとなった。
静かで見る人によってはテンポが遅いと感じるかもしれないが、それは三者三様、心の傷の静かな激しさの発露にとても相応しいと感じた。
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