劇場公開日 2025年6月6日

「「最大の悲劇は善意の人の沈黙と無関心」(マーティン・ルーサー・キング)」年少日記 Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「最大の悲劇は善意の人の沈黙と無関心」(マーティン・ルーサー・キング)

2025年6月15日
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鑑賞方法:映画館

高校教師のチェンの勤務校のゴミ箱から生徒が自殺をほのめかす文章がみつかる。その中に「私はどうでもいい存在だ」という言葉を見つけがく然とする。それが長いこと封印していた幼少期の日記(年少日記)に記していた言葉とまったく同じだったことにショックを受ける…という場面から物語は始まり、子ども時代の体験やトラウマを引きづりながら成長する過程などがフラッシュバックとして描かれていく。

監督のインタビューによれば、香港の学生の自殺問題をきっかけに本作を撮ろうと思ったそうで、学業や家族、社会からのプレッシャーに直面する子どもたちへの理解を促進したいとのことだ。

この問題は当然ながら対岸の火事ではなく、2024年度の小中高生の自殺数は、厚生労働省の統計によれば、前年度比で16人多い529人で、1980年に統計を取り始めて以来最大数になっているとのこと。その原因のトップ3は「学校問題」「健康問題」「家庭問題」で、本作での課題とも重なる部分は大きい。

エンドロールの Special Thanks にいろいろな学校や先生たちの名前が多数列挙されていることから、かなり多くの取材を丁寧に重ねてから作ったのだろうことがうかがい知れる。

日本では少子化に伴い、かつての「受験戦争」と言われていた時代よりは競争が緩和されているのかも知れないが、逆に一人の子どもに対する親の期待とプレッシャーは従来とは比べ物にならないはず。そこに誰がどのように寄り添えるのか、それこそが子どもたちを救う唯一の道かも知れない。

そのように考えると、「負の連鎖」を生まないためにも、子育てをしている人や、教育関係者・子どもと関わる仕事をしている人は観ておくべき作品だと言えるだろう。

なお、兄弟間の出来・不出来の差が父親の愛情の示し方の違いになって表れる物語は古くは聖書の「カインとアベル」の逸話にまで遡れるし、それを基にした(映画化もされた)スタインベックの『エデンの東』も当然そうだ。これも世界中で普遍的な課題なのであろう。

事前に「泣ける話」だという評判を聞いていたのだが、いろいろな意味で胸に刺さり過ぎて、自分には「泣く」という感情が逆に生じてこなかった。(ハンカチ持っていったのに…)

余談だが、広東語の「はい(yes)」は「はい(漢字で書くと「係」)」って言うんだ!というのが今回一番驚いた発見。笑

Tofu
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