「もし過去のある時点で生き方を変えることが出来るなら、貴方はどうしますか?人生の成功者とはどのような人を指すのですか?と、この作品に問いかけられている気がします。」オールド・フォックス 11歳の選択 もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
もし過去のある時点で生き方を変えることが出来るなら、貴方はどうしますか?人生の成功者とはどのような人を指すのですか?と、この作品に問いかけられている気がします。
最近観た台湾映画(「青春18×2」)が良い感じだったのと
この作品の紹介を読んでストーリーが好みの感じだったの
もあって鑑賞してきました。(あ 正確には日本との合作)
主な登場人物。
リャオジエ。11才の少年。父と二人暮らし。
リャオタイライ。リャオジエの父。理髪師の妻と死別。
シャ。リオジエ親子が暮らす家の家主。
この他に何人も登場するのですが(それはそうです)
後になって振り返ると、リャオジエ親子やシャと関係が
ある人という事は分かるのですが、発生するイベントとの
絡みがいま一つ不明瞭だった気が。…なので割愛 @_@ ワー
◆
リャオジエ少年の夢は、自分たちの理髪店を開くこと。
今は亡き母の働く姿を今でも覚えているリャオジエ。
リャオジエの父は、中華料理の店で働いている。
とりあえずの生活に困ってはいない。…だが
理髪店を開業するためにはお金が足りない。
だから、色々と節約して暮らしている。
風呂やシャワーを使い終わったらガスをすぐ止める
それを毎日欠かさず実行している。
リャオジエの学校の運動議も父の手作りだ。(すごい)
そういった他との違いから、リャオジエは学校の
同級生から目をつけられ、嫌がらせを度々受けている。
ある雨の日。
雨宿りで駆け込んだ屋台に、高級車が横付けする。
中から声がかかる。初老の男が乗っていた。
” 送っていこう 乗りなさい ”
悩んだ末、車に乗るリャオジエ。
” 言われるまま乗るとは。誘拐されるかもしれないのに ”
こう言った男がシャだった。リャオジエ父子が暮らす家も
含めて不動産を数多く抱える男だ。
リャオジエとシャ。
この出会いからリャオジエの人生が変わり始める。
シャも何故かリャオジエの人生に関わってくる。
良い人を親に持つと、人生は終わる。
悪い人になれれば、勝ち組に入れる。
不動産価格が高騰し、理髪店を出す夢が遠のくリュオジエ。
出店できる家を何とか見つけたいとシャに近づくのだが…。
とまあ、90年代の台湾を舞台に
少年と初老の男との交流を描いたヒューマンドラマでした。
特に、「現在の自分」と同じような境遇の「過去の自分」を
見つけてしまったときに、その人はどうするのだろう。
鑑賞後も、その一点が気になり続けています。
それも含めて色々と考えさせる作品です。
私は観て良かった。
★★
◇以下、シャの胸中を考察してみました
この世の中には、二通りの人間がいる。
「良い人」そして「悪い人」だ。
良い人では成功者にはなれない。
「良い人」の母を見て育った「シャ少年」は
こう自分に言い聞かせる。
” 他人の事など知ったことか ”
” 他人の事などクソ食らえだ ”
そうして、シャは人生の成功者となる。
だが、その結果得たものは…
息子からの徹底的な嫌悪。
大学進学費用の援助も拒絶された。
” 俺は成功者だ ”
” 俺は勝ち組だ ”
” そうだろう? ”
そう自分に問いかけても、答えは返って来ない。
◆
母を亡くした日、病院のエレベーターに乗り合わせ
たのが、シャと生まれたばかりの少年だった。
幸せそうな妻の喜ぶ声を夫が嗜める。身内を亡くした
者が乗っている事を察したからだ。
” あのような良い人の下では、あの赤子は既に負け組
だろう。母の命日に生まれた赤子の事は気にはなる。
が、今後何らかの接点が生まれる事も無いだろう ”
そのとおりに、何も接点の無いまま月日は過ぎる。
◆
今 11才のリャオジエ。
昔 11才だったシャ。
11才だった頃の自分とリャオジエを重ねるシャ。
良い人の親の元ではダメになるとシャは案じる。
悪い人になれと人生の指南を と想い声をかける。
だがまて と。心の奥深くから声がする。
” 良い人は、本当にダメなものなのか ”
” 悪い人を目指す以外に道はないのか ”
このお話の真の主人公は、リャオジェでは無いのかも。
そしてこのお話が語りかけてくるのは、
「人間の持つ、欲や業、そして真の幸福とは何なのか」
そんな、深遠な問いかけなのかもしれません。
思わず人生を哲学しそうになる作品でした。
こういう作品、キライではありません。
◇あれこれ
■門脇麦さん
似ている台湾の女優さんだなぁ と思ってたらご本人。・_・;
台湾の言葉が流暢なのもあって、気付きませんでした。
楊夫人役。マダムヤンです♡ (昭和の高級ラーメン)
◇最後に
最後の場面をどう解釈すれば良いのか悩んでいます。
建築家になったと思われるリャオジェ(…と思われる男)
クライアントの依頼に応えつつ、プラスアルファで提案。
これを現代と考えれば、30年後の台湾なのでしょう。
リャオジエは41才。 (バカボンのパパと一緒 ・_・♡)
会議を終えたリャオジエに誰かが声をかけるのです。
” この OLD FOX め ”
シャが呼ばれていた称号は、” 多分リャオジエ ” に向けられて
いました。仮にリャオジエなのだとして、彼はどんな30年を
過ごしてきたのか。それを察する情報がありません。
悪い人。良い人。もしくは両方バランス良く併せ持つ人。
リャオジエはどんな大人になったのか。明確な答えでは無さそ
うです。
解釈は、鑑賞した者に任せます ということなのでしょうか。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。