劇場公開日 2024年5月10日

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「内に閉じず、外に開く、働きかける」ラストターン 福山健二71歳、二度目の青春 momokichiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 内に閉じず、外に開く、働きかける

2025年9月14日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

幸せ

息子夫婦が訪ねてきた晩、日記に「久しぶりに人と会話したよ」と書くシーンから、妻を亡くしてからの健二の生活は、内に閉じたものであることが窺い知れる。

それが、コミュニティクラブに足を運んだことをきっかけに、、
橋本さんという友人ができ、
水泳教室で「できなかったことができる楽しさ」を知り、
面倒くさがっていたバランスボールにも挑戦して、
ついには見知らぬ家の犬の散歩を買って出るまでになる。

特に、人様に迷惑をかけることだけは是が非でも避けたいと頑なだったのが「何かあったら助けて欲しい」と人に頼れるようになったこと。齢を重ねると、誰もが支えを必要とする。その現実を受け入れられるようになった姿が胸に響く。

イキイキ体操を最も連想させにくい俳優・岩城滉一を主演に据えたのがうまい。彼でさえ、番地を忘れ、後ろ姿はすっかりおじいさんになる。例外なく誰もが老いていくのだと強く実感させる。(実際の岩城滉一はいつまでもバイク乗り回してそうだけど。少なくとも家で「ヤッホー」は絶対しない。笑)

中盤の医療費が払えない患者のシーン。健康維持の重要性を訴える場面だが、それだけを目的に余生を過ごすのは味気ないし、維持するためだけの人生ってむなしい。

「嬉しいですね~この齢になって新しいことできるのって。」
「ワクワク滾ってくるのって悪くないでしょ?」
「悪くないですね!」

義務じゃなく、ワクワク滾って楽しんで生きる。外に開き、人や世界に働きかけていく。
コミニティクラブに行ってみる、一緒に呑みに行ってみる、水泳教室に参加してみる、バランスボールに乗ってみる、散歩させましょうかと声かけてみる。。。
一方踏み出す。やってみる。のってみる。その姿勢が人生を豊かにする。

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※監視アプリはほんと傲慢で下衆な代物だった。(しかも肝心の寝込んでいる姿や倒れている姿は捉えられていないし。)
※「きょういく と きょうよう」今日行くところと、今日用事があるところ。なるほど。
※橋本さんが脳梗塞で倒れたと聞いた夜、昔日記に書いた「ああいう人ほど長生きしそう」の部分に線を入れて消す。心情がわかる。。
※岩城滉一のカッコよさは地味な格好でも隠せない。特にマフラーとタートルネックの着こなしにカッコよさが醸し出ている。
※急激にクロールが上手くなる岩城滉一。
※水泳教室の講師・岸本香里役の高月彩良は肩幅もあり本当に水泳選手のようであった。健康的な魅力に溢れていた。
※印象に残ったその他のセリフ。
 「俺たちは幼稚園児じゃないんだ!」
 「でもな、じいちゃんやらない訳にはいかないんだよ。」
 「進化してやりましょうよ。70の手習いですよ。」
「これからもなんかあったときに声掛けてください。暇ですから!お願いします。」
「水泳のいい所は思いっきり泣けることです。」
「新しいことに挑戦するのって、本当に素晴らしいことですよね。」

momokichi
chikuhouさんのコメント
2025年9月14日

フォローありがとうございます  自分が歳をとって生きていく様が、どのような社会(ところ)か  まわりの人、家族、近所、どのように自分が相手に映り、どのように思われるか  このような作品をみると、今更未来のない年齢にない私など、どのように歳をとっていくのか、と思います   高齢の女性を描く作品は多いですが、取り残された男性(男性の多くは妻に看取られるという根拠のない安心感が打ち砕かれた)の心情は、同じ男性として辛いものでありました  よろしくお願いいたします

chikuhou