劇場公開日 2025年2月28日

「イスラエルボイコット」TATAMI レントさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5イスラエルボイコット

2025年3月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

難しい

「ツナミ」と同じく「タタミ」もいまや世界共通語になったんだろうか。

う~ん、なんか内股すかしならぬ肩すかしを喰らってしまった。だがこれも自業自得、今のイラン映画に娯楽性を強く求めた自分が悪い。それこそ不謹慎だと言われそう。

イラン映画がいま熱い。こういう言い方は語弊があるけど、最近のイラン映画を見ていてやはり抑圧が素晴らしい芸術を生み出すのだなと実感させられる。

最近でも「熊はいない」や「聖なるイチジクの種」、「聖地には蜘蛛が巣を張る」など秀作ぞろいだ。「イチジク」なんてゴリゴリの社会派作品かと思いきや、ちゃっかり娯楽性も十分兼ね備えた作品で長丁場ながら全く飽きず楽しめた。だから本作はこれら社会派に比べてもっと娯楽性重視の作品と勝手に期待してしまった。
確かに試合のシーンはカメラワークなど今風にして娯楽性を高めてはいるが、全体的に観たらやはり地味目な社会派ドラマ、あまりカタルシスは得られない。史実をもとにしてるのでこれはこれでいいと思うけど、もう少し脚色してスリリングな展開にして欲しかったのが正直なところ。
本作のもととなったのは2019年の世界選手権で起きた結構最近の事件だけにアレンジしづらかったのかもしれない。個人的には「勝利への脱出」みたいなのを勝手に期待していたから本作を見て真面目過ぎる作りに肩透かしを喰らってしまった。いや、これは全部勝手に期待した自分が悪いんだけどね。
ただ本作よりも社会派と思われる現在公開中の「イチジク」の方がそういう点では娯楽性もちゃんと加味されていて満足度は高いと思う。上映時間の長さから敬遠されてるみたいだけどそれだけでこの作品をスルーするのはもったいない。

本作の共同監督をしたのがイスラエル人とイラン人。「ノーアザーランド」のレビューでも書いたけど、いがみ合う国家同士の人間たちがその国家間の争いに縛られることなく共に同じ志の下で作品を作り上げたということで大変意義のある作品だと思う。

ちなみに同じ日に鑑賞した「ブラックバードブラックベリー私は私」という映画(お薦めです)がジョージアが舞台の映画でこの柔道選手権の舞台となるトビリシという町も出てくる。なんか日に複数の映画を見るとこういう偶然が重なることがよくある。

レント